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リベラルアーツ

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このマガジンでは、Y-SAPIXのオリジナル授業「リベラル読解論述研究」で使用した書籍を紹介していきます。
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記事一覧

リベラル書籍紹介#28『動物農場[新訳版]』ジョージ・オーウェル

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、中学3年生が4月期で使用した『動物農場[新訳版]』です。 この社会が生きづらい。 みなさんはそういうとき、どうしましょうか? 先日統一地方選挙があったため、選挙で変革を訴えている候補者に投票して……と思った人も多いかもしれません。 しかし、選挙という制度がない体制ではどうでしょうか。 自分たちの苦痛を訴えるすべがない。 それどころか為政

リベラル読解論述研究~憲法記念日特別編

 Y-SAPIXでは毎年5月に『池上彰の憲法入門』を読んでいます。  この本は池上氏の著作のなかでも特に読みやすく書かれています。小学校で習った程度の知識があれば十分に読み通すことができます。大事なところは太字になっていてポイント整理が簡単です。  この本は中学1年生の授業で扱いますが、毎年憲法記念日が近づいた頃に読み返せば、その度に憲法とは何かという根本に立ち返ることができます。当たり前にあるように思われる憲法というものについてじっくりと考えるきっかけになります。  

リベラル書籍紹介#27『世界の教科書でよむ〈宗教〉』藤原 聖子

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、中学2年生が春期で使用した『世界の教科書でよむ〈宗教〉』です。 4月といえば……新年度を迎え、新しい学校・学年への期待に心躍らせる季節ですね。新しい教科書を受け取り、「今年はどんなことを学習するんだろう?!」とワクワクしながらページをめくってみた人も多いのではないでしょうか? 本書では、そんな「教科書」から宗教とはどのようなものかを考えていき

リベラル書籍紹介#26 『不平等を考えるー政治理論入門』斎藤 純一

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、高校生が2月期で使用した 『不平等を考えるー政治理論入門』です。 この本、面白いタイトルですね。本書における「不平等」な事態とは、「値しない」(=不当な)有利-不利が社会の制度や慣行のもとで生じ、再生産されている事態を指します。 これとの関連で「運の平等主義」という概念が出てきます。本人に帰責することのできない、諸事情によって引き起こされる

リベラル書籍紹介#25 『アートは資本主義の行方を予言するー画商が語る戦後七〇年の美術潮流』山本 豊津

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、高校生が1月期で使用した 『アートは資本主義の行方を予言するー画商が語る戦後七〇年の美術潮流』です。 みなさま、突然ですが芸術はお好きですか?  とりわけ現代アートと言われる作品群、いかがでしょう? 「正直よくわからないなぁ」という人も多いのではないでしょうか。 実際わたくしも高校時代、世界史の資料集で「泉」や「マリリン」といった作品を見て

リベラル書籍紹介#24 『おもしろ古典教室』上野誠

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、中学1年生が12月期・冬期で使用した『おもしろ古典教室』です。 これは本書第一章のある節の小見出しです。やや奇をてらった表現に思えますが、読者の皆様はどのように感じるでしょうか。 もともと古典が好きでない方は「その通りだ」と共感するかもしれませんし、古典が好きな方はどう反論しようかと考えるかもしれません。 古典の価値を否定するこの言葉は、

リベラル書籍紹介#23 『噓つきアーニャの真っ赤な真実』米原 万里

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、高校生11月期で使用した『噓つきアーニャの真っ赤な真実』です。 〇書籍の概要本書は、著者が1960年代のプラハにあったソビエト学校で少女時代を過ごした時の体験を元に書かれたエッセイです。三つのエピソードが掲載されていますが、中でも表題となっている『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』は、ナショナリズムとアイデンティティについて深く考えさせられる内容

リベラル書籍紹介#22 『現代語訳 論語と算盤』渋沢 栄一 、守屋 淳訳

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、高校生10月期で使用した『現代語訳 論語と算盤』です。 渋沢栄一と『論語』 皆さんは「渋沢栄一」という人物をご存知でしょうか。簡単に紹介すると、渋沢は明治維新後の日本において500近い会社の設立に関わり、「日本資本主義の父」「実業界の父」としてノーベル平和賞の候補にもなった人物です。 鉄道、電力、ガス、銀行など、私達が日常生活で享受するイ

リベラル書籍紹介#21 『これを知らずに働けますか?』竹信 三恵子 

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、中学3年生9月期で使用した『これを知らずに働けますか?』です。 この書籍では、仕事選び、賃金、ワークライフバランスなどを考えたうえで、労働問題から自分の身を守るための基礎知識が解説されています。 「全国労働衛生週間」というものをご存じですか?毎年10月1日から7日まで、厚生労働省は「全国労働衛生週間」を実施しています。これは、労働者の職場環

リベラル書籍紹介#20『平和をつくる(『世界』岩波書店 1966年9月号)』小田実

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、高校生8月期・夏期で使用した『平和をつくる(『世界』岩波書店 1966年9月号)』です。 小田実は戦後を代表する評論家で、自らの戦争経験から「難死の思想」や「人民の安保」といった独自の思想を育ててきた知識人としても有名です。授業では、小田の平和観を丁寧に読み解きながら、小田の思想が、今私たちが生きる混沌とした国際社会の指針になりうるのか、論点

リベラル書籍紹介#19 古典の世界の「みやび」

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」において扱った内容について、担当する職員が紹介していきます。 今回は中学生7月期・古典の授業で扱った「みやび」というテーマについてお話ししていきます。 三大流星群の一つである「ペルセウス座流星群」をご存じでしょうか? 毎年8月中旬ごろに観測できる流星群ですが、国立天文台によると、今年は8月13日午前10時頃に流星群の活動が特に活発になる、極大を迎えると予想されています。特に13日の未明頃が流星を見やすい時間

リベラル書籍紹介#18 『「宿命」を生きる若者たちー格差と幸福をつなぐもの』土井 隆義

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、高校生6月期で使用した『「宿命」を生きる若者たちー格差と幸福をつなぐもの』です。 現代の若者たちに課せられた「宿命」とは 本書の題名で目を引くのは「宿命」という単語です。カギカッコがつけられ、強調されていることから、この書籍では宿命という言葉にスポットを当てていることがわかります。 まず、宿命という言葉の意味をあらためて確認してみましょう。宿

リベラル書籍紹介#17『旅に出ようー世界にはいろんな生き方があふれてる』

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、中学生4月期で使用した『旅に出ようー世界にはいろんな生き方があふれてる』です。 この本は、著者が5年間かけて世界中をめぐった旅の記録です。しかし、単に異国での風景や文化の紹介にとどまった書籍ではありません。 著者はこの旅で、さまざまな人と出会い、仲良くなり、深く語り合うことを一貫して積極的に行っていますが、その目的は「世界にはいろいろな生き

リベラル書籍紹介#16『なぜ人と人は支え合うのか -「障害」から考える-』

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。 今回は、中学生3月期で使用した『なぜ人と人は支え合うのか -「障害」から考える-』です。 これは、本書のテーマを端的に示した一文です。 本書は「障害者と健常者の共生」について述べています。しかしながらこの書籍は、どうすれば障害者も快適に暮らせるか、障害者にやさしい世の中にするべき、というような「障害者は社会的な弱者である」という考えを最初から取り払