東京大学 2020年度入試分析
難関大入試を突破するには、相応の学力とともに入試に関する情報を把握しておくことが重要で、入試の現状を知ることが、明確な目標設定と対策を講じることにつながります。ここでは2020年度入試の結果分析と、2021年度入試の変更点を確かめていきます。
今回は東京大学についてお伝えします。
1. 全体出願状況
―超安全志向でも志願者数は 2.4%の減少にとどまる
2020年度前期日程の志願者数は2019年度よりも224人、率にして-2.4%の9,259人でした。志願者の減少は2年連続となりますが、減少した主な要因は、2021年度から始まる大学入試改革に対して不安を抱える受験生の「超安全志向」や、センター試験の平均点がダウンした影響などが考えられます。
ただし、国公立大前期全体では志願者が6%減少しましたが、それと比較すると東大は小幅の減少といえます。トップ層の東大志望は根強いものがあるといえるでしょう。
2. 科類別出願状況
―文一が4年連続の増加
志願者を科類ごとに見ると、前回よりも志願者が増えたのは文一(+0.1%)・理一(+0.3%)・理三(+2.0%)で、文二(-6.1%)・文三(-4.0%)・理二(-5.4%)は減少しました。
文科では、2019年度に合格者最低点・第1段階選抜合格最低点ともに文一を上回った文二が、その反動から6%以上の減少となり、一方で一時期人気低迷と言われていた文一は4年連続で増加しました。文三は2017年度から4年連続の減少となりましたが、これは第1段階選抜合格の最低得点率が2017~2019年度の3年連続で80%を超えたことが原因と考えられます。
理科では、理三が、2次試験に面接を復活し、第1段階選抜の予告倍率を約4.0倍から約3.5倍に縮小したことなどもあって志願者の減少が続いていましたが、4年ぶりに増加しました。2019年度に第1段階選抜の合格最低得点率が最も高かった理二は敬遠され、5%を超える減少となりました。
3. 第1段階選抜の実施状況と合格最低点
―第1段階選抜、4年連続で全科類実施
前期の志願者数が2年連続で減少しましたが、第1段階選抜は全ての科類で実施されました。全科類での実施は4年連続となります。
第1段階選抜合格者の最低得点率は、2019年度まで高めで推移していましたが、2020年度は受験生の「超安全志向」やセンター試験の平均点ダウンという影響もあり、得点率が低下した科類が多くなっています。最も顕著な例は文三の-19.4%ですが、文二の-12.9%、理二の-10.4%も目立ちます。
4. 合格者科類別成績における最低点
―理科は定番の「理三>理一>理二」
文科では最低点が高い順に文一>文二>文三となるのが通例でしたが、2019年度は大学がデータ公表を始めた2001年度以降初めて文二の合格者成績が最低点だけでなく最高点・平均点も含めてトップに躍り出ました。しかし、2020年度では志願者から敬遠され、志願者数が減少、文二最終合格者の最低得点率も大きく下降しました。
理科では、この10年間概ね最低点が高い順に理三>理一>理二となっています。理三は2020年度は前年度とほぼ横ばいで、最低得点率は70%台を維持、理一と理二は、概ね理一が得点率で2~3%高くなっていましたが、2018年度以降は1.5%差以内となっています。
5. 合格者の現役割合
―現役割合、過去10年で最高の67.9%
合格者の現役・浪人別の割合をみると、この10年間大幅な変動はなく比率は概ね2:1となっていますが、2020年度の現役割合はこの10年間で最高の67.9%でした。
科類別では、現役割合が最も高いのは文一の75.9%で、逆に最も低いのは理二で59.5%です。これまで理三が最も現役割合が高いことが多かったですが、2020年度の理三の現役割合は60%台に下降し、文一・理一に次ぐ3番目となりました。
6. 合格者の出身地別割合参照
―東京&関東以外の比率アップ、43.1%に
2020年度は東京を含む関東出身者の割合が2.3%減少して56.9%となり、その他の地区の出身者が43.1%となりました。増加傾向にあった東京を含む関東出身者の割合は、2019・2020年度は連続の減少となっています。一方、関東以外の割合については今回6年ぶりの43%台となり、近年増加の兆しが見えつつあります。
