数学こぼれ話#21 対話シリーズvol.4 ~なぜ「=k」で図形を考える?~
皆さん、こんにちは。Y-SAPIX数学科がお届けする対話シリーズ、第4弾のテーマは「線形計画法」です。この分野でよく見られる、値の範囲を求めるために「$${=k}$$」とおいて図形を考える…という定番の流れを、「お決まりの儀式」で片づけていませんか? 2人の会話を通じて、ワンランク上の理解を目指してみましょう。
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Y太:「理由は分からないけど、なんか解けること」ってあるよね。
S子:それって、解けてることにならないような…。
Y太:手厳しいなぁ(笑) 例えば「実数$${x,y}$$が$${\gdef\bar#1{#1^2} \bar{x}+\gdef\bar#1{#1^2} \bar{y}=1}$$を満たすとき、$${2x+y}$$の値の範囲を求めよ」みたいな問題では、とりあえず「$${2x+y=k}$$」とおいて、直線$${y=-2x+k}$$と円$${\gdef\bar#1{#1^2} \bar{x}+\gdef\bar#1{#1^2} \bar{y}=1}$$が共有点をもつような$${k}$$の範囲を求めればよい、というのがあるけど。
S子:典型問題!
Y太:この方法って、どことなく「押し付けられてる感」が強くない?
S子:言われてみると、なんでこの方法で$${2x+y}$$の範囲が求まるんだろう…。そもそも、数式の話なのに、直線と円をいきなり考え始めるのは一体どういう…。
Y太:ようこそ、「こちら側の悩み」へ。
~後日、教室にて~
Y太:昨日の疑問を先生にぶつけたら、「なかなか鋭いですね。2つの問いを出すので、これをヒントに考えてみましょう。」とのこと。
問1:$${2x+y}$$が値3をとることはあるか? 理由を付けて答えよ。
問2:$${2x+y}$$が値2をとることはあるか? 理由を付けて答えよ。
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S子:問1だけど、これはNO。なぜなら、$${\begin{cases}2x+y=3\\\gdef\bar#1{#1^2} \bar{x}+\gdef\bar#1{#1^2} \bar{y}=1\end{cases}}$$が実数解$${(x,y)}$$をもたないから。
問2は、$${\begin{cases}2x+y=2\\\gdef\bar#1{#1^2} \bar{x}+\gdef\bar#1{#1^2} \bar{y}=1\end{cases}}$$が実数解$${(x,y)=(1,0),(\dfrac{3}{5},\dfrac{4}{5})}$$をもつので、YES。
Y太:なんとなく、「$${2x+y}$$がとれる値」の正体が浮かび上がってきたような。つまり、$${\begin{cases}2x+y=k\\\gdef\bar#1{#1^2} \bar{x}+\gdef\bar#1{#1^2} \bar{y}=1\end{cases}}$$が実数解$${(x,y)}$$をもつような$${k}$$というのが、「とれる値」なんだ!
S子:ところで、「$${2x+y=k}$$」を満たす点の集まりは直線、「$${\gdef\bar#1{#1^2} \bar{x}+\gdef\bar#1{#1^2} \bar{y}=1}$$」を満たす点の集まりは円だから、実数解$${(x,y)}$$があるとすれば、それは直線と円の共有点と一致するね。
Y太:「実数解があるか?」という問題が、「直線と円は共有点をもつか?」という問いに書き換えられるのかぁ。そもそも「図形と方程式」って、そういう単元だった。
S子:今までの流れをまとめると、<図>のようになるね。
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Y太:言い換えを2つも挟んでるのなら、道理で「飛躍してる」と感じるわけだよ。「とれる値」の定義に関わる①と違って、「数式の問題」を「図形の問題」に言い換えている②は、別に必須というわけではないね。つまり、「$${=k}$$」とおいて直線と円を考えるというのは、実は義務ではなかった…。
S子:今までは答えが出るだけで満足していたタイプの問題だけど、かなり視界がクリアになった感じ。
Y太:「解ける」から「分かる」へ!
それでは、次の「対話シリーズ」で再びお会いしましょう!
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