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大学歴訪録 #8 京都大学

大学受験 Y-SAPIX

自由の学風と創造の精神を掲げ
「世界に輝く研究大学」を目指す

京都大学は国内屈指の難関国立大学です。その歴史は古く、唯一無二の独自の学風でも知られています。2020年10月、湊長博先生が新たな総長に就任し、大学執行部も一新。理事・副学長に就任した平島崇男先生に、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮敏郎共同代表がリモートインタビューでお話を伺いました。

創立125周年のスローガンは
「京大力、新輝点。」

髙宮 1897年創立の京都大学は、2022年に創立125周年を迎えられますね。

平島 新総長の湊はこの周年事業について、「京都大学に関わるすべての人たちが『確認作業』を行うための貴重な機会」と捉えています。本学はこれまでどんな時を刻んできたのか、これからどのような方向に進もうとしているのかを確認する作業です。

平島写真_Aiトリミング

京都大学理事・副学長 平島崇男先生
 京都大学の創立125周年のスローガンは「京大力、新輝点。」。「京大力」とは文字通り、京都大学の持つ力のこと。「125年の歴史の中で培われ、さらに未来に向かって進化を続ける力。知的好奇心が旺盛で、コミュニケーション能力に優れ、誰も思いつかないようなことを閃き、自由闊達な議論を得意とする」など、「総合的かつ戦略的な力」を指すという。
 一方、「新輝点」とは125周年を機に新たなスタートを切る「起点」と、枠にとらわれない「京大力」の臨機応変さの「機転」という二つの「キテン」を表すそうだ。

髙宮 2020年10月、貴学の新たな総長に湊先生が就任されました。

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SAPIX YOZEMI GROUP 髙宮 敏郎 共同代表
実際のリモート取材風景

平島 総長に就任するに当たり、湊は「世界に輝く研究大学を目指して」という基本方針を掲げました。これは本学が2017年に文科省の「指定国立大学法人」に指定されたことを受けたものでもあり、「京都大学は研究大学である」という立ち位置を明確に示したものです。つまり、本学は「研究」を重視する大学で、「学生にはできる限り大学院まで進学してほしい」というメッセージも込められています。

髙宮 近年の京大生の大学院進学率はどのくらいの水準にあるのでしょうか。

平島 文系学部の入学者の大半は修士課程への進学を選ばず、学部卒で京大を離れます。また、理系学部の入学者の多くは修士課程に進学しますが、やはり、その大半は修士課程修了後に京大を離れます。そのような状況なので、京大の博士課程において、京大学部出身者の割合は決して高いとは言えない状況なのです。「研究大学」を標榜するなら、博士課程への進学者をもっと増やすことが必要です。さらに、ポスドク後のキャリアパスを事前に提示するなど、出口戦略の準備も進めているところです。

コロナ禍を経験して
対面授業の大切さを再確認

髙宮 コロナ禍はいまだに続いていますが、特に2020年の春はコロナ対応でいろいろご苦労されたのではないでしょうか。

平島 私たち教員よりも、学生の皆さんの方が大変だったと思います。特に現在の2回生(取材当時)は入学して以来オンライン授業が大半で、後期が始まるまで教員にも同級生にも会えなかった例があったと聞いています。また、2021年7月に全国大学生協が行ったアンケートによると、全体として現2回生のメンタルヘルスのリスクが高い傾向にあるとのことでした。

髙宮 大学教育はオンライン授業だけでは完結しない、ということですね。

平島 私は、大学教育における最も大切な要素は「出会い」だと考えています。私が40年以上前に本学に入学したとき、最も刺激を受けたのは同級生との会話でした。本学には全国各地からトップクラスの学生が集まっていて、高校までに出会ったことのなかった頭脳や才能とじかに触れ合える。その経験が何より大きいのです。2020年度の新入生の多くはコロナ禍でそんな貴重な出会いの場を奪われてしまった。2021年度は最初の2週間だけ対面授業を実施したので、短期間ではあっても貴重な出会いの場を提供できたことは良かったと考えています。
 もちろん、オンラインにはオンラインの良さがあります。特に有効なのが、座学。テキストの図表は大教室のスクリーンより手元のPCのほうがクリアに見えるし、予備資料も自由に閲覧できます。
 ただ、オンラインでは、対面授業の臨場感が伝わりません。例えば、周りの学生がどう反応しているか、といったことです。特にダメージが大きいのは理系の実験とフィールドワークですね。私の専門の地質学では野外調査が極めて重要ですが、これはオンラインでは代替できません。地層や岩石の露頭写真を見せることはできますが、そうすると多くの学生は寝てしまうようです(笑)。

髙宮 今後の授業はどのように行われていくのでしょうか。

平島 学生からも教員からも対面を望む声が大きいので、可能な限り対面授業を行っていきたいですね。と同時に、感染予防の観点から、全学共通の授業など全体の2~3割がオンライン授業になるでしょう。

