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数学こぼれ話#30 ~パラメータを消すだけで大丈夫?~

皆さん、こんにちは。数学こぼれ話が、遂に30回の大台に乗りました。今回は、図形と方程式に出てくる「パラメータ曲線」について、詳しく見ていきましょう。単なる「文字消去」では正しく扱いきれないパラメータ曲線の奥深さ(「解法暗記」の限界!)が、伝わると思います。ちなみにY-SAPIXの数学では、高校2年生の6月にこのような話題を扱います。

〇教室でのワンシーン

先生と生徒が、授業中に話しています。その様子を少し覗いてみましょう。

先生:

$$
\begin{dcases}{x}=t^2+1 \\y=2t^2-1\end{dcases}
 (tは実数)
$$

で表される点の軌跡を求めてみましょう。

生徒:簡単簡単。こういう問題のときはパラメータ$${t}$$を消去したらよいので、1つ目の式を$${t^2=x-1}$$として2つ目の式に使えば$${y=2x-3}$$が得られるので、軌跡は直線。
先生:「直線」で大丈夫? 「直線の一部」とかではなく?
生徒:しまった。$${t}$$は実数なので$${t^2≧0}$$で、実は直線のうち$${x≧1}$$の部分です。
先生:そうですか。本当にそれで大丈夫ですか?
生徒:そうそう! 同じように考えれば、実は直線のうち$${y≧-1}$$の部分でもあります。

〇パラメータさえ消せばよい?

先生からの質問攻めに、生徒はすっかりタジタジです。どうやら、「やみくもにパラメータ$${t}$$を消せばよい」というわけではなさそうですね。では、「完璧にこれで大丈夫!」と言えるには、どう考えたらよいでしょうか? 手はじめに、【質問】を2つ出してみます。皆さんなら、どのように結論しますか。簡単のため、求める軌跡のことを以下では「曲線$${C}$$」と呼ぶことにします。

【質問1】点(2,1)は曲線$${C}$$上か?
【質問2】点(3,2)は曲線$${C}$$上か?

少し考えて、結論が出たら画面をスクロールしてみましょう。

〇「原因があるか」がカギ!

まず【質問1】ですが、

$$
\begin{dcases}{t^2+1}=2 \\2t^2-1=1\end{dcases}
$$

を満たす実数$${t}$$は存在する$${(t=±1)}$$ので、点(2,1)は曲線$${C}$$上です。実際に$${t=1}$$などを与えれば、点(2,1)が実現します。

【質問2】も同じように考えれば、

$$
\begin{dcases}{t^2+1}=3 \\2t^2-1=2\end{dcases}
$$

を満たす実数$${t}$$が存在しないので、点(3,2)は曲線$${C}$$上ではありません。

このように考えると、一般的には次のようなことが言えると分かります。

では、(*)を更に推し進めるにはどうしたらよいでしょうか。実はここは「同値変形の訓練」が少し必要なところで、詳しくは数学こぼれ話#28(~「同値変形」で見通しよく解く~)をご覧ください。キーワードを改めて復習しておくと

「消去するために使った式はそのまま残そう」

でした。この原則に沿って、(*)を進めてみます。

書き換えが完了したら、最初(☆)と最後(★)だけを取り出して眺めれば

ということで、曲線$${C}$$の正体は「直線$${y=2x-3}$$のうち、$${x≧1}$$ の部分」です。質問攻めに遭った生徒も、結果的には正しい結論が途中で出ていたのですが、(論理的に正しいという)安心感が違います。

ここまでの流れを振り返ると、実は「パラメータを消す」のではなく、正しい書き換えを進めていくと「パラメータが消える」というのが真相です。些細な違いに見えるかもしれませんが、この部分をしっかり理解しておくことが、ゆくゆくは大切になってきます。

それでは、次のこぼれ話でお会いしましょう!


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