【解法解説】2024年度 一橋大学 日本史
2024年度(令和6年度)の一橋大学(前期)の日本史について、現役生対象の大学受験塾Y-SAPIXが徹底分析しました。
一橋大学は例年,第1問を前近代,第2・3問では近現代史が出題され,ほとんどが論述問題です。分野で言うと,社会経済史が多いという特徴がありますが,2024年度は前年度同様に政治・経済・社会からバランスよく出題されました。
一橋大学の日本史では,大問1つにつき400字の解答用紙が与えられますが,小問ごとの字数指定はないので,受験生は自分で小問一つ一つの字数配分を決める必要があります。以上のような情報も前提にして,いくつか問題を見ていきましょう。
1 Ⅰの問4
「『仁風一覧』出版の歴史的意義とは?」
Ⅰは江戸時代の城下町にあった町人地に関する出題でした。教科書にも記載のある事項について多く問われましたが,だからといって簡単というわけではありません。特にⅠのなかで受験生が「難しい」と感じたのは問4だったと思います。「『仁風一覧』を出版したことの歴史的意義」なんて学校や塾で習ったこともないはずですし,そもそも『仁風一覧』を知っている受験生はほとんどいないでしょう。要は単に知識を持っているだけでは太刀打ちできない問題にどう対応するのかが問われているのです。
(1)「歴史的意義」って何?
そもそも「歴史的意義」とは何か。論述の演習をしていると,しばしば「歴史的意義」や「意義」を問われることがあります。「歴史的意義」と言われると,「何!?」と戸惑い,身構えてしまったりしませんか。
ある研究者によれば,「歴史的意義」の有無を判断する一つの基準として,ある出来事や人物などが社会に何か重要な変化をもたらしたかどうかがあります。その変化が長い間多くの人々に重大な結果を及ぼす場合,変化をもたらした出来事や人物は学ぶ価値があると言えます。このように歴史上の出来事や人物が学ぶ価値のあるような重要な変化を社会にもたらした場合,その出来事や人物は「歴史的意義」を持つと考えてよいでしょう。たとえば,16世紀のヨーロッパ人の来日は,戦争における鉄砲の使用や,江戸時代における鎖国政策の展開といった様々な面で日本社会に変化をもたらしました。ヨーロッパ人の来日はその後の日本社会に大きな影響を与えたので,「歴史的意義」があると言えるのです。
(2)リード文の情報を踏まえて思考する
-窮民救済の新たな常識の創出-
この点を踏まえたうえで,リード文を丁寧に読みましょう。持っている知識で対応できないのですから,リード文からヒントを得るしかありません。そうすると,もともと窮民への対応は町奉行の重要な役目であったのが,享保17(1732)年を境に窮民救済の主体が変化していることが読み取れます。将軍徳川吉宗の呼びかけに応じた各地の富裕町人が窮民救済の主体に加わっているのです。『仁風一覧』はこのような窮民救済にあたった町人の名前を記載し出版しています。
それでは『仁風一覧』を出版するとどのような影響を社会に及ぼすのでしょうか?ここで頭をフルに回転させましょう。『仁風一覧』の内容は多くの人々の目にするところとなり,「町人も窮民救済にあたったほうがよい」との考えが社会全体に共有されるはずです。ここに『仁風一覧』出版の歴史的意義があり,従来の「窮民救済の主体=幕府の役人」から「窮民救済の主体=幕府の役人+富裕町人」と人々の考えをシフトさせたのです。リード文最後の「こうして富裕な町人も,窮民救済の担い手となっていったのである」との説明はそのことを示しているのでしょう。
(3)Ⅰの問4のような問題を解くために
本問のような問題を解けるようにするために,まずは「歴史的意義」とは何なのか,上の説明でもう一度確認しておきましょう。また一橋日本史の場合,リード文を読まないと解けない問題が出題されることがあります。本問でもリード文をヒントに思考できるかがポイントでした。持っている知識だけでは対応できない場合,リード文を丁寧に読んでみるとよいでしょう。同じようにリード文を丁寧に読まないと解けない問題として,2011年第1問4などが挙げられます。
2 Ⅲの問2
「第一次オイルショック時と第二次オイルショック時の光熱価格の推移の違いは?」
次にⅢの問2について見ていきます。これはかなり難しく感じる問題です。第一次オイルショックの時と第二次オイルショックの時の光熱価格の推移の違いについて,政治的経済的背景とともに述べることが求められました。
(1) グラフから丁寧に情報を読みとる
―第一次オイルショックと第二次オイルショック時の価格推移の違い―
グラフが提示されているので,まずは丁寧にグラフを読み解くことが必要です。そうすると違いははっきりしています。第一次オイルショックの時には光熱価格以外にも食料価格・賃金が同じくらいの上昇率で伸びています。一方,第二次オイルショックの時には光熱価格の上昇率が約40%である一方で,食料価格と賃金の上昇率は10%にも届きません。「第一次オイルショック時と第二次オイルショック時の違い」に関しては,この辺りを整理し答案に盛り込めばよいでしょう。
・第一次オイルショック…光熱価格は,食料価格・賃金と同じように上昇
・第二次オイルショック…光熱価格は,食料価格・賃金に比べ大きく上昇
最近では一橋大学の問題に限らず,提示された史資料に関して問われているにも関わらず,それを丁寧に見ないで持っている知識だけで答えようとする受験生が多い気がします(それでは絶対に解けませんよね)。グラフも含め史資料について問われたら,必ず丁寧に情報を読み取ることを心がけましょう。
(2) 両時期の違いの政治的経済的背景
それでは,上で挙げた両時期の違いはどうして生じたのでしょうか。設問の要求のうち「違いを生み出した政治的経済的背景」について考えてみましょう。
第一次オイルショックに関しては比較的書きやすかったのではないでしょうか。第一次オイルショックと同時期に国内で田中角栄内閣により日本列島改造政策がすすめられ,それに伴い,地価の高騰が見られました。こうしたことを背景に物価が大きく上昇する狂乱物価が起こったことを踏まえれば答案を作成できるでしょう。
ここでは第一次オイルショックが列島改造政策とともに,当時の物価高騰の原因として整理し学習されているかがポイントです。単に用語だけを覚えるのではなく,一つ一つの歴史的事象の因果関係等を踏まえて学習することが大切なのです。
一方,第二次オイルショックの時には減量経営の実施や労働運動が抑えられていたこともあり,賃金の上昇率はそこまで大きくありませんでした。賃金が抑制されれば当然社会の消費活動も制限されます。このため,食料価格・賃金は光熱価格に比べ上昇率が大きくなかったのです。第二次オイルショック時の政治的経済的背景についてはちょっと説明するのが難しい気もしますが……一橋大学らしいですね。
3 一橋日本史を解くために
昨年度の一橋日本史についてのnote記事では,知識を正確に理解することと,設問の要求を理解することの重要性を説明しました。この点は2024年度も変わりません。
今回はリード文を活用することや,提示された史資料を丁寧に読むことの重要性を指摘しました。単に用語を暗記するだけでなく,与えられた材料を使って歴史を考える力をつけていくことを心がけましょう。
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