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数学こぼれ話#32 ~地球の半径を測ってみよう~

皆さん、こんにちは。

先日、ある先生と話しているとき、「エラトステネスという人が棒1本で地球の半径を計算した」という話を聞きました。彼は紀元前200~300年頃に生きていたギリシャ人で、素数を判定するために「エラトステネスの篩(ふるい)」という方法を生み出したことでも知られています。「1mの棒を地面に垂直に立てて地球の半径$${R}$$を計算してみてください」と言われたら、皆さんはどうしますか? 少し想像してみてください。


〇方法を考えて、数式で表現しよう

エラトステネスは、地面に立てた棒が作る影と角度に注目することで、地球の半径$${R}$$を計算しました。現在知られている$${R}$$の値に比べると約15%の誤差がありますが、2000年以上も前に手計算で求めたことを考えると、驚くべき成果だと思いませんか?
 
さて、冒頭のお話では「影と角度を利用した」という内容が含まれていなかったので、漠然と「立てた棒がちょうど見えなくなるまで真っ直ぐ歩いて計算したのかな?」と想像しました。高いビルが見えなくなるまで歩こうと思えば相当頑張らなければなりませんが、1mの棒くらいなら、それほど沢山歩かなくても見えなくなるように思えました。(実際に試したわけではありません!) そして、立てた棒から自分の足元までの距離は(頑張れば)測れるはずなので、期待が持てそうです。結果的にはエラトステネスの方法とは異なりますが、似たようなことを想像した方もいるのではないでしょうか。

今のアイデアを図で書くと、下のようになります。計算を簡単にするために、(ずいぶん背が高いですが)地面から目までの高さが2mの人に登場してもらいましょう。

このように書き直すと、もはや平面図形の問題です。つまり、既に分かっている移動距離$${L}$$をもとに、地球の半径$${R}$$を算出するための何らかの式を用意できればよいのです。三角形が登場するので三角比や三角関数が使えるとよいと思い、(弧度法radによる)2つの角θ,φを補助的に用意しました。なんだか、簡単そうに思えませんか?

〇適した道具を使おう

何はともあれ、登場している文字たちを結び付ける等式を用意しましょう。まず、△OAHと△OBHに注目すれば

が得られます。(sinやtanは形が複雑なので、必要なら適宜求めることにしましょう。)次に、$${L}$$を含む等式を用意するために、移動距離を「弧の長さ」と考えれば

が得られます。4つの文字が登場していますが、先の見出しでも見た通り、θとφは優先度が低い文字です。そのため、早々に消去できると理想的です。

ところが、(*)をθとφについて解くことは難しいと言わざるを得ません。少し気を利かせて、cosという「頑丈なベール」を剝がせるとよいのですが・・・。物理を学習している人なら、「ある近似」が思い浮かぶかもしれません。

$${R}$$は「地球の半径」ですので、言うまでもなく大きな数字のはずです。であれば、(*)に登場する2式の右辺は「ほぼ1」で、するとcosの値が「ほぼ1」なので、θやφは「ほぼ0」です。このようなとき、実は次のような近似式が成り立ちます。我々の願い通り、cosという「頑丈なベール」を剥がせる特効薬です。

したがって、(*)は近似的に

と書けるので、これらを(#)へ用いれば、$${R}$$が近似的に満たす方程式

が得られます。

〇この先のストーリー

さて、あとは☆を$${R}$$について解けばよいのですが、この方程式を厳密に解くのは大変そうです。精度が少し気になるところですが、「$${R}$$は十分大きい」ということを意識して、もう少し変形してみましょう。

これを☆に用いて少し頑張れば、移動距離$${L}$$から地球の半径$${R}$$を求める近似式

が得られます!
 
 それでは、次の数学こぼれ話でお会いしましょう!


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