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数学こぼれ話#35 ~通過領域を徹底攻略!(その1)~

皆さん、こんにちは。
Y-SAPIX数学科がお届けするこぼれ話では、高校数学を一歩踏み込んで理解するためのヒントをお伝えしています。今回と次回は、入試の頻出テーマである「通過領域」について、見ていきたいと思います。


皆さんは、次のような問題に出会ったことはありますか?

【問題】
$${t}$$を実数全体で変化させたとき、直線$${l_t:y=2tx-t^2}$$が$${xy}$$平面内で通過して得られる領域$${D}$$を図示せよ。

パラメータである$${t}$$に数値を入れるたびに、直線$${l_t}$$が定まり、$${xy}$$平面内に1本の直線が引かれます。例えば$${t=0}$$とすれば直線$${l_0:y=0}$$が引かれ、$${t=1}$$とすれば直線$${l_1:y=2x-1}$$が引かれ、$${t=2}$$とすれば直線$${l_2:y=4x-4}$$が引かれ、・・・という具合です。このようにして引かれた直線の集まり$${D}$$を求めよう、という問いです。

少し昔話をすると、筆者がこの手の「通過領域の問題」に初めて出会ったのは、高2の全国模試です。当時は通過領域の扱い方など聞いたことがなかったので、困り果ててしまい、解答用紙に定規でたくさんの線を引いた「作品」を提出するしかありませんでした。当然の0点!

さて、「原因→結果」に関するこの手の問題に対処するためには、受験の世界では「順像法(自然流)」「逆像法(逆手流)」と呼ばれている2大手法があります。今回は、順像法(自然流)による扱い方を見ていきましょう。

〇まずは感覚から

上で確認した通り、実際に物事が起きている舞台は、平面という「2次元」の世界です。例えるなら、暗い部屋の中に無数のレーザー光線が飛び交っているような状態で、この全貌を頭の中で描こうとしても、さすがに無理があります。

そこで、「高次元は難しいので、まずは低次元から」という数学の基本姿勢に立ち返り、視点を固定するところから始めてみます。このアイデアを図にすると、次のようになります。

根底にあるのは、「直線$${x=1}$$上の結果」「直線$${x=2}$$上の結果」…が全部分かれば、それらをつなぎ合わせることで、$${xy}$$平面内で実際に起こっている様子の全貌が分かるはず、という考え方です。この考え方はFAX(※細切れになった画像データを次々に受信してつなぎ合わせ、1つの画像を作る)に似ているので、「ファクシミリの原理」と呼ぶ人もいます。

ただ、実際には無数の直線を相手にするので、「直線$${x=X}$$」($${X}$$は実数の定数)のように、少し「ボカシて」おくところがポイントです。

またまた余談ですが、最近はあまりFAXを使わなくなってきました。なので、「ファクシミリの原理」という言葉も、そろそろ何か新しい言葉にバージョンアップした方がよいのかもしれません。

〇解答を作ってみよう

さて、①→②→③の流れをふまえて解答を書くと、次のようになります。

順像法(自然流)による通過領域の扱い方を見てきましたが、いかがでしょうか。「固定する→固定を外す」という部分は、慣れるまでは少し大変だと思います。似たような問題を使って、実際に解答を書いてみましょう。

次回は同じ【問題】を、逆像法(逆手流)という手法で扱います。それでは、次の数学こぼれ話でお会いしましょう!


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