図書館の蔵書は720万冊超
今後は電子化を推進

髙宮 私の父は英文学者で、古い貴重な本を図書館で発見する喜びについて、幼い頃から繰り返し聞かされてきました。平島先生は貴学の図書館担当理事でもいらっしゃいますが、図書館を探検する喜びは今もおありでしょうか。

平島 私も古い本を見つける喜びには共感しますね。例えば、私が所属していた地質学鉱物学教室には第一次大戦前後のドイツに留学した教授がおられ、古本屋の本を丸ごと買って帰国されたと聞いています。その中には学術誌『ネイチャー』の貴重な創刊号が含まれていました。本学の図書館にはそんな貴重な文献が数多く眠っているのです。

髙宮 「Z世代」と呼ばれる今の学生たちは、生まれたときからインターネットやスマホが当たり前に存在していました。そんな学生たちですから、図書館の活用法も変わっていくのでしょうね。

平島 そう思います。本学には本部の附属図書館をはじめ、附属図書館宇治分館、吉田南総合図書館、文学研究科図書館、教育学部図書室など40以上の図書館があり、合計720万冊超の蔵書があります。それらは全てデータベース化されていますが、今後は書籍そのものを順次電子化していこうと考えています。紙の本は確かに魅力的ですが、電子書籍であれば、学生もオンラインで気軽に利活用できますから。新たに購入する図書も、今後は電子書籍がメインになるでしょう。

学びたいテーマが
明確にある人に来てほしい

髙宮 ここで入試関連のお話を伺います。どんな学生に入学してほしいとお考えですか。

平島 私は自分のやりたいこと、学びたいことを明確に持っている学生に来てほしいですね。例えば、理学部では1990年代まで必修科目がありませんでした。つまり、「自分がやりたい研究のために必要な科目を自分で選択せよ」という発想です。現在の全学共通教育の各学期の履修登録の上限単位数は30単位が基本ですが、理学部の1回生前期の上限単位数は34単位としています。その理由の一つは、理学部は1学部1学科制で、専門を決めるのが3回生からなので、それまでに自分の進みたい分野を見つけられるよう幅広い科目を履修できるようにするためです。このようなシステムをフルに活用し、自分のやりたい研究にぜひチャレンジしてほしい。

髙宮 京都大学では「特色入試」が話題を呼びましたね。導入されて6年になりますが、これまでの手応えはいかがですか。

平島 理学部限定の話になりますが、理学部では数学系で先行して特色入試を実施し、本当に数学の力のある学生が入学するようになりました。しかし、数学は得意だけれどコミュニケーションが苦手という人もいて、就職活動で挫折を味わうケースも少なくありません。理学部では、自分の考えを言語化して他者に伝える機会は卒業論文くらいしかないからです。個人的には、もっと早い段階でコミュニケーション能力を鍛える機会があってもいいと考えています。

髙宮 最後に、受験生や保護者へのメッセージをお願いします。

平島 本学には「これを学びたい」という明確な目的を持って入学する人がたくさんいます。理学部なら「フィールズ賞を取りたい」とか「湯川秀樹に続く素粒子学者になりたい」とか。SNSで同じ目標を持つ者を募り、「自主ゼミ」を立ち上げる学生も多いですね。大学側も自主ゼミを応援していて、例えば理学部では自主ゼミの活動に使えるよう、講義室を18時以降開放しています。また、大学院には独立研究科が六つあり、多くの学生が自分の好きな研究に喜々として取り組んでいます。
 私たちは、「教育」を受けるのは高校までで、大学は自主的に「研究」する場だと考えています。自分の好きなことを研究したい人はぜひ本学を目指してください。

 独立研究科とは学部を持たず、大学院課程にのみ存在する研究科のこと。京都大学にはエネルギー科学研究科、アジア・アフリカ地域研究研究科、情報学研究科、生命科学研究科、総合生存学館(思修館)、地球環境学舎の六つがあり、いずれも多様な学部の卒業生を受け入れ、複合的な学域の創出と深化に携わる研究者や実務家の養成に力を入れている。

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最新の入試情報は、理事・副学長の村上 章先生にお話を伺いました。

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京都大学理事・副学長 村上 章先生

2016年から導入した
「高大接続型」特色入試とは?

