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2023年度 東京大学・世界史

出題傾向

東大の世界史は例年、大問3題で構成され、第1問は20行(600字)前後の大論述、第2問は1~4行(30~120字)の小論述が複数問、第3問は設問に対して語句を答えさせる記述問題が10問という内容です。

2023年度も基本的には例年通りの構成で出題されており、変化はありません。一方で、第1問では時代・地域ともに広範なテーマが設定され、東大世界史らしい出題に回帰したといえます。また、1992年度以来31年ぶりに地図が使用されたことも今年の大きな特徴でしょう。


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第1問

「1770年前後から1920年前後までのヨーロッパ、南北アメリカ、東アジアにおける独立、政治体制と国民の政治参加の変化」を20行(600字)以内で論述させるというスケールの大きな出題でした。

まずはリード文の題意に沿って時代別・地域別に該当事項を整理することが大事です。答案を構成する際、時系列順で書くか地域別で書くかで迷うかもしれませんが、書きやすい方であればどちらでも構いません。

時系列順なら、国民国家の理念の成立、ウィーン体制、国民国家の拡大、ヴェルサイユ体制の流れに沿った答案になります。
地域別なら、地域ごとに革命や独立による政治体制の変化を述べた答案になるでしょう。

ここで大切なことは、本設問における指定語句の意味(役割)を熟考することです。
例えば「アメリカ独立革命」であれば、設問条件の一つである政治体制の変化(植民地→共和国)に言及できます。
「ヴェルサイユ体制」では、東欧諸国の独立に言及するのは容易ですが、ヴェルサイユ体制の時期(戦間期)に「国民の政治参加」、つまり、女性参政権が拡大したことにも言及できるはずです。
「帝国議会」なら、ドイツ帝国議会議員が男性普通選挙で選ばれていた一方、政府に対し議会の権限が抑制されていた点を想起します。これがリード文第1段落の「議会にどこまで権力を与えるか、国民の政治参加をどの範囲まで認めるか」に対応していることに気付いたでしょうか。

第2段落冒頭に「以上のことを踏まえて」とあるように、第1段落の内容も無視できないことが分かります。このように、東大の世界史はリード文全体をよく読み、何が求められているのかをよく理解したうえで答案を組み立てることが肝要です。

そのために、普段から問題文を読解する際にそれに関連する歴史事項として具体化する訓練を積み重ねておきましょう。今年の大論述は問題の要求に該当する歴史事象の具体例が数多く挙げられるため必然的に解答の幅が大きくなるといえますが、必ず設問の要求に即した答案を意識したいものです。


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第2問

河川に関連する設問が中心でした。全体的に見て小論述は教科書レベルの定番の問題が多かったため標準的な難易度といえます。

特に問(2)(b)「マムルークの特徴と役割」は、2012年第2問にもほぼ同内容の問題が出題され、過去問演習の重要性が改めて実感できるでしょう。問(1)(a)と問(2)(a)の短答記述問題についても、文章中のキーワード(「長江下流域」、「ティグリス川」、「マンスール」)から容易に解答を導けます。

問(2)(c)「クテシフォンを建設した国で起こった文化的変容」についての問題は、「クテシフォンを建設」とあるのでササン朝ペルシアではなくパルティアであることに注意。
パルティアといえばイラン系の国家というイメージが強いために、初期にはヘレニズム(ギリシア)文化の強い影響を受けていたことは盲点だったはずです。
解答は、「ヘレニズム文化の受容→イラン民族文化に回帰」の流れを軸として、「言語面を中心に」という条件があるので公用語がギリシア語からペルシア語に変化したことは必ず言及したいです。

第3問

医学に関連した設問が中心でした。いずれも基本内容で易しく全問正解を狙いたいです。問(2)は設問文に著者の「ボッカチオ」の名前がなく内容理解で解答しなければならず、やや戸惑うかもしれません。文化史、特に主要な文学作品についてはあらすじも把握しておきたいものです。


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