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リベラル書籍紹介#36『砂糖の世界史』川北稔

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。


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今回は、中3生冬期で使用した『砂糖の世界史』です。

『砂糖の世界史』川北 稔(岩波ジュニア新書、1996)

 「世界商品」という言葉があります。長い歴史の中で、特定の地域の流通にとどまることなく世界中に広がり、現在まで生活に根付いている商品がこう呼ばれます。例として茶やコーヒー、綿織物やゴムなどがありますが、砂糖はその中でもとりわけ幅広い地域と年代で親しまれていることから、世界商品の代表的存在といえるでしょう。


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 この書籍のタイトルは『砂糖の世界史』ですが、その名の通り、砂糖がいかにして世界中に広まっていったか、その流通の歴史を通して世界史上重要な概念を学べるようになっています。そのひとつがプランテーション制度です。サトウキビが大量に作られる土地を確保するために、ヨーロッパ諸国はカリブ海周辺を支配して植民地を作りました。そして、アフリカから労働力となる人間を運び、大量の砂糖を生産させました。プランテーションという用語だけでなく、砂糖の大量生産に大きく貢献した制度という事実とセットで結びつければ、とてもわかりやすくイメージできるでしょう。

 また、それだけ砂糖が生産されていたのは、それに見合うだけの砂糖の需要があったからです。当初は高級品のステイタス・シンボルや医薬品など、貴重品扱いされていた砂糖ですが、やがて本来の甘味料としての需要が高くなりました。砂糖が普及する以前から、人間はさまざまな物質からとれる甘味を愛好してきました。たとえば日本ではアマヅラと呼ばれる植物の樹液が、高級なお菓子などの嗜好品に使用されました。『枕草子』では、清少納言がかき氷にこの樹液をかけて食べていたという記述もみられます。しかしそれらの甘さは砂糖と比べればひかえめなものであり、それだけに、砂糖の強烈な甘さは人を魅了するものがありました。砂糖の甘味が潜在的に世界中に求められていたことも、砂糖の世界商品化に大きく関わっているのです。『砂糖の世界史』では、こうして世界中に普及した砂糖が、その後どのような形で経済や文化の発展に寄与したかも知ることができます。

 科学技術が発達するにつれ、砂糖はただの甘味料にとどまらず、さまざまな分野で注目されるようになっています。たとえば近年、サトウキビを発酵、蒸留させることで、バイオエタノールという燃料の精製が可能なことが判明しました。再生可能な次世代のエネルギーとして注目されていますが、食料としての砂糖生産との競合が課題となっています。一方で、健康上の理由から砂糖の摂取をひかえる動きが高まる、カロリーの低い他の甘味料が使用を推奨されるなど、砂糖の消費量を抑えようとする動きもしばしば見られます。

 今回は砂糖の歴史を取り上げました。一つテーマを定めてそれの歴史を見ることで、世界の経済や文化の流れが見えてきます。興味を持ったテーマで皆さんも「○○の歴史」を考えてみるとよいでしょう。


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