【解法解説】共通テストIA 分析と変更点まとめ
2024年度(令和6年度)の共通テストの数学IAについて、現役生対象の大学受験塾Y-SAPIXが徹底分析しました。
秋を迎え、いよいよ共通テストに向けた取り組みが本格的に始まる時期になりました。2025年度入試を迎える高3生の皆さんは「新課程入試」の第一世代にあたるので、新しい出題形式や出題範囲による共通テストを受験することになります。共通テストの対策で過去問を使う予定の方もいると思いますが、「そもそも、出題形式や出題範囲はどう変わるのか?」「2024年度以前の過去問はどのくらい役立つのか?」など、色々な疑問が浮かんでくるところです。このあたりに焦点を当てながら、共通テストの数学IAについて見ていきましょう。
第1問
[1]は「数と式」からの出題で、誘導に従って$${√13}$$の値を小数第2位まで求める問題です。$${b}$$の値を上下から評価するキクまでは、流れに沿っていけば難所は無いはずです。ケは単発の問いとして解けますが、小数第1位・小数第2位を求めるコとサは、式⑥の$${a}$$が2$${√13}$$-7を表していることを思い出し、「実は$${√13}$$を上下から評価する式になっている」ということに気付く必要があるので、ここで差が付くでしょう。
[2]は「図形と計量」からの出題で、坂道の上にできる電柱の影の長さを調べる問題です。リード文が少し長いですが、図1を先に見て空間的な状況を掴めば、文章を細かく読む必要はありません。実質的には、坂の真横から見た図2が示すような、平面図形の問題です。「斜辺の長さに$${sinθ}$$をかければ高さが出る」という三角比の基礎事項を押さえていれば、ソタチまでは問題ないでしょう。最後のテトナニは方針次第では難航するので、深追いするかどうかは時間配分から判断しましょう。
2025年度は第1問が数I範囲の必答問題なので、似たような出題が予想されます。最後の方の設問では上手く誘導に乗ることが求められますので、共通テストの過去問演習が有効です。
第2問
[1]は「2次関数」からの出題で、台形の辺上を動く点で作られる三角形の面積を扱う問題です。$${0≦x≦3}$$を考える(2)までは点QがUターンしないので、スムーズに進めるはずです。(3)では3≦x≦6を考えるので、Uターンした後の長さOQを正しく$${x}$$で表せれば、特に難所はないはずです。(4)は二次不等式を解くだけですが、出てくる値が複雑なので注意が必要です。
[2]は「データの分析」からの出題で、いくつかの長距離競技の公認記録について、相関関係を調べる問題です。(1)の(ⅱ)までは、基本的な用語の定義が分かっていれば問題ないでしょう。(ⅲ)では「ベストタイム」という見慣れない量が出てきますが、表1を元に計算するだけです。(2)は散布図が2つ与えられていますが、(a)は該当する点に注目し、(b)は点の分布から定性的に判断するだけで解けます。今年度の第2問[2]は、比較的ライトな出題でした。
2025年度は第2問が数I範囲の必答問題なので、似たような出題が予想されます。「2次関数」は実生活に関係する内容と結びつくことが多く、また「データの分析」はその特性上、いずれも長文での出題になりがちです。状況を手早く把握して解く訓練の機会を増やす意味で、共通テストの過去問演習が有効です。
第3問
「場合の数と確率」からの出題で、A~Dのカードが入った箱からカードを複数回取り出す確率の問題です。
(1)(2)(3)と進むにしたがってカードの種類が増え、各小問内では(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)と進むにしたがって試行の回数が増えます。A~Cの3種類以内で考える(1)(2)は、誘導に従って「場合の数」の問題として処理すれば問題ないでしょう。4種類のカードを考える(3)では、「最後を固定して状況を具体化する」という手法が太郎と花子の会話で提示されていますが、このような手法は共通テストに限らず大変有効です。「6回目がD」と固定すれば、結局は「1~5回目でA,B,Cがいずれも最低1枚ずつは取り出される」という場合の数を求める問題となります。「3回目で初めてA,B,Cが揃う」「4回目で初めてA,B,Cが揃う」「5回目で初めてA,B,Cが揃う」という場合分けは自然に感じられるはずですが、(2)(ⅱ)や(2)(ⅲ)で得られた値を上手く引用しながら計算する必要があるので、なかなか大変です。スセまで解くか、ソタまで解くか、チツテトナまで解くかは、時間配分と相談しながら判断しましょう。
2025年度は第3問が数A「場合の数と確率」の必答問題なので、似たような出題が予想されます。「これまでの結果を引用しながら、より多い種類や回数へ発展させていく」という流れに慣れるためにも、共通テストの過去問演習が有効です。
第4問
「整数の性質」からの出題で、3種類の$${n}$$進法タイマーに表示される数字についての問題です。3進法タイマーは1秒ごとに000→001→…と表示が代わり、27秒ごとにリセットされます。同様に、4進法タイマーは64秒ごと、6進法タイマーは216秒ごとにリセットされます。一見すると見慣れない状況設定ですが、上のことさえ分かってしまえば、(2)は最小公倍数、(3)は不定方程式の問題に過ぎません。(3)のヒントで示されているように、それぞれのタイマーについて、「T4をスタートした$${ℓ}$$秒後にT4の表示が012である」⇔「$${ℓ}$$を64で割った余りが6である」⇔「$${ℓ=64L+6}$$」という言い換えができるので、(3)では$${64L+6=27K+5,64L+6=216N+8}$$という不定方程式を解きましょう。まずは特殊解を求め、そこから一般解に向かう、いつもの流れです。
2025年度の共通テストIAでは「整数の性質」が出題されないので、過去問演習をする場合には「第1問・第2問・第3問・第5問」のセットで取り組むようにしましょう。なお、二次試験で数学Aを課す大学の出題範囲は、「全範囲」「場合の数と確率・図形の性質」の2タイプに分けられます。「全範囲」の大学では、これまで通り「整数の性質」(※新課程では「数学と人間の活動」という名称になっていますが、内容はほぼ同一です)の内容が出題されうるので、標準レベルの整数問題を解くために共通テストIAの過去問を使うことは有効です。
第5問
「図形の性質」からの出題で、一部の比が与えられた星形図形を調べる問題です。(1)では「△AQDと直線CEに着目すると」のような指示はあるものの、元々の図形が複雑なので、メネラウスの定理を使うべき図形を抜き出して扱うようにしましょう。(2)(ⅱ)(ⅲ)は、方べきの定理を2回使った結果を組み合わせて議論する、目新しい設定です。「3点を通る円」と「線分」について様々な組み合わせが出てくるので、「同一直線上にあるどの3点の並びを考えているのか?」を見失わないよう、注目している部分だけを抜き出した図を描きながら進めましょう。終盤は同じような議論を何度も繰り返すだけではありますが、(ⅲ)まで解くかどうかは、時間配分と相談しながら判断しましょう。
2025年度は第4問が数A「図形の性質」の必答問題なので、似たような出題が予想されます。共通テストの平面図形は、使う道具(円周角の定理・方べきの定理・チェバの定理・メネラウスの定理など)こそ限られているものの、その使いどころがカギになります。複雑な図形の一部を抜き出した図を描くなど、見通し良く解くための工夫をする練習が欠かせないので、共通テストの過去問演習が有効です。
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