リベラル・アーカイヴス#2 宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波書店)
『リベラル・アーカイヴズ』とは?
note連載記事「リベラル・アーカイヴズ」では、過去に取り上げた作品の中から、受験生の皆さんに一緒に考えてもらいたい書籍を厳選し、紹介していこうと考えています。
第2回目は、
2010年夏、東京・代々木にY-SAPIX東大館を開校したときに、SAPIX YOZEMI GROUPの教材研究・カリキュラム&各種企画立案に携わるプロフェッショナルが集い、そこで誕生したのが新科目――それが「リベラル読解論述研究」です。
さまざまなジャンルから厳選した課題書籍を一冊丸ごとテキストにして、精読、討論、論述を行うオリジナル科目です。毎週1冊配布するサピックスオリジナルのテキストとのコラボレーションにより、生徒一人一人の思考力、表現力を総合的に鍛えていきます。
1冊読み終えると、小論文として自分の考えをまとめあげる練習も。もちろん、担当講師が一枚一枚丁寧に添削し、フィードバックを行います。
中1から高3までの6年間で60本近くの小論文を執筆していきますから、気づけば相当な力が身につくわけです。
宇野重規作品を読み「デモクラシー」を思索!
高1リベラル読解論述研究では、宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波書店)を扱いました。
筆者は「希望学プロジェクト」(東京大学社会学研究所)に関わっており、本書の目的は「単なる現状分析のみならず、日本社会、あるいは人類社会の未来について、今後どのように展望していくべきか」のアイディアを読者に提供することだと述べています(「あとがき」より)。
本書によれば、〈私〉を生きることにこだわる現代の個人にとって、社会は重要な参照軸になるといいます。社会というものが一人一人の人間に対して「位置」と「役割」を与えてくれるからです。自らを基礎づける外部の根拠を欠き、中心にあるはずの権力の場も空虚であるという「答えのない」状況において、社会的な意味を絶えざる論争を通じて模索し創出しようとする自己反省的なプロセスが欠かせません。〈私〉時代のデモクラシーは、そのための場をつくりだしてくれる、というのが本書の主題(テーマ)です。自己批判と自己変革のために他者との議論の場を作り続けることが課題といえるでしょう。
以上の内容を踏まえて、「答えのない時代」における「未来への希望」とはどのようなものか、身の回りから具体例を探し、意見を出し合いました。講師解答例は次のとおりです。
■講師解答例
生徒の皆さんにわかりやすく「解答例」と表記していますが、一講師の考えを小論文の形式に則って書いてみた、というスタンスです。リベラル読解論述研究の授業では、講師も生徒の皆さんと対等な立場で議論し合います。「解答例」を読んで「これはおかしいぞ!」と異論・反論があれば、ぜひ先生にきいてみてください。
では、解答例を紹介します。
次回をお楽しみに。
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