医学部医学科 2020年度入試分析―入試パターンによる医学部入試分析と2020年度医学部入試概況
国公立大学入試分析
●募集枠
―2021年度入試で後期実施はわずか18校に
総合型・学校推薦型選抜の募集人員は4分の1超える
国公立大の医学部は全国に50校ありますが、後期日程を実施する大学は年々減少しています。2020年度実績でみると、後期の募集人員は医学部の募集人員全体の10%を切る状況で、2021年度入試においても香川大・愛媛大の2校が廃止し、18校のみの実施となります。それに代わって増加しているのが特別枠である総合型(旧AO)および学校推薦型(旧推薦)の2つの選抜方式です。これらの方式は年々増加しており、2020年度の募集人員全体における比率は4分の1を超えています。
●受験パターン
―総合型or学校推薦型+前期 (+後期)が軸に
国公立大の医学部の受験パターンは、かつては「前期+後期」が主流でしたが、近年は「総合型or学校推薦型+前期(+後期)」も増えてきています。総合型選抜・学校推薦型選抜はほとんどの場合高い評定点が課されますので、高校での学業成績にも力を注ぐことが求められます。早めに大学の募集要項などを調べて対策をすることが肝要です。
▲前期日程
●2次試験の配点比率
―2次試験重視が約6割の30校
前期日程では約6割にあたる30校が2次試験重視、約3割にあたる13校が共通テスト重視となっています。2次重視の大学は共通テストの影響が比較的小さく、2次の成績が合否を分ける入試といえるでしょう。旧帝大をはじめとする難関校は概ねこのパターンです。一方、共通テスト重視の大学を志望する場合、共通テストの結果次第で出願先の変更を考えるケースが多くなります。
2次試験は記述形式が中心で難易度も概ね高くなります。2次試験に自信がない場合は、共通テストの比率の高い大学を中心に志望校を考えるのも一手です。共通テストについては、各大学の判断によって決定される英語の「リーディング」と「リスニング」の配点比率などが出願に大きく影響する場合もあるので、こうした情報を注視することも重要になるでしょう。
●2次試験の科目
―英・数・理2・面接が主流、理科を課さないのは6校
前期日程の2次試験は学科試験と面接での選抜が基本で、学科試験は英語・数学・理科2科目の3教科4科目型が主流です。科目数が多い例としては、国語を必須とする東京大や京都大、小論文を必須とする横浜市立大、英語の代わりに英語を含む小論文を課す群馬大などがあります。一方、理科が1科目もしくは課さない大学が7校あります。理科は現役生と浪人生の差がつきやすい教科ですので、この7校には現役生が多く出願する傾向があります。
●2次試験の理科
―理科は物・化・生から2選が主流、奈良県立医科大は1科目
2次試験の理科は2科目必須が基本で、物理・化学・生物から2科目選択方式の大学が大半ですが、東京大は唯一地学も選択可です。北海道大は物理が必須で化学・生物から1科目選択、群馬大・金沢大・名古屋市立大・愛媛大・九州大・佐賀大は生物の選択肢はなく、物理・化学必須となります。
●共通テストの地歴公民
―4単位科目(地歴Bと倫理政経)のみ可が約半数
最も多いのは、地歴のB科目か公民の「倫理、政治経済」という4単位科目に限定のパターンです。ただ、地歴のA科目や公民の現代社会など2単位科目も選択可としている大学もあるため、志望する大学がこの範囲に限定できる場合は、2単位科目で受験するのも選択肢の一つです。
▲後期日程
●共通テストの配点比率
―約8割が共通テスト比率60%以上
後期日程の2次試験は小論文や面接が主体で、共通テスト重視の配点比率が多くみられます。学科試験を課す大学でも旭川医科大と宮崎大は共通テスト重視の比率となっています。後期を受験する場合は、共通テストで高得点をとることが合格の必須条件といえます。
一方、後期で2次試験重視の配点比率なのは千葉大・山梨大・岐阜大・奈良県立医科大の4校で、すべて学科試験のある大学です。山梨大は前期を実施せず後期のみの募集で、奈良県立医科大は前期よりも後期の募集人員が多くなっています。この2校は募集人員が多いという共通点から、例年、志願者が殺到して高倍率になっています。なお、山梨大は2次重視型ですが、2021年度より共通テストのウエイトを〈800:1200〉から〈1100:1200〉に上げます。
