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リベラル書籍紹介#3 古典

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」において扱った内容について、担当する職員が紹介していきます。

今回は2月期の古典において扱った題材を紹介していきます。


<中学1年生…説話>

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『宇治拾遺物語』
(画像:人文学オープンデータ共同利用センター)

「説話」とは、人々の間で語り継がれた伝説や言い伝え、あるいは子供に聞かせるおとぎ話などの総称です。そんな説話集の代表的な作品である『宇治拾遺物語』から、今期のテキストにも『雀恩を報ゆること』が掲載されました。

これは、ある老女が腰の骨が折れた雀を看病してやったお礼としてひょうたんの種をもらい、それを植えたところ、尽きぬほどの実が成り、またそのひょうたんの中から多量の白米を得て、裕福になったという物語です。

ちなみに、この物語の続きでは、わざと雀の腰を折った別の老女が、毒虫入りのひょうたんをもらって死んでしまったというお話が展開されます。この内容からは、「形だけ真似をしてもいけない」という教訓が導き出されます。授業を担当していても、実際に多くの生徒から「古典を学ぶ意味が分からない」といった話を耳にしたりもしますが、古典文学には、そのように現代人に失われつつある感受性を取り戻す役割があるのではないでしょうか

<中学2年生…『菜根譚』>

『菜根譚』とは、明代末期に書かれた処世訓です。さまざまな教訓を学ぶことができ、現代でも読み継がれています。

今期の教材で扱ったものの中に、「人の悪を攻むるは、太(はなは)だは厳なること毋(な)かれ」という一節が紹介されました。これは、「人の悪い点を批判するときは、あまりに厳しくしすぎてはいけない」という意味ですが、皆さんはどのように考えますか?
相手の心に真に訴えかけるためには、強い厳しさが必要かもしれませんし、一方で厳しすぎる批判はかえって反発を招く結果に終わるかもしれません。

なお、本文では、「受け手が叱責を受け止められるかどうかを考えなければならない」、という内容が続きます。単に厳しさの程度の問題ではなく、その時々の受け手の事情であったり、そういったことにも目を向ける必要があるということにもなるのかもしれません。このような教訓は、現代においても種々のリーダーに求められる資質の一つとしてあてはめることができそうですよね。

<中学3年生…貴族社会と出家>

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『源氏物語絵巻』
(画像:人文学オープンデータ共同利用センター)

中学3年生は、「貴族社会」や「出家」といった、現代では必ずしも馴染みが深くない文化を扱いました。

平安時代の朝廷では、「位階」とよばれる序列によって、人々の身分にランク付けがされていました。貴族とは一般的に五位以上の身分の人を指し、彼らは帝のいる清涼殿への昇殿を許された一方で、六位以下の下級官人たちは昇殿を許されませんでした。そして、人々はそうした位階に応じた官職が与えられることとなっていました。
もちろん、現代には「貴族」の制度は残っていませんが、よくよく考えてみると、会社のような組織のあり方にも似たような部分があるようにも感じられます。

また、「出家」とは、恋愛や仕事などにおいて現世につらい思いを抱いたことなどをきっかけとして、悟りを求めて仏道修行に専心することを指します。
現代人の私たちにも、「世の中が嫌になる」感覚は理解できる部分がありますよね。
なおこの際、家族をはじめとした俗世間での人間関係は「絆」として出家の妨げとされ、敬遠されました。今期の教材では、出家を志す父が小さな娘を蹴落とす様子も描かれていましたが、これは現代だとかえって罪に問われるような行動ですよね。

以上のような社会・文化のあり方は、現代に生きる私たちにはなかなか容易に想像できないでしょう。しかし一方で人間の本質としては1000年近くが経った現在にも通ずる部分があるのかもしれませんね。

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