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2023年度 京都大学・国語

【文系】

〇第一問(現代文)

問一
「ドラマ」について、「タブロー」と対比させつつ説明することが必要な問題。傍線部を含む一文全体の構造を押さえることが肝要になる。

問二
まず、「この呼吸」の内容を、傍線部を含む第2段落内の具体例に即して説明する必要がある。解答欄との兼ね合いを考え、「ピーターパン」等の具体的記述を排し一般化させた記述にする。以上と、第2段落内で触れられている「映画」の特質とを絡め解答を作成する。「この呼吸」と「映画」の対比が、問1で検討した「ドラマ」と「タブロー」の対比と共通のものであることに気付けると良い。

問三
「そのくらい」を具体化したうえで、直後の「だれもかれも造る側にまわりたくなるのであります」という部分が傍線部と同じような内容になっていることに着目。その条件節である「鑑賞ということに主体性が~作品が氾濫すれば―」、及び傍線部を含む段落最後の一文を根拠に定め答案の残りの部分をまとめる。コンパクトにまとめる必要もあり。

問四
「そういう」の指示内容にあたる直前部を中心にまとめる。傍線部直後の一文に示される「狂気のように求めている」という内容も反映させる必要がある。

問五
本文全体の論旨を踏まえて説明することを求める問題。問4での検討内容も参考にしつつ傍線部周辺の内容をまとめたうえで、本文全体を通して示される、「鑑賞者に精神的自由があるか否か」に関わる対比構造を答案に反映させる。傍線部の近辺に着目した後で全体の論旨を確認するという鉄則通りの解き方で対処可能と思われる。


★なお、Y-SAPIX2022年度1月期、(※)高校リベラルで使用した『アートは資本主義の行方を予言する』を読んでいると、文章のテーマの大まかなイメージは掴めたかもしれない(書籍p165~に今回の文章と通じる部分がありそうな記述がある)。

■「高校リベラル」とは
Y-SAPIXの中高生対象のオリジナル講座「リベラル読解論述研究」の高校生対象の授業のこと。指定書籍を読み、そこに書かれている内容を整理した後、意見交換をし、最後に小論文課題に取り組むという内容で、小論文対策にも有効である。

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第二問(現代文)

問一
「それは、」とあるため傍線部直後の一文が根拠になることが分かるが、同文に示される「インスピレーション型の発見」との対比構造を答案にも反映させる。「下から地道に積み上げていくうちに視界が開けるようなわかり方」を次段落の記述をもとに詳細説明すると良い。

問二
傍線部中の「これ」の指示内容にあたるセリフ内の部分について、直後の段落で説明されていることを押さえる。理由説明であるため、最後のまとめ方が少し難しかったかもしれない。

問三
傍線部を含む段落の内容を中心にまとめる。傍線部を含む一文全体に着目し「数学的思考」を主語に据えること、「記号的な計算」との対比を踏まえ解答を作成することも怠ってはならない。

問四
傍線部が芭蕉の句の一例として示されていることをおさえ、「芭蕉の意識が~」以降二段落の内容を、整理し再構成しつつまとめる。俳句に傍線がひかれているため、先に設問をチェックしていなかった受験生は少し戸惑ったかもしれない。

問五
傍線部が引用された岡の研究ノート末尾を踏まえた記述になっていること、研究ノートが「この発見」に基づくものであることをおさえ、「この発見」の指示内容にあたる「数学もまた~」の段落の内容に着目。異教を主要な根拠としつつ、問4の検討内容や傍線部4の少し前にある「境地を進める」の具体説明も参考にまとめる。本文全体を通して反復される言葉、内容への着目が肝要な問題だといえる。

★第一問、第二問ともに、傍線部内の指示語や抽象表現の具体化、傍線部を含む一文全体の構造の説明など、京大現代文において頻出と思しきタイプの設問が多く見られた。他の設問がヒントになり得る点も例年通りの印象。指示語、接続詞、同語(同義)反復への着目など、現代文の基本的な読み方を確実に習得することで十分対応可能であるが、読解した内容を自分の言葉で詳述し、ある程度字数の多い答案に落とし込むための記述力、語彙力を強化することも求められる。解答欄が大きめなぶん、傍線部を含む一文外に示される対比構造の明示が求められる等入れるべき要素も多くなりがちであるため、各要素を端的に言い換える表現力も必要になる。

第三問(古文)

