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2021年度 国公立医学部医学科入試動向分析

前期は志願者減少傾向がストップ、後期は志願者減も倍率アップ

アセット 1

志願者数:前期+31人(+0.2%) 、後期-294人(-4.0%)
志願倍率:前期4.1倍(±0.0)、 後期17.4倍(+1.1)

医学部医学科における入学定員には期限付きのものが含まれており、国公立大学で739人分に2019年度までの期限が付されていました。しかし、政府の方針に基づき、多くの大学は2020年度以降も定員規模を維持しています。

2021年度入試は、大学からの臨時定員増の申請などにより、昨年度から合計13人増員された5,710人という定員のもとで実施されました。

アセット 2

国公立大学医学部医学科の募集人員を入試方式別に見ると、総合型・学校推薦型選抜が1,458人と全体の約4分の1以上を占めており、後期日程の408人を大きく上回ります。国公立を志望する受験生にとっては、数少ない受験機会を逃さないためにも、一般選抜の準備だけでなく総合型・学校推薦型選抜への挑戦も視野に入れるべき状況です。

また、2010年度以降、地域の医師確保等の観点から医学部の入学定員に関するいくつかの取り組みが実施されてきました。その一つが「地域枠」です。地方・地域の医師不足解消を目的としたこの政策は、2021年度入試も継続され、「地域枠」としての募集人員は昨年度よりも40人増加し、全体の2割を超える割合を占めています。この背景には、2020年度からは各大学が一般枠とは別枠で募集しなければならない旨が厚生労働省から通知されたことも関係しているでしょう。

アセット 3

前期の志願者数は、2012年度に20,483人と2万人の大台を超えましたが、2015年度からは下降傾向にあります。最後のセンター試験が実施された2020年度は、次年度の入試改革を前にして受験生に「安全志向」が働いたことや、センター試験の難化などにより、前期・後期ともに志願者数は減少していました。2021年度はセンター試験に代わって初めての共通テストが実施され、国公立前期全体で出願者数が7,649人減少(-3.1%)した一方、医学部医学科においては31人増加(+0.2%)し、14,773人となって下降傾向に歯止めがかかった形になりました。

アセット 4

後期の志願者数は294人減少(-4.0%)し、2年連続の減少となったものの、募集人員が減ったことにより志願倍率は上昇しました。

受験校選択上の注意点

共通テストの必要科目は5教科7科目(東京医科歯科大学・後期のみ地歴公民を除く4教科6科目)です。共通テストの地歴公民の選択科目数は1科目ですが、大多数の受験生は、負担の重い世界史や日本史を避け、地理もしくは公民を選択しようとするでしょう。ただし、公民の場合、「現代社会」「倫理」「政治・経済」では受験できる大学が半数以下に限定されてしまいますので注意が必要です。

第1段階選抜

2021年度の国公立大学医学部医学科(前期)における第1段階選抜不合格者数は953人で、昨年度の846人を上回りました。これは他学部も含めた第1段階選抜不合格者(前期のみ)全体の約45%を占め、医学部医学科出願者の約15人に1人は前期日程の2次試験を受けられなかったことになります。

第1段階選抜実施(前期)を予告した48大学のうち、不合格者が0人だったのは、

[国立]
北海道、弘前、秋田、山形、群馬、東京医科歯科、新潟、富山、福井、岐阜、滋賀医科、京都、神戸、島根、岡山、広島、山口、香川、九州、佐賀、熊本、大分、宮崎、鹿児島、琉球
[公立]
札幌医科、京都府立医科、奈良県立医科、和歌山県立医科

の計29校と、昨年度と同数でした。一方、不合格者数上位5校は、愛媛(201人)、信州(96人)、千葉(85人)、福島県立医科(80人)、旭川医科(78人)でした(共通テスト科目不足等の失格者を含む。代ゼミ調査より)。

第1段階選抜は共通テストの得点によって行われますが、ほとんどの大学では「志願倍率が○○倍(募集枠によって異なる)を超えた場合に第1段階選抜を行う」という実施予告であるため、出願状況によって実施の有無や合格最低点が変化します。従って、実施を予告している場合でも例年不合格者を出していない大学がある一方、前年度実施しなかった大学が実施することや、その逆もあるため、志望大学の選抜状況はしっかりとチェックしておきましょう。

