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リベラル書籍紹介#19 古典の世界の「みやび」

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」において扱った内容について、担当する職員が紹介していきます。

今回は中学生7月期・古典の授業で扱った「みやび」というテーマについてお話ししていきます。

三大流星群の一つである「ペルセウス座流星群」をご存じでしょうか?
毎年8月中旬ごろに観測できる流星群ですが、国立天文台によると、今年は8月13日午前10時頃に流星群の活動が特に活発になる、極大を迎えると予想されています。特に13日の未明頃が流星を見やすい時間だそうです。12日が満月のため月明りで見えにくく、例年よりも見える数は少なくなってしまう可能性がありますが、暗いところで観察すれば1時間に30個ほどの流星が見られるとのことです。

ペルセウス座流星群については、こちらの記事をご覧ください。https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2022/08-topics02.html

現代の私たちはこのような天体イベントに合わせて天体観測をするくらいで、普段は空を見上げることはほとんどないかもしれません。
しかし古文の世界では、折に触れて自然に親しみ、歌に詠んで楽しむ「風流心」を持っていることが重視されます。

古文では、上品で風流であることを「雅び(みやび)」と言います。動詞の「宮ぶ」から転じた言葉で「宮(みや)」つまり「宮廷風であること」が本来の意味です。

宮中では四季に合わせた行事が行われます。現代で7月や8月と言えば「夏」のイメージですが、古文の世界では7~9月は「秋」です。ただし、現在使われている太陽暦とは異なり、月の満ち欠けを基準にした陰暦が使われていたので、現在の暦とは1か月ほどずれがあります。7月7日には「乞巧奠(きこうでん)」と呼ばれる七夕祭、8月15日には中秋の名月を見上げる月見の宴(ちなみに2022年の中秋の名月は9月10日だそうです)、9月9日には菊の花を愛で長寿を願う「重陽節会(ちょうようのせちえ)」が行われました。

年中行事以外にも季節を感じさせる物があり、たとえば秋に日本へ渡ってくる雁(かり)の音や、松虫、鈴虫などの虫の音は秋を知らせるものとして挙げられます。山から聞こえる鹿の鳴き声も秋の風物詩です。牡鹿が雌鹿を求めて鳴く甲高い声が、切ない恋心や秋のもの悲しさと重ねられ、よく和歌に詠みこまれています。

社交の場でもある宮中では、このような催しや普段の生活の中で、自然の風物に思いを寄せながら音楽や和歌・漢詩などの実生活とは縁遠い「遊び」を楽しむ上品さ、優雅さが求められたのです。

一方、「宮ぶ」と反対の意味を持つ言葉が「鄙ぶ(ひな-ぶ)」や「里ぶ・俚ぶ(さと-ぶ)」で、「田舎風である」という意味合いでよく使われます。 また「里ぶ・俚ぶ」には「家庭での暮らしになじんでいる、宮仕えに慣れない」という意味もあります。都会の洗練された美意識を身につけていない「無風流」な人や日常生活での実利・実益を重視する人は、仕事や恋愛の上でも評価されませんでした。

後世での評価や現代の私たちの価値観とは異なる部分もありますが、当時の人々がどのようなことを大切にしていたのかが分かると、古文の読解もしやすくなります。

流星群を楽しみながら、ぜひ古文の世界にも思いを馳せてみてください。

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