数学こぼれ話#26 実社会シリーズvol.6 ~植物に現れる数列~
皆さん、こんにちは。Y-SAPIX数学科がお届けする「実社会シリーズ」が第6弾を迎えました。今年度ラストの記事では「数列×植物学」と題して、植物の中に現れる数学に注目してみましょう! 「世界は数学の言葉で書かれている」と言われますが、それを実感してもらえると思います。
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〇黄金比$${1:\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$
何の変哲も無さそうに見える$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$という数は「黄金数」と呼ばれており、ある意味で「無理数の象徴」とも呼べるような数です。この数の発見は古代ギリシャまで遡り、当時の数学者(ピタゴラスたち)が、正五角形の図形的な性質を調べる中で発見されたと言われています。
図1のように、一辺の長さが1の正五角形があるとき、補助線を引いて相似の式を立てることで、その対角線の長さは$${x=\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$と求まります。言い換えれば、「黄金比$${1:\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$」とは、正五角形の一辺と対角線の比なのです。このような比率は、実は植物の葉の生え方によく現れています。「正五角形」(数学)と「植物」(自然界)を繋ぎ合わせる数$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$には、一体どんな秘密が隠されているのでしょうか?
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〇無理数を有理数で近似する
$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$を小数に直すと$${1.6180339887\cdots}$$となり、小数点以下はランダムかつ無限に続きます。
いわゆる「無理数」と呼ばれるこの数を、整数の比で近似してみましょう。そのためには、次に見るような「連分数」という考え方を使うと便利です。連分数の一般論はなかなか難しいですが、$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$であれば、次のような簡単な方法を使って連分数に直すことができます。
つまり$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$という数は、$${\left( *\right)}$$のような「$${1}$$」が無数に並ぶ分数(連分数)で表すことができ、それぞれのステップを途中で打ち切ることで、$${2 , \cfrac{3}{2} , \cfrac{5}{3} , \cdots }$$という近似分数を次々と得ることができます。このステップ数を増やせば増やすほど、その分数は$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$に近づいていくのですが、そのペースは、実はあらゆる無理数の中で最も遅いことが知られています。そのため、最初にコメントした通り、$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$は「最も無理数らしい無理数」と言えるのです。
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〇葉の生え方を調べてみよう
ご存知のように、植物は葉に日光を受けることで光合成を行い、生きていくのに必要なエネルギーを得ています。ですので、枝から葉を出すときに意識すべきポイントは「葉がなるべく重ならないこと」です。そうすれば、なるべくムダなく日光を受け取ることができるのです。もし近くに植物があれば、真上から眺めてみましょう。たくさんの葉が手前から奥に向かって回転しながら並んでいますが、それぞれの葉は微妙にズレながら並んでいるはずです。では、1つの葉に対してどういう角度で次の葉を出すと良いのでしょうか?(「葉序」と呼ばれます)
図2に示した、2タイプの葉序を見てみましょう。①,②,・・・の数字は、植物を真上から見たときに、この順に葉が出ることを表します。どちらの回転角も「$${360^\circ\div}$$(有理数)」なので、何回か葉を出していくと、やがて葉同士がピッタリ重なることが分かります。
一方で、回転角が「$${360^\circ÷}$$(無理数)」の場合は、どれほど葉を次々に出しても、決して①の葉と重なることがありません。では、もし回転角を
「$${360^\circ÷\cfrac{1+\sqrt5}{2}}$$」にすると、どうでしょうか? 現実世界を生きる植物にとって、完璧に「$${360^\circ÷\cfrac{1+\sqrt5}{2}}$$」を実現することはできません。しかし、$${\cfrac{1+\sqrt5}{2}}$$は「最も有理数から遠い無理数」なので、この角度(「黄金角」と呼ばれます)さえ意識しておけば、少しくらいの誤差が出ても「$${360^\circ÷\cfrac{89}{55}}$$」といった具合になります。$${\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}}$$を有理数で近似したものは、分母と分子の桁数がとにかく大きいのです。もし回転角が「$${360^\circ÷\cfrac{89}{55}}$$」なら、①の葉と重なるのは90番目の葉ですので、実際の植物にとっては十分な成果と言えるはずです。実際の植物を調べてみると、その回転角は「$${360^\circ÷\cfrac{3}{5}}$$」や
「$${360^\circ÷\cfrac{8}{5}}$$」になっていて、植物が「黄金角」を意識して葉を出していることは明らかです。
ちなみに、$${\cfrac{1+\sqrt5}{2}}$$の有理数近似は$${2 , \cfrac{3}{2} , \cfrac{5}{3} , \cfrac{8}{5} , \cfrac{13}{8} , \cfrac{21}{13} , \cfrac{34}{21} , \cfrac{55}{34} , \cfrac{89}{55} \cdots }$$となり、分母と分子には「フィボナッチ数列」が関わっていることが分かります。花びらの枚数を調べてみると「3枚、5枚、8枚、13枚、…」となっているものが多く、「葉が花の各器官に変化する」というのが定説ですので、やはりここにも「黄金比」を読み取ることができますね!
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