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リベラル書籍紹介#35『竹取物語』星新一

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。


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今回は、中1生11月期で使用した『竹取物語』です。

『竹取物語』 星新一(角川文庫・2008)

 竹取物語は、千年以上にわたり多くの人々に読み継がれてきた、現存する中では日本最古の物語といわれる古典作品です。現在でも幅広い世代に読み継がれており、特に、絶世の美女として描かれる主人公「かぐや姫」は、数あるおとぎ話の主人公の中でもよく知られた人物です。


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 今回リベラル読解論述研究で取り扱った星新一訳『竹取物語』は、個性的な現代語訳として、新しい竹取物語の読み方を楽しめる一冊です。物語の途中で訳者の星新一が、物語の発想や展開、登場人物について様々な視点から感想を述べている点が最大の特徴です。たとえばかぐや姫の誕生から成長が描かれた場面のあとに訳者は、かぐや姫の誕生した場所が竹の中であったことに注目し

「目のつけどころがいい」「感覚的に神秘性がある」(本書 12ページ)

と、その発想を褒めています。そして、竹が不思議な成長力を持ち、多様な用途に使われてきた歴史の長い植物であることにも言及しています。竹取物語を読んだことがある人でも、なぜかぐや姫は竹の中から誕生したのか、なぜ竹がここで選ばれたのかということまで考えた人は少ないのではないでしょうか。このように、あらすじを知っている人も知らない人も、本書を読めば現代語訳と訳者の感想を通して、新しい読み方をしたり、内容を深掘りしたりすることができます。

 また、「あとがき」「解説」のページで訳者は、竹取物語という物語の面白さがどのような点にあるのか分析しており

「発想とストーリーとで、人を引き込んでしまう」(本書 136ページ)

点が魅力であるとまとめています。かぐや姫が月の人であるという発想だけでなく、それに端を発した、貴族からの求婚や親子の愛情などの人間的なドラマを描いた点に面白さがあるということです。さらに全体的に容姿や風景などの描写が控えめであることで、特定のイメージに左右されずに読める点も評価しています。この分析は、竹取物語が日本最古の物語であるという以前に、誰が読んでも面白い物語として完成していることを示しています。

 訳者である星新一はSF小説の名手として知られた作家ですが、その作品の大半は「ショートショート」と呼ばれる字数の少ない短編小説です。このような形式の小説は手軽に読めますが、限られた字数の中でストーリーをまとめあげる必要があるため、質の高い作品を書くのは決して簡単ではありません。星新一のショートショートは、物語の背景や登場人物の説明など、具体的な情報を最低限におさえるなどの工夫を施すことで、短い字数でもストーリーに集中して読める構成になっています。この点は先述した竹取物語の魅力にどこか通じるものがあります。時代を越えて読み継がれる作品に共通した魅力とは何か、本書を読んで考えてみましょう。


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