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【講師育成の現場から】授業の品質を保つための研修としてベテラン講師による模擬授業を定期的に実施

Y-SAPIXではサピックス小学部と同様に、講師と生徒とのやりとりを重視して、思考力を伸ばす授業を展開しています。そうした授業の品質を保つには、講師全員の授業技術を高めることが必要です。Y-SAPIXではそのためにどんな取り組みを行っているのでしょうか。一例として研修の様子をご紹介します。

狙いは講師の技術力向上と授業の品質維持 
自身の担当科目以外からも学び取る

 Y-SAPIXでは、講師の授業技術を高めるための研修を定期的に実施しています。2023年11月24日には2023年度最後の年次研修が行われ、若手を中心とした20人弱の講師がベテラン講師による模擬授業を受けました。

崎元崇先生による数学の模擬授業

 この日に行われたのは英語・数学・リベラル読解論述研究の模擬授業です。このうち、リベラル読解論述研究とは、1か月に1冊程度のペースで指定図書を読み、内容を理解すると同時に、質問に答えたり、自身の考えや意見を伝えたりする力を鍛えるというもの。難関校の入試で求められる、論理的思考力を伸ばすY-SAPIX独自の科目です。 模擬授業は15分ずつ行われますが、講師たちは自身の担当科目であるか否かを問わず、すべての科目に生徒役として参加し、自己研さんに励みました。 この日の単元は、英語が比較表現、数学が一次関数。リベラル読解論述研究の指定図書は『文系と理系はなぜ分かれたのか』(隠岐さや香/星海社新書)でした。模擬授業の進め方は講師それぞれで、たとえば数学では「周の長さxの長方形の面積が$${y}$$のとき、$${y}$$は$${x}$$の関数かどうか?」といったクイズを出し、研修を受ける他科目の講師に解答を求める場面もありました。

生徒との対話や板書の仕方など
印象に残った点や気づいたことを発表

 3科目の模擬授業が終わると、講師たちはグループワークに入ります。4.5人ずつ3グループに分かれて、模擬授業のどこを手本にできるか、そこから何をくみ取ったか、といった点についてディスカッションしていきます。その後、各グループの代表者が印象に残った点や参考になった点などについて発表しました。発表タイムで目立ったのは以下のような感想です。

●英語

・「『まずは比べていない文を書こう』というわかりやすいキャッチフレーズが最初に提示され、問題をどう解けばいいかという指針が明確になったのが印象的だった。板書に関しては、最初に比べない文を書き、そこに比べる文を書き込んでいくことで、解答を書く際の思考の過程がわかりやすく示された。講師の思考の過程を板書することを通じて、生徒の得点力アップにつなげようとしていたと思う」
・「話のテンポは速かったが、同じような解説を繰り返すことにより、生徒の記憶に残りやすいと思った。そうした点は自分の授業にも取り入れたい」

●数学

・「関数とは何かということを、最初にかなりの分量の文字で板書し、その後、クイズ形式で『このケースは関数か?』と発問。わたしたちとのやりとりを経て、最終的に、最初に文字で示した『$${y}$$が$${x}$$の関数であるとは、$${x}$$の値を一つ決めると$${y}$$の値がただ一つに決まることを意味する』という内容がわかるようになっていた点が印象的だった」
・「まず一次関数の重要性に言及し、一次関数をしっかり学べば数学の力は伸びていくという話があったが、そうした話は生徒たちの心に響くと思った。数学は学年が進むほど抽象的になるので、一次関数も最初はイメージしづらいが、具体的にクイズを出すことで、苦手な生徒も取り組みやすいようにしていた点が良かった。板書の文字が大きく、関数とは何かという箇所を色で強調していたので、復習するときにわかりやすくなると思った」

●リベラル読解論述研究

・「ポイントを押さえた板書が特に印象的だった。“First” “Second”と書いて、着目する点を明確にしたうえで生徒に必要な部分を考えさせるという構成が良く、説得力があった」
・「発問は最後のほうのみにして、緊張感のある授業にしていた。題材に用いたのは硬い文章だが、講師が挙げた例文は『わたしが食べたいのはシチューではなくカレーです』のように日常的な内容にすることで、生徒の興味を引きつけていた。英語の“not A but B.”のように、他科目にも通じる話をして、授業の意味をより重くしているのが印象的だった」
・「『内容説明問題とそれを踏まえた意見論述』というように、問題の種類を先に提示した後で、それぞれどう解けばいいのかを明確にしたため、より実戦的な授業になっていた。板書に関しては、生徒がテキストの下にある空欄に書き込むことを想定し、そのスペースに収まるようにまとめていた点が参考になった」

 また、3科目に共通する感想としては、次のようなものがありました。

・「大学受験を意識した発言が随所にあったのが良かった。たとえば、リベラル読解論述研究では『自分の考えを自由に書くのではなく、文章を踏まえて書かなければならない』というように、入試で考慮すべき点について注意喚起しており、受験対策として役立つ内容になっていた。生徒の注意を引くような対話を意識し、集中力を持続させ、大学受験を見据えた指導ができれば、より良い授業になると、あらためて思った」

模擬授業の終了後に行われたディスカッション

生徒が伸びるか伸びないかは講師の責任
そう意識して授業をすることが大切

3グループの発表が終わると、最後に司会進行役のベテラン講師らが再登壇し、この日の研修を締めくくりました。発言に共通していたのは次のような点でした。

・「ベテランの講師の授業から常に何かを学び取ってほしい」
・「少しでも多くの武器を手に入れ、実りある授業をしてほしい」
・「生徒は入試で合格しなければならない。それを実現させるための責任は自分が選び取ったものだと、常に意識している」
・「生徒が授業を受けて伸びるか伸びないかの責任は、われわれにあると肝に銘じるべきだ。生徒の成績が伸びない状況を放置してはならない」

 これらのことばを聞き、講師たちはかぶとの緒をきつく締めた様子でした。
 そして研修後、講師たちはレポートを提出して研修を振り返ります。Y-SAPIXの授業の品質はこうした研修を通じて保たれているのです。

この記事は2024年2月20日刊行の『さぴあ』3月号に掲載された記事のWeb版です。

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