【国語力を高める100冊】#2「読む」・石黒圭『「読む」技術』/光文社新書
脳科学の視点から、読書と脳との相互作用の関係を生き生きと描いたみせたメアリアン・ウルフの『プルーストとイカ』(インターシフト)では、読みのレベルを次のような階層で捉えています。
まず、本に書かれている文字のひとつひとつを指でなぞるように読んでいく〈解読〉。次に、そうやって文字に親しむことで、文章を一定のリズムで読めるようになり、その意味するところを考える〈流暢〉。最後に、書かれている内容に対して批判吟味ができる〈戦略〉。読むことは、このように階段を上るようにレベルアップしていくものです。
ところで、生徒から「国語の成績を上げるために読書はした方がいいですか」とよく聞かれます。同じような質問を受けた国語講師の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。実は、この質問に対して、国語講師の間でも意見が分かれます。「読書と受験国語は関係ない」と断言する人もいます。たしかに読書と受験国語が全て重なるわけではありません。大学によって国語試験のあり方は多様ですし、それは当然、個別の対策が必須でしょう。読書さえしておけば万事よしというわけでないことは、私も承知しています。
ですが、「読書はした方がいいですか」という先ほどの質問に対して、私は声を大にして「イエス」と言いたいと思います。読書は、それを効果的に行えば、受験国語においても必ずプラスに寄与するものだと私は信じているからです。では、その効果的な読書とは何か。それがずばり、〈戦略〉です。メアリアン・ウルフは、〈戦略〉について具体的な方法論を明示しているわけではありませんので、ここでは私の考える読解〈戦略〉なるものを紹介したいと思います。
お分かりの通り、①~⑤はすべて、そのまま現代文試験の設問対策となっています。このようにきちんと戦略性を持って本を読めば、読書はちゃんと現代文の問題を解く力にもつながってくるのです。おそらくですが、「読書をしても国語の成績が伸びなかった」という人は、こうした戦略を持つ意識が希薄だったのではないでしょうか。字面を追っているだけでは、いくら読書をしても読む力は身につきません(というより、それは読書という行為ですらないでしょう)。
さて、さきほど挙げた私の読解戦略はあくまで一例です。より精緻な読解戦略について知りたい方は、『「読む」技術』(石黒圭 光文社新書)をお薦めします。
本書では、八種類の読解戦略が紹介されていますが、読む行為ひとつに、これほどまでに多様な引き出しがあることに驚かされます。読了後は、本書で学んだ読解戦術を、実際の文章で試してみるとよいでしょう。
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