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リベラル書籍紹介#40『日本語練習帳』大野 晋

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。


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今回は、高校生4月期で使用した『日本語練習帳』です。

『日本語練習帳』大野 晋(岩波新書、1999)

 しばしば中学生・高校生との会話の中で、「普段日本語を話すことができているのにわざわざ国語を勉強する必要なんてあるのか」といった話題が出てきます。たしかに他者と日常的なコミュニケーションを取ることは問題なくできているかもしれません。ですが、入試問題の記述答案や小論文などでは、みな多かれ少なかれ日本語の表現について先生から指摘を受けたことはあるのではないでしょうか。自分の考えや主張を齟齬なく他者に伝達することは、考えている以上に難しいことです。


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 『日本語練習帳』の筆者、大野晋氏は「単語に敏感になろう」と言っています。「最良」「最善」の違い、「意味」「意義」の違いなどが例にあげられていますが、みなさんは説明できるでしょうか。「最善の努力」という表現は違和感がないと思いますが、「最良の努力」という表現は少し違和感を覚えますよね。一方、「最良の品質」と言うことはできても、「最善の品質」とは言わないでしょう。このあたりの用例の違いが、意味の違いを考える手がかりになりそうです。

 上記のような日常的な単語であれば感覚的に違いがわかるかもしれませんが、なぜ「感覚的に」わかるのでしょうか。それは、私たちの頭の中に用例の蓄積があるからです。辞書を引いていると、つい「言葉の意味が先に存在して、後から用例が生まれた」ような気がしてしまいますが、実際には逆で「用例が先に存在して、その用例から意味が特定される」ものです。英語の学習においても、一単語ずつ意味を覚えるのではなくフレーズやセンテンスの単位で身に付けていくと、途端に英語を聞き取りやすくなることがあるそうです。
 読書や作文などの経験を通してたくさんの用例を蓄積していくことこそが、相手に意図が伝わる適切な日本語表現をするうえでとても大切になってきます。

 「単語」が集まって「文節」になり、「文節」が集まって「文」になり、「文」が集まって「段落」になり、「段落」が集まって「文章」になります。さきほどは「単語」についてのお話をしましたので、今度は「文章」についても見ていきましょう。
 筆者は「縮約」という取り組みがとても大事だと述べています。そもそも「縮約」とは何をするのでしょうか。本書では以下のように説明されています。

要約することや要点を取ることではなく、地図で縮尺というように、文章全体を縮尺して、まとめること

『日本語練習帳』大野 晋(岩波新書、1999)P.115

そして、縮約して残ったものが「文章の骨格」だと筆者は述べます。この縮約の作業は読み手の立場で行う作業ですが、逆転させて考えると、自分が書き手となったときに意識すべきことがわかる作業でもあるということです。

 実際に縮約をやってみると気づくのですが、おおむね一段落あたり一文程度の内容が残ることになるかと思います。したがって、書き手としては一段落に一文、その段落の要旨となる文が存在するように書くのがよいということなのでしょう。実はこの書き方はすでに「パラグラフ・ライティング」として有名な書き方です。各段落のはじめにその段落の要旨となる文をおき、それ以降には補足説明の文を配置するという書き方で、これが徹底されている文章は非常に読みやすくなります。
 この書き方は、小論文やレポートを書く際にぜひとも意識しておきたいですね。


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