問一
(1)は「心あらん」「人ゆかしう」を文脈に応じ適切な表現で訳せるかがカギ。「適宜ことばを補いつつ」との指示を踏まえ、「思ひし」の主語を補うと良いか。(3)は直後のセリフを参考に、主語や「いそぎありく」の目的語、及び「足たち侍らねば」という状況説明を補いつつ訳していくと良い。セリフ内に「侍り」が再三用いられているため、訳も敬体で作るのが適切である。

問二
設問の要求にこたえるため、まず兼好の挿話の内容を端的に示す。その後、兼好は手紙に「雪」に関する内容を添えなかったが、作者への手紙では「雪」に触れられていることを踏まえ「かく気をつけて」の内容を具体化、また「あなた」「こなた」の指示内容も明らかにする。以上をもとに、傍線部を訳出することを基本に説明を作っていくのが良い。

問三
傍線部に至るまでのセリフの内容をまとめる。「されど」等の接続表現に留意しつつ解答作成する。

問四
5年ぶりとなる漢文からの出題。「安道」「子猷」の人物像の把握が難しいかもしれないが、設問文に付された説明と本文の内容について「雪をめでる」ということが一致していることを確認し、双方を照らし合わせつつ考えてみると良いか。「安道に愧づ」の訳出がやや分かりにくい。

〇まとめ

基本的な古文単語、文法の知識が身についていれば、文章の内容を理解するのは然程難しくなかったはずである。知識に基づく訳出力を磨くのはもちろん、設問文中に示される条件を踏まえた答案の作り方(「適宜言葉を補いつつ」とある際の、解答欄との兼ね合いも踏まえた補足内容の選別法等)も身につけていく必要がありそうである(この点は東大も同様)。


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【理系】

第一問(現代文)

文系と同じ出典。設問内容は異なる。

第二問(現代文)

問一
傍線部直前が参考になるが、それが「忘却」によりどうなるかをある程度自分で考えまとめる必要がある。以上の発想と理由説明へと落とし込む点が少々難しかったかもしれない。

問二
「僕らはしばしば~」の一文が傍線部と同内容になっていることに着目しつつ、傍線部前後を参考にまとめる。「問題」の具体化、「不安には眼をつぶり得ない」「不安を見ようとしない」の言い換えがポイントか。「結核療養所の中に生活する病人」を想定した記述がなされている部分に傍線部が引かれていることを踏まえ、「死が身近にある」という内容を入れることも怠るべきではない。

問三
傍線部が直前の「自己の孤独の内部に在り~」と対義になっていることをおさえる。その後傍線部直後の一文が「他者をも自己のうちに持つこと」の説明になっていることを把握し、最終段落の内容を参考にそれを詳述していく。「小山わか子の歌集」にいかに触れるかが悩みどころかもしれない。

※分量は少ないが内容の抽象度は高く、文系第二問の文章より分かりにくいと感じる者もいるかもしれない。随筆は京大国語においては文系理系問わず頻出であるため、本文中の表現も参考にしつつ、抽象的な記述を(言葉をつくして)具体的、一義的に言い換えていく訓練を積むことが有効と思われる。

第三問(古文)

問一
傍線部直後の「そは、~」の一文を根拠に「急なる」の内容を具体化していく。後続の「先君の誤り世に流るる様なり」等を解答に盛り込むべきか悩ましいところだが、字数的に厳しいか。

問二
「その世」の指示内容を、傍線部を含む一文全体に着目したうえで丁寧に検討する必要がある。「またなく」「時めき」「いたづら人」等に注意しつつ傍線部前半を訳出することが出来れば、比喩の内容把握は比較的容易に行えるはずである。

問三
傍線部を含む一文全体の内容を説明していく。「このかしこき新君たち」の指示内容、「世の常になり行き~」の訳し方に注意が必要である。

〇まとめ

文章量は昨年に比べ大幅に増加したが表現自体は平易であり、基本的な単語、文法の知識を身につけ、それをもとに文章を訳出していく訓練を積んでいれば十分対応可能であった。

しかし、「さて」の前後など論理的つながりが少々分かりにくい部分も。指示語や同語反復への着目など、評論文読解における着眼を古文にも応用できるとより得点に結びつけられたのではないだろうか。

また、2023年度は和歌の出題はなかったが、和歌については共通テストでも出題される可能性もあるので、今年出題されなかったからといって油断すべきではなく、和歌の基本的な修辞法を理解し、出題されても対応できるようにしておく必要がある。


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