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数学こぼれ話#28 ~「同値変形」で見通しよく解く~

皆さん、こんにちは。今回は「放物線と円」にスポットを当てつつ、「同値変形」の強さを一緒に見ていきましょう。参考書などで「図形と方程式」を勉強していると、「放物線と円の共有点の個数」を調べる問題に出会ったことがある人も多いのではないでしょうか。この手の話題は初学者の段階ではなかなか難しく、毎年のように生徒から質問を受けるたびに、上手く議論を追えずに苦労した当時を思い出します。ところが、Y-SAPIXの高2クラスでこの時期に扱い始める「同値変形」を使うと、かなり見通しよく扱うことができます。さっそく、【問題】をどうぞ。

【問題】
$${a}$$は定数とする。放物線$${y=x^2}$$と円$${x^2+(y-a)^2=1}$$が異なる4つの共有点をもつような$${a}$$の値の範囲を求めよ。

〇言い換えよう

「図形を$${xy}$$平面内に置くことで図形に『名前』($${x,y}$$の関係式)が付き、『代数計算をする』($${x,y}$$の連立方程式を解く)と、図形について色々なことが分かる」というのが、「図形と方程式」の核心でした。よって、上の問題は、次のような〖問題〗に書き直せます。

〖問題〗
連立方程式

$$
\begin{dcases}{y}=x^2 \\x^2+{(y-a)^2}=1\end{dcases}        
$$

が異なる4組の実数解$${(x,y)}$$をもつような、$${a}$$の値の範囲を求めよ。

いかがでしょうか。皆さんなら、何から始めてどのように話を運びますか?

〇消去だけで大丈夫?

「連立方程式といえば1文字消去」ということで、第1式より$${x^2=y}$$を第2式に使って整理すると、$${y^2-(2a-1)y+(a^2-1)=0}$$ …(*)が得られます。(※$${y}$$を消去してもよいですが、$${x}$$の4次方程式が出て大変なので、今回は$${x}$$を消去することにします)

問題は、この先です。(*)を使ってどのような議論をすれば、正しい$${a}$$の範囲が得られるのでしょうか? 「放物線と円がともに$${y}$$軸対称なので、異なる2つの実数解$${y}$$が得られるように、(判別式)>0」とすれば一応は$${ a<5/4}$$が得られますが、$${a}$$があまりにも小さくなると円が放物線のはるか下に来てしまうので、4点で交わるどころではありません。明らかに不備です。さて、ここでは以下の流れを確認しておきましょう。

注意してほしいのは、「$${⇔}$$」ではなく「$${⇒}$$」になっていることです。「①かつ②」から③が導けることは明らかです。ところが、$${x}$$が含まれていない③から「①かつ②」を導くことは、さすがに無理です。例えるならば、「東京に住んでいる$${⇒}$$日本に住んでいる」といった状況になっており、考える範囲が不適切に広くなってしまっています。東京の人を調べるのに日本中の人を調べるのは、対象が広すぎてあまり上手くありません。できることなら、「東京」のまま考えたいものです。

〇「逆」が言えるには

「問題を解くこと」は、「言い換えの連鎖」といえます。先ほどの□囲み内にある「$${⇒}$$」は、「何か」を③と同居させておけば「$${⇔}$$」にできるのですが、どうでしょうか?

結論を言うと、②へ代入するために用いた①をそのまま残して③と同居させておけば、復元可能です。論より証拠で、次の□囲みをご覧ください。(※④は①と同じものですが、説明が分かりやすくなるよう、念のため番号を変えました。)

「①かつ②」から「④かつ③」を導けることは、問題ありません。ここでのポイントは、「④かつ③」から「①かつ②」も導くことができる点にあります。まず、④は①そのものなので、問題ありません。そして③は、①を代入した直後の②である「$${y+(y-a)^2=1}$$」を式変形したものに過ぎないので、「かつ」で結ばれている④を使えば、②を復元することもできます。まとめると、「④かつ③」から「①かつ②」を導くこともできました。途中過程を省略せずに書くと、次のようになります。

消去するために使った式はそのまま残そう

これが、同値変形を進める上での合言葉です。

〇より簡単な形で議論を

さて、上手く同値変形したおかげで、〖問題〗を次のように書き換えることができました。

〖問題・改〗
連立方程式

$$
\begin{dcases}{y}=x^2 \\y^2-(2a-1)y+(a^2-1)=0\end{dcases}        
$$

が異なる4組の実数解$${(x,y)}$$をもつような、$${a}$$の値の範囲を求めよ。

ここまで来れば、(*)が「異なる2つの実数解$${y}$$」をもつだけでは不十分で、「異なる2つの正の実数解$${y}$$」をもつことが条件、と分かります。なぜなら、(*)から得られた値$${y}$$をもとに第1式から$${x=±\sqrt{y}}$$が計算されるので、異なる4組の実数解$${(x,y)}$$が得られるのは、(*)から異なる2つの正の$${y}$$が得られる場合に限るのです。(※この先は、よくある2次方程式の解配置問題です。放物線の軸・頂点・端点に注目して、$${a}$$の範囲を求めましょう。)

ここまで読んでいただければ、同値変形を活用することの良さが伝わったかと思います。同値変形の技術には様々なものがありますが、その土台にあるのは「消去に使った式を残す」の原則です。まずは身近な連立方程式を素材にして、基本変形が手に馴染むまで練習しておくことをおすすめします。

それでは、次の「こぼれ話」でお会いしましょう!


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