●2次試験の科目
学科試験なし(=小論文や面接で選抜)が定番、学科を課すのは6校
前期日程の2次試験が学科試験と面接での選抜が基本であるのに対し、後期は学科試験を課さない大学が大半です。小論文(もしくは総合問題)と面接の大学が半数の9校で、名古屋大などの3校は面接のみで選抜します。学力は共通テストで評価されることになります。
一方、千葉大・山梨大・岐阜大・奈良県立医科大の4校は、後期で学科試験を課し、2次試験の配点比率が高いため、例年2次試験での逆転を狙う受験生が集まり、高倍率となっています。また、旭川医科大は2021年度より理科2科目を廃止し、新たに外国語を課します。
私立大学入試分析
●一般入試(主な募集枠)の科目
―英・数・理2+面接・小論文が定番
例外は帝京大と東海大の3科目
一般入試について、主な募集枠では国公立と同様に英語・数学・理科2科目が必須の4科目型が基本です。例外として、帝京大と東海大が3科目型入試ですが、科目数の少なさが例年の高倍率の要因となっています。
●一般入試(主な募集枠)の配点
―各科目均等配点が多い+理科2科目がほぼ半数に
理科が現役合格のカギ
医学部入試における最重要科目は理科である、といわれるとおり、私立大のほとんどの医学部で理科の配点が高くなっています。理科2科目が必須で、なおかつ各科目を均等配点にしている大学が半数近くの15大学にのぼります。理科が全配点の4割以上の大学も含めると理科重視の大学は31校中25校となります。
医学部合格者は浪人生の比率が高いですが、国公立大と私立大で比較すると、私立大の方がより高くなっています。これは配点の高い理科の完成度の差に起因すると考えられ、理科対策で優位に立つ浪人生が私立大の医学部に高い割合で合格するわけです。
逆にいえば、理科を得意科目にすることで現役突破への道は大きく開けます。高校2年生までに基礎的な内容は終えておくのが賢明でしょう。
●共通テスト利用方式
4教科以上が延べ12校、不実施校は14校
共通テスト利用入試については国語を含む4教科以上を課す大学が多くなっています。また、実施大学延べ18校のうち半数の9校は国公立と同じ5教科必須としており、一般入試と同様の3教科で受けられるのは6校にとどまっています。
2020年度医学部入試概況
国公立大・私立大全体の医学部定員は、臨時定員増計画により2008年度から年々増加し続け、2017年度以降3年間はほぼ横ばいで推移しました。しかし2020年度は、地域枠の定員充足率の未達成問題による地域枠定員の削減等が行われ、最終的に90人もの大幅減少の狭き門となりました。
一方、志願者数は国公立大・私立大ともに減少しました。国公立大前期は-10.1%、後期は新たに3校が廃止になったこともあり-18.5%、私立大の一般入試では-1.5%、センター利用は-6.3%となりました。減少の主な要因は、共通テストの開始を前にした“超安全志向”と、センター試験の難化が考えられます。
昨年、不正入試等の問題の影響で志願者数を大きく減らした私立大も反動による回復とはならず、2年連続での減少になりました。
ただし、「志願者の減少と倍率の低下=医学部入試の易化」と考えるのは早計です。他の学部に比べ競争率は高いままであり、医学部自体の人気は相変わらず根強いものがあります。むしろ、よりハイレベルな受験生たちが競う少数精鋭の入試の様相が強まったと考えるべきでしょう。
国公立大の後期は今後実施校がさらに減少する上、全体の定員についても更なる削減が行われる可能性もあります。医学部入試においてはハイレベルな選抜が今後も続くことは間違いありませんので、周到な準備と徹底した学力向上が求められます。
※本記事はSAPIX YOZEMI GROUPが毎年制作している「医学部AtoZ」(2020年10月1日発行)より当該ページを転載したものです。
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