2021年度大学別入試概況

アセット 5

注)( )内の数字=「指数」
2020年度の志願者数を100とした場合の2021年度志願者数増減を示す

◆前期

〈北海道、旭川医科、札幌医科、弘前、東北、秋田、山形、福島県立医科〉
今年度から2次配点を縮小、外国語と数学を廃止し、新たに総合問題を課すとした弘前(75)が2年連続の大幅減となっています。秋田(67)は昨年度大幅増の反動減です。福島県立医科(159)は昨年度大幅減の反動増で、志願倍率は3.4倍から5.4倍に上昇しました。

〈筑波、群馬、千葉、東京、東京医科歯科、横浜市立〉
筑波(117)は昨年度に引き続き募集人員を減らしましたが、昨年度減の反動増です。群馬(93)、横浜市立(108)は共に昨年度大幅減だったものの、今年度はいずれも小幅な増減となっています。

〈新潟、富山、金沢、福井、信州、岐阜、浜松医科、名古屋、名古屋市立〉
新潟(89)、富山(88)が2年連続で志願者を減らしています。福井(74)、岐阜(87)など昨年度増の反動で減少している大学が散見されますが、名古屋市立(107)は募集人員を減らしたものの志願者数は増加し、志願倍率が2.8倍から3.5倍に上昇しました。

〈三重、滋賀医科、京都、京都府立医科、大阪、大阪市立、神戸、奈良県立医科、和歌山県立医科〉
三重(135)は2年連続で増加しており、志願倍率が5.3倍まで上昇しています。大阪(84)は昨年度増の反動減で、この地区では最も低い志願倍率となりました。新たに小論文を課すとした京都府立医科(111)はやや増加、和歌山県立医科(142)は昨年度大幅減の反動増ですが、志願倍率は3.1倍にとどまっています。

〈鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知〉
高知(74)の減少が目立ちます。一方で、徳島(140)は昨年度大幅減の反動増、香川(133)、愛媛(174)は3年連続で大幅に増加しており、特に愛媛の志願倍率は9.7倍まで上昇しています。島根(86)は志願者を減らしましたが、志願倍率は6.7倍といまだ高い状況です。

〈九州、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、琉球〉
長崎(149)が昨年度減の反動で大幅に増加している一方、大分(62)と熊本(68)、続いて鹿児島(75)も大幅に減少しています。昨年度はほとんどの大学で志願者を減らしましたが、今年度は増加、減少がそれぞれ4大学と明暗が分かれた形になりました。

後期

今年度は、それぞれ募集人員25人を擁していた香川、愛媛が後期の募集を廃止しました。それによって志願者が地理的に近い九州地区の大学に流れたとみられ、佐賀、宮崎、鹿児島、琉球の4大学がいずれも10%以上の志願者増となっています。後期の2次試験で学科試験を課す大学は、旭川医科(英、面)、千葉(英、数、理2、面)、山梨(数、理2、面)、岐阜(英、数、理2、面)、奈良県立医科(英、数、理2、面)、宮崎(英、化、面)の6校です。それ以外の12校の2次試験は小論文、面接、調査書(一部は面接のみ)で、その大多数は共通テスト重視です。小論文対策などの事前準備も必要ですが、まずは共通テストで高得点を取らないと出願できる大学が限定されてしまうことになります。

後期を廃止する大学が年々増加していることもあり、全体では例年志願倍率(志願者数/募集人員)は15倍以上になります。しかし、実際に受験する人数は大幅に減少し、実質倍率(受験者数/合格者数)は4~5倍程度まで低下します。これは2段階選抜があることと、前期の合格者や私立大学合格者が受験を辞退するためで、後期志願者のうち実際に受験する人数はその約3割程度になります。国公立志望者にとっては後期も数少ないチャンスの一つです。募集人員が少ないとはいえ約400人の募集枠をしっかりチェックして、積極的にチャレンジするようにしましょう。

アセット 6

更に詳しく知りたい方は医学部研究室より「2021年度 国公立大学入試結果」をご覧ください。

受験用語 Pick Up

隔年現象
1年おきに志願倍率が上がったり下がったりする現象
反動増・反動減
前年志願倍率が急減・急増した翌年は、逆に急増・急減する現象

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