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2025年から始まる新課程入試 大学入試はどう変わる?

今年4月から施行される高校の新学習指導要領に対応して、2025年以降に実施される大学入学共通テストは、現行の6教科30科目から7教科21科目へと変更されます。いわゆる新課程入試では何がどう変わるのでしょうか。その概要について、代々木ゼミナール教育事業推進本部の佐藤雄太郎本部長に伺いました。

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代々木ゼミナール教育事業推進本部
佐藤 雄太郎本部長

大学入試改革と連携した
新学習指導要領が施行


――高校の新学習指導要領がいよいよ今年4月から施行されます。

佐藤 OECDによる国際的な学習到達度調査「PISA」による過去のデータを見ると、日本は読解力が弱いことが分かっています。また、欧米に比べて若者の自己肯定感や社会参加への意識が低いともいわれています。今回の新学習指導要領のポイントは、知識偏重型の大学入試の見直しと並行して改訂が進められるとともに、前述した課題に対応した内容が盛り込まれていることです。学力の3要素である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」をベースに、各教科の横断化を図ってアクティブ・ラーニングを取り入れるなど、思考力や活用力の育成が重視されています。

――3年後の2025年から始まる大学の新課程入試は、それを踏まえたものと考えればよいのでしょうか。

佐藤 はい。大学入学共通テスト(以下、共通テスト)での主な変更点は「地理歴史・公民」の科目再編と、「情報」の新設です。さらに、数学には数学Cが入りますが、国語や英語は実質的には変わらず、理科も一部単元が入れ替わる程度なので、それらの教科に対する影響はあまりないでしょう。

地歴・公民は再編で負担増
必履修科目は早めの取り組みを

――地歴・公民はどう変わるのでしょうか。

佐藤 かなり複雑になります。「歴史総合、世界史探究」「歴史総合、日本史探究」「地理総合、地理探究」の地歴3科目と、「公共、倫理」「公共、政治・経済」の公民2科目に、新たに必履修科目となる「地理総合、歴史総合、公共」を加えた6科目から最大2科目を選択するのですが、一定のルールがあります。まず、「公共、倫理」と「公共、政治・経済」を組み合わせることはできません。また、「地理総合、歴史総合、公共」はいずれか2分野を選択しますが、それらと同じ名称が入っている科目と組み合わせることもできないのです。例えば、「地理総合、公共」を選択すると、「地理総合、地理探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」は選べないので、選択肢は歴史系だけになります。

――地歴・公民だけで、かなりのボリュームになりそうですね。

佐藤 その通りです。「歴史総合」を選ぶと、日本史と世界史をまたいで近現代史を勉強しなければなりませんし、「地理探究」を選べば「地理総合」も学習する必要があるので、受験生によっては負担が大きくなります。これまでは、地歴・公民の学習は後回しにして、高3の夏に終わらせるのが一般的な学習方法でしたが、このやり方では時間が不足するかもしれません。国公立大学志望のY-SAPIX生は、文系・理系を問わず、必履修科目は学校で習ったときにしっかり基礎を固めてしまうのが望ましいですね。

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入試での「情報」の取り扱いは?
医学部では課す可能性も

――「情報」はどうなるのでしょうか。

佐藤 この4月から共通必履修科目「情報Ⅰ」がスタートします。現行の教育課程では、「社会と情報」「情報の科学」のどちらかを選択することになっていますが、「情報Ⅰ」では二つの科目の要素を全て合わせて、プログラミングやネットワーク、データベースの基礎についても学習するようになるため、それら全部が出題範囲になります。

――共通テストで「情報」が新設されることに対する関心は高いようです。

佐藤 2025年以降、国立大学協会は共通テストの教科に「情報」を加え、国立大学の一般選抜に「6教科8科目」を課すことを原則としました。全ての国公立大学がそうするかどうかはまだ見極められませんが、大学によっては独自に個別試験で「情報」を課す検討もしています。現在、医学部ではデジタルテクノロジー改革を進めていて、情報に強い学生がほしいという大学も多いので、医学部にはそうした動きが広がっていくかもしれません。共通テストで「情報」を課したり、総合型選抜や学校推薦型選抜で、情報系の資格などを持っていると有利になったりする可能性は、十分にあると思います。「情報」をどのように入試に組み込むのか、各大学の今後の動向が注目されます。

――高校の情報科の担当教員が不足している、という話も聞こえてきます。

佐藤 2020年5月の段階で、情報の免許を保有している教員は全国に約9900人いますが、約6000人以上が他の教科を教えています。情報科を担当しているのは約3800人で、うち1200人強は臨時免許や特別免許の教員です。プログラミングなどに対応できないことも考えられる上、教員の数も東京や大阪などに偏っているため、文部科学省では2021年に、情報の教員を活用したり、採用を促進したりするよう、各都道府県に通達を出しています。

不明な部分も多い新課程入試
アンテナを高く張って準備を

――共通テストの「情報」ではどのような問題が出題されそうでしょうか。

佐藤 実は、大学入試センターが公表しているサンプル問題以外に、まだほとんど情報がありません。共通テストでは独自の仮想プログラミング言語「DNCL(どんくり)」を使用しますが、問題集などはまだないと思います。

――では、受験生はどうすればいいのでしょうか。

佐藤 まずは高校で始まる「情報Ⅰ」の勉強をきちんと理解する。これが鉄則です。サンプル問題にある「選挙で当選者数を決めるプログラムを組んでみる」というような、時事問題に絡めた統計情報などの出題も想定されますので、新聞などで今のうちから時事問題に親しむようにするとよいでしょう。eコマースやネットバンキング、SNSの個人情報の大量流失など、生きた問題にひもづけた情報リテラシーも、立派な「情報Ⅰ」の範囲です。

――最後に、Y-SAPIX生へのメッセージをお願いします。

佐藤 学習指導要領が新課程になっても、単元や内容ががらりと変わるわけではなく、2025年からの共通テストが現在のものと全く違った形式になるというわけでもありません。ただ、繰り返しになりますが、地歴・公民には早い段階から取り組み、できるだけ学校で消化するようにしましょう。「情報Ⅰ」も、習ったことはそのときに身につけること。さらに、常日頃から情報に関する話題に対してアンテナを高くしておくことも大事です。
 国公立大学の二次試験については、ふたを開けてみないと分からないこともありますが、論述・記述対策をしっかりとやることに変わりはありません。2021年度入試では、国立大学でも、総合型選抜と学校推薦型選抜が2割近くを占めていました。もしかすると皆さんが受験する頃には、私立大学も含めて入試がさらに多様化し、一般選抜でも学校の活動を評価するようなこともあるかもしれません。Y-SAPIX生の皆さんはそうした変化にも対応できるよう、日々の勉強はもちろん、学校の活動などにもアクティブに取り組んでいくことが大切です。

※この記事は2021年12月21日に取材しました。

この記事は2022年2月21日に刊行された『Y-SAPIX JOURNAL』2022年3・4月号に掲載された記事のWeb版です。

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