また、全国の地区別に合格率を算出すると、最も高いのは近畿地区で、この3年間はいずれも40%前後と全国平均(32.7%)を大きく上回っています。東京都内の合格率は32~33%、東京以外の関東地区は概ね28%の合格率となっています。
7. 合格者の女子割合
―女子比率は伸びるも、20%に届かず
女子割合は全科類の合計で前回よりも1.7%上昇して19.1%となったものの、東大が掲げる2020年までに女子学生比率を30%にするという目標には届きませんでした。
科類別で最も高いのが文三の33.4%ですが、最も低いのは理一で10.0%です。女子割合は高い順に文三>理二>文一の序列が多いですが、2020年度は上位3つを文科が占めたことが特徴的です。
推薦入試では2020年度入試まで「1校当たり男女各1名まで」という規定があり、一般入試に比べると女子割合は高くなりますが、2020年度は過去5年間で最高の45.2%となりました。
8. 推薦入試の状況
―推薦合格は73人にとどまる
後期募集の廃止と入れ替わりに2016年度から始まった推薦入試の志願者数は、5回目となった2020年度は合計で173人となり、2019年度からは12人の減少となりました。2020年度の志願倍率は1.73倍で、全5回とも2倍に満たない状況です。
全体の志願倍率はいずれも2倍未満ですが、全5回を通して志願倍率が高いのは概ね教養学部、次いで理学部・法学部なども高い傾向にあります。一方で医学部健康総合科学科は5回とも志願者数が2人以下(倍率は1倍未満)でした。
合格率をみると、学部や年度によってばらつきがありますが、志願倍率の高い教養学部は全5回とも合格率が低い傾向にあります。
2021年度入試の変更点
【一般選抜(旧 一般入試)】
―疎かにできないリスニング対策
東大の前期日程は、従来のセンター試験の英語については「筆記」のみを課していましたが、2021年度の共通テストからは「リスニング」も課すことになりました。
共通テストの英語については、素点が各100点満点の「リーディング」「リスニング」を、それぞれ140点満点、60点満点になるように換算して利用します。これによりリスニングは、第1段階選抜では900点満点中の60点、最終選抜では550点満点中の約7点となります。
2次試験の英語におけるリスニング(聞き取り)は継続して実施されますので、2次リスニングの配点を120点中30点と想定すると、共通テストと2次試験を合わせたリスニングは550点満点中約37点で、配点割合は約7%となります。東大合格のためにはリスニング対策も決して疎かにはできません。
【学校推薦型選抜(旧 推薦入試)】
―各高校からの推薦人数枠を拡大
従来の推薦入試では、学校長が推薦できる人数は「男女各1人までとし、男女いずれかのみが在学する学校においては1人」でしたが、2021年度の学校推薦型選抜では「合計4人までとし、男女各3人以内。ただし、同一学部(医学部については各学科)への推薦は男女各1人以内」に変更されます。この変更により、推薦入試の志願者数・合格者数はもちろんのこと、男女別割合・出身地別割合にも影響がありそうです。
なお、医学部医学科では従来センター試験での得点について合計780点程度を求めるとする基準を設けていましたが、2021年度よりこの基準は実質的に不要との判断で削除されました。
【新型コロナウイルス感染症への対応】
東大は新型コロナウイルス感染症によって出題科目・範囲は変更しないとしました。また、新型コロナウイルス感染症に罹患もしくは濃厚接触した可能性がある受験生が2次試験を受験できなかった場合の追試験を3月22・23日に実施します。
2次試験の英語におけるリスニングでは、2020年7月時点では教室を遮音にすることで換気の問題を生じさせかねないため、従来の約30分から20~30分程度へと若干時間を短くする可能性があることを発表していましたが、2020年11月、教室の換気は機械換気で十分に対応可能と判明したとして、従来通りの30分で実施すると発表しました。
また、学校推薦型選抜では、出願手続きが郵送からオンラインによる方法に変更となり、面接等試験の実施方法は、
①感染対策を講じての東大での対面方式
②高校と東大をzoomでつないだオンライン方式
のいずれかを検討中で、どちらの方式になるか等詳細は第1次選考の合格発表時に伝達とされています。
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