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【解法解説】2024年度 京都大学 数学

2024年度(令和6年度)の京都大学(前期)の数学について、現役生対象の大学受験塾Y-SAPIXが徹底分析しました。


〇理系

確率・整数・平面図形・空間図形・微積分と、様々な分野からバランス良く出題されました。6題のうち3題は、極限に関連する問題でした。2021・2023のような「小問2つからなる第1問」の出題は、今年はありませんでした。分量は昨年と同程度ですが、受験生にとって「類題」と思えるような解きやすい問題は減り、全体的に難化しました。その分、実力差が得点に反映されやすいセットと考えられます。また、誘導が少なく、自分の力で議論を組み立てることを求める傾向に変わりはありません。

第1問は、立方体の隣り合う面が異なる色で塗られる確率の問題です。参考書にも載っているような「立方体の塗り分け」ではありますが、「場合の数」ではなく「確率」で問われているのがポイントです。立方体のように対称性の高い図形では、回転や裏返しによって重なる塗り方を同一視して数え上げるのが難しいことは、この手の設定を「場合の数」で扱ったことがある方なら、ピンと来ると思います。しかし本問は「確率」が問われているので、6つの面を①~⑥のように名付けてしまえば、(2)まで含め、単純な場合分けの問題に帰着できます。難易度は標準程度ですが、確率に対する理解度しだいで大きく差が付いたことでしょう。

第2問は、2円の周および内部を独立に動く2点で定まる点の軌跡についての問題です。点$${x}$$を固定して点$${y}$$を動かすことで得られる円の周および内部(以下、「円板」とします)を先に求め、次に点$${x}$$を動かすことで、この円板が通過する領域を求めるのが標準的な解法と言えます。円板を求める時には、文字消去や相似の利用など、様々な方法が考えられます。いわゆる「予選決勝法」のような考え方で、東京大の過去問を使うと、このような考え方の練習をすることができます。難易度は標準程度ですが、動きのある図形に馴染んでいる受験生にとっては「稼ぎ」の問題に思えたことでしょう。
なお、本問は「複素数平面」の出題ですが、全く同じ考え方を使う内容が『中学へのDaily Exercises3月号』にも掲載されています。

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第3問は、2直線がねじれの位置にあるための条件を求める問題です。「ねじれの位置」は、今年の大阪大でも出題されました。大学受験で正面から問われることが少ない題材なので、戸惑った受験生が多かったと思います。2直線がねじれの位置にあるとは「2直線が交わらず、かつ平行でない」ことですが、文章を遠くから見ると「でない」を多く含むため、否定すると「である」が多く現れ、扱いやすくなります。つまり「2直線が交わるか、または平行である」ための条件を求め、最後にこれを否定したものが求める条件、と考えられれば見通しが良いです。なお、「2直線が交わるか、または平行である」を「4点が同一平面上にある」と言い換えれば、見たことのある設定に帰着されたことに気付くでしょう。難易度は標準程度ですが、受験生にとって隙のない議論を組み立てることは決して易しくはないでしょう。

第4問は、第$${n}$$項の偶奇に応じて第$${n+1}$$項が定まる数列の問題です。本学の受験者であれば、「場合分け」の形で定められた漸化式はこれまでに何度か出会っているはずですが、本問のカギは別のところにあります。実際、(1)(2)とも「全ての項が奇数」という状況で考えるので、実質的には第2式で定まる典型的な漸化式を繰り返し用いるだけで議論が進みます。注意したいのは、(1)(2)とも、得られた「最小の$${a_0}$$」が本当に以降の項を全て奇数にするかの論証が必要、という点です。数列の問題に見えますが、実際には「必要条件・十分条件」に関する問いであり、正確な論理を重んじる京都大らしい出題であると言えます。総合的に見ると、やや難です。

第5問は、2曲線と直線で囲まれた図形の面積についての極限を考える問題です。境界として与えられた2つの曲線は「双曲線正弦(ハイパボリックサイン)」「双曲線余弦(ハイパボリックコサイン)」と呼ばれる、大学以降の数学では時々登場する関数のグラフですが、増減や大小を丁寧に調べれば、図示は難しくないはずです。面積を計算する(1)もそれなりに計算が重いですが、なんとか解き切りたいところです。一方の(2)は、不定形を解消するために微分係数の定義式や平均値の定理を使う場面があるなど、高い処理力が要求されるので、限られた時間で解き切るのは大変です。本問の難易度は、やや難です。

第6問は、2のべき乗で定まる数列の最高位の数字についての問題です。「先頭の数字が1である」ということを「1×(10のべき乗)以上、2×(10のべき乗)未満」で書き換えるところは、本学の受験生にとっては慣れているはずです。その後はガウス記号などを用いて$${N_k}$$と$${L_k}$$を「$${n}$$だけの式」で上下から評価し、はさみうちの原理を使うことで極限値を求めます。このように見ると、発想面でのハードルはさほど高くありませんが、ガウス記号を解きほぐした上で的確に極限操作を行う必要があり、処理面でのハードルが高いのが本問です。その意味で、本問はやや難と言えるでしょう。
なお、本問の背景には「ベンフォードの法則」があり、その内容は、「ある種の統計的なデータでは、先頭の数字が『1』であるものが一番多く、先頭の数字が『9』であるものが一番少ない」というものです。こちらの記事で詳しく解説しています。

〇文系

確率・整数・空間図形・微積分と、様々な分野からバランス良く出題されました。分量は昨年と同程度で、十分な準備をした受験生にとっては方針の立ちやすい問題が多くありました。そのため、難易度も昨年と同程度です。方針が立ちやすい分、計算を完遂する力や論理的に不備のない記述をする力によって得点差が付くセットであったと言えます。

第1問は、与えられた条件を満たす四面体OABCの体積を求める問題です。等しい長さや直角が多く現れる対称性の高い四面体ですので、様々な解法が考えられます。「典型問題」の域を出ませんが、計算を完遂することは容易ではありません。そのため、本問はやや難と言えるでしょう。

第2問は、理系の第1問と同一の設定です。

第3問は、絶対値を含む2次関数の最大値を求める問題です。中身の正負に注目し、まずは絶対値を正確に外し、グラフの概形を描くところからです。その後は、原点対称な閉区間[-1, 1]上での最大値を調べるため、$${a}$$の係数に注目し、$${x}$$軸方向のスケールが正確なグラフを描くようにしましょう。本問に限らず、図を見ながら考えるタイプの問題では、図を大きく丁寧に描くように心がけましょう。本問の難易度は、標準です。

第4問は、3通りの記数法で表したときに桁数が一致する最大の自然数を求める問題です。題意の自然数を$${N}$$、桁数を$${m}$$のように設定し、8のべき乗・9のべき乗・10のべき乗で$${N}$$を3通りに評価するところから始めましょう。見慣れない状況ではありますが、共通している$${N}$$を媒介することで、$${m}$$について絞り込むことができます。log2やlog3が近似値ではなく不等式で与えられる点、必要性・十分性の正確な議論を要求する点をふまえると、京都大らしい出題と言えます。本問の難易度は、やや難です。

第5問は、放物線弧と直線が異なる2点で交わるような$${a,b}$$の条件を求める問題です。条件を求める部分は「二次方程式の解配置」、領域を図示する部分は「図形と方程式」、面積を求める部分は「積分法」と、様々な要素が融合された出題になっています。面積を求める領域が境界を含んでいませんが、気にせず積分を実行しましょう。


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