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英語こぼれ話#3 三人称単数のthey

大学受験 Y-SAPIX

みなさん、こんにちは。


前回までは単語の語源の話をしてきましたが、今回のこぼれ話のテーマは代名詞です。人称代名詞(I / my / meなど)を学習した生徒であれば、中学1年生でも理解できる内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

■2022年度東大入試

今年の東京大学の英語(第5問)の最後の内容一致問題に以下のような注意書きが記されていました。

「なお、以下の選択肢においてtheyおよびtheirは三人称単数を示す代名詞である」

theyやtheirが単数!?とギョッとした受験生も多かったのではないでしょうか。時間のある人は、実際の問題文を確認してみて欲しいのですが、選択肢の中のthey/theirはthe author(著者)を指しています。なぜ東大は「著者」を示す代名詞として、heやsheではなく、theyを選択したのでしょうか。

■“Call me they”

昨年、コロナ禍で開催された東京五輪。連日、日本人選手の活躍がメディアを賑わせましたね。特に、今大会から正式に採用された女子スケートボードで13歳の西矢椛さんが金メダルを取ったことは大きな話題を集めました。しかし、彼女の輝かしいニュースの影で、同じ女子スケートボードに出場していた米国代表の選手がメディアに向けてあるメッセージを発信していたことはあまり知られていません。アラナ・スミスさんという笑顔の印象的なその選手は、自らのスケートボードに手書きで次のようなメッセージを書いていました。

They/Them

この単なる代名詞がメディアに向けて強いメッセージを持った背景には、スミスさんのジェンダー(生物学的な性別と区別した,社会的・文化的な性別)の問題があります。皆さんノンバイナリー(nonbinary)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。nonは否定で、binaryのbi-はbicycle「自転車(二輪車)」やbilingual「二か国語の」と同様に、数字の“2”を表しています。つまり、自らの性別を男性か女性かという二択で定義しないことをノンバイナリーといいます。私たちは、人間は男性か女性かのどちらかだと単純に考えてしまいますが、世の中には自分をそのどちらにも属さないと考える人もいるのです。そして、実はスミスさんもその一人だったのです。スミスさんがスケートボードに書いたThey/Themという代名詞には「自分をShe/Herのような性別を特定する言葉ではなく、性別の区別のないThey/Themで呼んでほしい」というメッセージが込められていたのです。

■多様性の時代を生きる

ノンバイナリーの人を指す代名詞としてtheyを使う動きは近年急速に広がっています。数年前には、米国の歴史ある英語辞典が選ぶ流行語にtheyが選出され、新たに“used to refer to a person who identifies as nonbinary(自らをノンバイナリーと考える人間を指すために用いられる)”というニュアンスの一文が追加されました。トランスジェンダー(身体の性別と自分の思う性別が一致しないこと)など性的マイノリティの存在が世の中に認識され、少しずつ理解が広まっていく中で、theyという単語が、性別の多様性を象徴する単語として現在見直されているのです。

さて、東大の問題です。なぜthe author(筆者)を指す代名詞としてthey/theirを用いたのかというのが、今回のテーマでした。ここで筆者が説明するのは簡単ですが、高校生はできれば実際に英文を読んで自らの目で確かめてください。この記事の内容を踏まえて文章を読めば、「theyおよびtheirは三人称単数を示す代名詞である」という注釈の意図がよく分かるはずです。以下は、まだ自力で読み進めるには難しい中学生の読者のためのネタバレになります。

この文章の「私=筆者」は、いわゆるトランスジェンダーだったのです。筆者は女性として生まれたものの、幼いころから自分の性に違和感を覚えていました。友人は全員男の子で、彼らと漫画のヒーローのごっこ遊びをすることが大好きでした。また、ミュージカルで偶然男の子の役を演じ、そのビデオテープに映る自分を見て深い安らぎを感じます。「自分は女性なのか男性なのか」と悩んできた筆者に配慮し、問題作成者はshe/herではなく、中性的なthey/theirを使用したのです。

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