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リベラル書籍紹介#37『じぶん・この不思議な存在』鷲田清一

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。


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今回は、中2生冬期で使用した『じぶん・この不思議な存在』です。

『じぶん・この不思議な存在』鷲田 清一(講談社現代新書、1996)

 自分はいったい何者なのか。
 そんなことを考えて眠れなくなったということはありますか。昔受験前日にそんなことを考えだしてしまって眠れなくなったと言っていた生徒がいましたが、たしかに自分が何者であるかを自分の言葉で説明するのは難しいですよね。なりたい自分と、他者に認識されている自分には乖離があって、他者から自分はどのような存在としてとらえられているかは確かめようがありません(直接聞く以外には)。誰もが一度は考えたことがあるであろう「自分」という存在について、考えるヒントを与えてくれるのが今回の本です。


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 自分という存在は他者によって成り立ち、その「他者にとって他者である」自分によって他者は存在する。考えてみれば当たり前のことと思うかもしれませんが、自分という存在は自己完結するものではなく、他者との相互補完的な存在なのです。その時、自分と他者を明確に区別するものが「顔」であり、ゆえに私たちは顔を世間に差し出すことで、「他者にとっての他者」として認識され、コミュニケーションをとっています。本書では、こうした自分と他者の関係に触れながら、自分が何者であるかを考えていきます。
 
 授業では、どうすれば「自分がいったい何者であるか」という問いに答えが出せるか考えました。「他者に決めてもらう」であるとか、「自分で自分をプロデュースして作り上げる」とか、さまざまな意見が出ましたが、本文を参考にして考えると、「他者」との関わりは無視できず、かといって他者に「あなたは〇〇〇だ!」と言われてそれをそのまま受け入れることもできないはずです。著者はこの問いに対して自分の内部にばかり目を向けるのではなく、外部と客観的関係を持つことが必要であり、プライヴァシーという観念を再検討しつつ、他者と比較して欠けているものを考えることにヒントがあるのではないかと述べていました。自分が何者かを考えるとき、どうしても自分の内部に目が行きがちですので、著者のこの視点は新たな考えを導くきっかけとなりました。


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