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【大学受験】高校数学をスムーズに学習するには→新たな道具をフルに使いこなそう

受験を経て高校に進学した生徒と中高一貫校生を比べた場合、こと数学に関しては授業の進度が早い後者に分があるとされています。しかし、大学進学について見てみると、高校受験生も十分に高い実績を残しています。自身も3年後にそうなりたいと思ったとき、高校数学にはどのように取り組めばよいのでしょうか。中学と高校の数学の違いや学習上の留意点について、Y-SAPIX数学科教科長の山崎啓太に聞きました。


難度が高まる高校数学 
良問を解き、定義を理解

――中学と高校の数学の間にはどんな違いがあるのでしょうか。

Y-SAPIX数学科教科長 山崎啓太

山崎 中学数学を踏まえた上で新しい内容が加わるため、高校数学は中学数学とは比べものにならないほど学ぶ内容が増え、かつ難しくなります。例えば中学校では、二次関数は放物線の頂点が必ず原点にあるものしか扱いませんが、高校で学習する放物線の頂点の位置はさまざまです。新しく学ぶ主要な単元としては三角関数、ベクトル、微分・積分などが挙げられるでしょう。こうした“新たな道具”を使いこなせるか否かが、高校数学の重要なポイントになります。

――それらの新しい道具をうまく使うにはどうすればよいのでしょうか。
山崎 雰囲気で何となく分かったつもりになるのではなく、その概念がどういうものか、どんなふうに役に立つのかといった定義・基礎をきちんと理解することが重要だと考えています。

数学Ⅰで最初にサイン、コサイン、タンジェントについて学ぶとき、直角三角形を使って三角比を教わります。すると、角度が90度以上の三角比を考える場合にも、同じように三角形を描こうとして混乱してしまう生徒がいます。このように、「サイン、コサイン、タンジェントとは何か」という定義がしっかり理解できていないと、急に数学が分からなくなってしまうのです。ですから、道具の特性を一つ一つ押さえて、問題を解くために使いこなせるようにしていかなければなりません。

――定義・基礎を正しく理解できるようになる方法はありますか。
山崎 人それぞれですが、通常は問題を解きながら使い方や意味をつかんでいきます。解いているうちに、「これは役に立つな」とか、「先生が言っていたのはこういうことだったのか!」と気付く瞬間があり、それで納得できればなかなか忘れません。そういう状態をぜひ目指してほしいですね。

――ということは、とにかくより多くの問題を解くのがよい、と。
山崎 本来ならできるだけ多くの問題を解いてほしいのですが、時間が限られていますので、良問を選んで解くことが大切です。Y-SAPIXでは最適な問題を厳選したテキストを用意しています。

――授業では新しい単元の学習をどんなふうに進めていくのですか。
山崎 「中学数学の知識では解けない問題があり、それを解決するには新しい道具を導入することが必要だ」ということを、生徒たちが理解できるようにしています。

中学校の初等幾何の問題では、図形の角度は30度、45度、60度などに決まっています。しかし、高校では例えば78度のような一般の角度について考えることがあります。その場合、新たな道具として三角比が必要になる、という具合です。空間図形を想像できない生徒も、ベクトルという道具があれば、立体的な図形の状況を把握できるようになります。

高校数学の道具は、人類の歴史の中で考えに考えられてきた、優れたものばかりです。生徒たちにはその良さに気付いてもらいたいですね。

数学が得意でも油断は禁物 
暗記だけの学習法は通用しない

――中学校まで数学が好きで得意だった生徒が、高校に進んでから苦手になることもあります。それは新しい道具を使いこなせていないからでしょうか。

山崎 そのとおりです。最大の要因はそれらが抽象的でイメージしにくいことにあります。中学校で習う食塩水の濃度や速さを苦手という人は多くいますが、イメージできない人はいません。しかし、高校で学ぶ三角関数やベクトルは日常生活で出合う機会がほとんどありません。そうした抽象的な道具を自分のものとして使いこなすには時間がかかるので、よく分からないまま受験勉強に突入して数学嫌いになってしまう人は多いですね。

また、中学数学を解法や公式の暗記で乗り切ってきた生徒が、高校で学習内容が増えたことで覚えきれなくなり、苦手になるというパターンもあります。原理をきちんと考えず、「こういう問題が出たら、この公式を使おう」という姿勢で数学に取り組んでいると、高校数学には対処できなくなります。

――高校では解法のバリエーションがそこまで増えるのですね。理系と文系では、数学の範囲はどのくらい異なりますか。
山崎 数学Ⅲの微分・積分、平面上の曲線、複素数平面の三つが理系特有の範囲です。これらを押さえるのはかなり大変ですが、医学部や東大・京大などの理系学部では、その単元を十分に理解してないと解けない問題が出されます。

文系は理系に比べれば負担が軽くなりますが、数学Ⅱの微分・積分やベクトルなども入りますので、簡単とは言い切れません。主要な国公立大学は文系でも数学が受験科目に入っていますし、大学入学共通テストまでは必須としている大学も多いですね。特に経済学部に進学する場合は、数学を勉強しておかないと後々苦労します。

高校受験で得た強みを力に計算力を付け、早めにスタート

――高校数学でつまずかないように、心掛けておくべきことはありますか。
山崎 解法を暗記するのではなく、中学生のうちから、やっていることの意味を考える習慣を付けてください。

もう一つお伝えしたいのは、計算力が非常に重要であること。もちろん、計算が得意だからといって数学ができるようになるわけではありませんが、少なくとも計算力がないと数学ができるようにはなりません。

――計算力の鍛え方を教えてください。
山崎 練習あるのみです。早く正確に解けるよう、量をこなしてください。中学校の段階では、二次式の因数分解ができるように、また多少難しくなっても間違えずに解けるようにしておきましょう。

――高校の範囲を先取りで学んでいる中高一貫校生との進度の差は、どうやって埋めていけばよいでしょうか。
山崎 やはり、できるだけ早く高校数学の勉強を始めることです。入学前の3月に開講する「SAPIX新高1準備講座」では、中学では学習しない三次以上の方程式の計算も扱いますので、高校からさらに必要となる計算力を身に付けることができます。

「数学ハイレベルスタートダッシュ講座」は、「正十七角形を作図する」を目標にして、高2・高3レベルの問題も取り入れた、腕に覚えのある人に挑戦してほしい内容になっています。ぜひ受講して、高校数学の第一歩をスムーズに踏み出してください。
また、4月からは高1の間に中高一貫校生に追い付けるよう、週3時間の授業を行う「数学速習【文理共通】」も用意しています。Y-SAPIXで一緒に頑張っていきましょう。

――最後に、高校受験生の皆さんにメッセージをお願いします。
山崎 抽象的な高校数学の道具は、高校3年間の短い期間で使いこなすのは難しく、先行している中高一貫校生は確かに有利です。しかし、皆さんが高校受験に向けて、因数分解や式の展開に時間をかけて取り組んできた努力、三角比やベクトルを使わずに培った図形の素養は、大学受験でも大きな強みになります。自信を持って、高校数学のスタートを切ってください。

この記事は2024年1月16日刊行の『SQUARE』2・3月号に掲載された記事のWeb版です。

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