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2023年度 一橋大学・日本史

一橋大学は例年,第1問を前近代,第2・3問では近現代史が出題され,ほとんどが論述問題です。分野で言うと,社会経済史が多いという特徴がありますが,2023年度は政治・経済・社会からバランスよく出題されました。

一橋大学の日本史の,他にはみられない特徴として,大問1つにつき400字の解答用紙が与えられますが,小問ごとの字数指定はないので,受験生は自分で小問一つ一つの字数配分を決める必要があります。以上のような情報を前提に,いくつか問題を見ていきましょう。


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正確な知識理解
―経世論と朱子学・荻生徂徠の学問の関係―

例年,難問が出題されるのが一橋大学の特徴で,今年もその例に漏れず,第1問の問2が難問でした。

第1問の問2では経世論を朱子学及び荻生徂徠の学問とそれぞれ関係づけて説明することが求められました。

経世論と荻生徂徠の学問の関係については,教科書に

「荻生徂徠は……統治の具体策を説く経世論に道を開いた」
(『詳説日本史』,山川出版社,2017年,p.214),

とあり,荻生徂徠の学問が経世論発展の契機となったと評価できます。

問題は経世論と朱子学の関係。これはなかなか説明しにくい…。
ただし,丁寧に学習した受験生は気づくはず。前述の山川の教科書では経世論を「統治の具体策」としていますね。

一方,朱子学については

「大義名分論を基礎に,社会を維持するための教学」
(同上,p.214),

とあり,社会秩序を維持するための道徳として重視されました。
つまり経世論と朱子学には,統治のための具体策か,社会秩序維持のための道徳かという違いがあるとわかるでしょう。
 
経世論や朱子学を正確に理解していないと,設問の要求にもこたえることは出来ません。用語の内容をふわっと覚えて満足するのではなく,教科書に書
いてあることを丁寧に理解しようとする姿勢が大切です。


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字数配分を考える、設問の要求を踏まえ解く
―掛屋と札差―

第1問の問4では掛屋と札差について説明するよう求められました。
蔵屋敷に集められた年貢米などを蔵元が売却した後,その代金を保管し藩へ送付した商人が掛屋,一方旗本・御家人の俸禄米の売却を請け負った商人が札差ということは知っているでしょう。こうした簡単な説明だけでも,十分に設問の要求に答えられているように見えます。

ただし,第1問のほかの小問はあまり多くの字数を割く必要のないものばかりなので,問4でもう少し字数を伸ばしたいところです。このように自分で各小問の字数を考えなければならないのが一橋日本史の難しさの一つでもあります。設問全体を見渡して、まずは字数配分を考えましょう。

それではどのような説明を付け足せばよいのでしょうか?
ここでは設問の要求に注目。掛屋と札差の概要を説明することが求められているので,掛屋・札差が活躍した背景も書くと良いでしょう。概要を問われたら,背景事情や結果・影響についても書くという意識を持っておくとよいです。
各藩の財源となる年貢米や旗本・御家人の給与となる俸禄米は換金しないと,生活物資を購入することもできません。こうした事情もあり,一旦蔵元・掛屋や札差に俸禄米を預け,換金しているのです。 

一橋日本史を解くために

まずは知識を正確に理解しておく必要があります。これは当たり前のことなのですが、毎年一橋大志望者の論述添削をしていると、知識を正確に理解していないために得点できる答案を作成できていないことに気づきます。

また設問の要求を理解することも大切です。設問の要求を理解していないと,必要な情報を組み込むことができなかったり,反対に不要な情報を答案に組み込んでしまったりする可能性があります。これはもったいないですよね。答案を作成する前に丁寧に設問を読み,何が求められているのか理解するという姿勢が大切なのです。


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