多様な学生を集めるため
全学部全学科で実施

 京都大学が入学者の選抜方法として、従来の一般入試に加え「京都大学特色入試」を導入したのは2016年度選抜からでした。募集人員は学部学科ごとに幅がありますが、現在では全学部全学科で実施されています。2022年度の募集人員は全学部学科の合計で165人です。
 特色入試を導入した狙いについて、副学長で、財務、入試担当理事の村上章先生は次のように話します。
 「本学が特色入試を始めたのは、大きな可能性を秘めた多様な学生を1人でも多く集めたかったから。将来、さまざまな分野でリーダーシップを取って社会に貢献できる人材を発掘・育成するには、従来の一般入試だけでなく、高校における学修や活動の成果にまで視野を広げ、本人の志も総合的に評価する必要があると考えたのです」
 特色入試では高大接続と個々の学部教育を受けるための基礎学力を重視し、合否は大きく分けて次の2点で判定されます。
①高等学校での学修における行動と成果
②個々の学部におけるカリキュラムや教育コースへの適合力
 多くの学部学科では第1次+第2次の2段階選抜としています。①を判定する材料として、高校が作成した「調査書」「学業活動報告書」、本人が作成した「学びの設計書」「学びの報告書」などの書類の提出が必要です。
 ②については、大学入学共通テストの点数(必要な教科は学部学科ごとに異なる)に加え、能力測定考査、論述試験、論文試験、口頭試問、面接試験などを学部学科ごとに適宜組み合わせて判定されます。
 なお、医学部医学科と工学部は学校推薦型選抜となっていて、高校の「推薦書」が必要です。さらに、医学部医学科ではTOEFL iBTのスコアも求められます。

一般入試組と特色入試組が
互いに切磋琢磨する

 一般入試と特色入試で選抜方法は異なりますが、入学後は同じキャンパスで分け隔てなく学業と課外活動に励むことになります。多様な可能性を秘めた学生たちが切磋琢磨することで、互いに成長していけるはずだと大学側も期待しています。
 特色入試を導入して6年たちましたが、良い効果が現れています。一般入試の募集人員は特色入試に振り分けられた分だけ減少したため、より狭き門になって優秀な学生を獲得しやすくなりました。一方、特色入試で入学した学生は、学力で一般入試組に負けないよう、入学当初から必死に勉強してくれるのです。
 結果として、従来なら入学後しばらくは気の抜けた状態になりがちだった一般入試組も、真面目に勉強する特色入試組に刺激され、「こちらも負けてはいられない」と、いち早く学習のエンジンに火が入るのだとか。まさに切磋琢磨が現実のものとなっています。
 最後に、村上先生から読者へのメッセージをいただきました。
 「受験に際しては、『自分のやりたいこと』をしっかり持っている人の方がモチベーションの面で有利です。しかし、やりたいことが見つからなくても悲観する必要はありません。そもそも高校生の段階では自分の適性も分からないし、世の中にどんな学問や職業があるかも知らないのですから。大学という出会いの場で多くの人の話を聞きながら、やりたいことをじっくり探せばいい。私の専門は地盤工学ですが、そんな学問があること自体、入学当初は知りませんでした。高校生のうちは研究者になりたい、医療分野で働きたいなど、職業観を漠然と持てていればいいのではないでしょうか。読者の皆さんの特色入試への挑戦をお待ちしています」

■プロフィール
理事・副学長 平島 崇男さん
ひらじま たかお●1978年京都大学理学部卒業。1980年金沢大学大学院理学研究科修士課程修了。1985年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。1985年京都大学理学部助手、1995年京都大学大学院理学研究科助教授を経て2002年京都大学大学院理学研究科教授。2019年京都大学大学院理学研究科長・理学部長。2020年10月、教育、情報、図書館担当として京都大学理事・副学長に就任。地質学者としての主なテーマは超高圧変成岩の研究、地下深部流体の研究。理学博士。

■京都大学の紹介

1百周年時計台記念館外観1

百周年時計台記念館
※画像は京都大学提供

京都大学は1897年、わが国で2番目の帝国大学として創立されました。以来、124年の長い歴史と伝統を誇る、総合人間学部、文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、薬学部、工学部、農学部の10学部21学科、18の大学院研究科、吉田、宇治、桂の三つのキャンパスを擁する総合大学です。
 京都大学の建学の精神は「自由の学風」。自然科学分野では湯川秀樹、朝永振一郎、福井謙一、利根川進、野依良治、益川敏英、小林誠、山中伸弥、赤﨑勇、本庶佑、吉野彰と、アジアの大学で最多となる11人ものノーベル賞受賞者を輩出しています(敬称略)。
 もちろん、人文社会科学分野も負けていません。先人たちは「京都学派」と呼ばれる独自の思想・文化体系を確立し、日本の学術界で唯一無二の存在感を示し続けてきました。
 720万冊超の蔵書を誇る図書館群、iPS細胞研究所をはじめ多様性を誇る13の附属研究所など、施設も充実しています。
 目下の話題は2022年に創立125周年を迎えること。6月にはその記念式典が行われるほか、多くのイベントが開催予定です。

■Y-SAPIXよりお知らせ

この記事は2022年2月21日に刊行された『Y-SAPIX JOURNAL』2022年3・4月号に掲載された記事のWeb版です。
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今回の「大学歴訪録 京都大学」のWeb版未収録部分の他、大学受験にまつわる情報などを掲載した『Y-SAPIX JOURNAL』を配布中です。
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