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医学部入試 丸わかり!押さえておくべきポイント12~国公立大学編~

※下記の内容は、2025年度入試の変更点(判明分)を反映しています。
※2024年10月1日より東京医科歯科大学は東京工業大学と合併し東京科学大学となっています。

一般選抜の概要

国公立大学の医学部医学科は全国に50校あります。
一般選抜(学校推薦型選抜や総合型選抜などの特別選抜を除く)は、「前期日程」と「後期日程」の枠組みで、募集人員を分割して入試が実施されます。前期は山梨大を除くすべての医学部(49校)が実施していますが、後期は3分の1以下の16校の実施にとどまっています。また、前期に対する後期の募集人員の割合はおおよそ10分の1で、ほとんどの医学部が前期に多くの募集人員を設定しています。

図表① 国公立大学医学部の一般選抜(概要)

入試のシステムとしては、前期・後期から各1校の受験が可能となっていますが、後期の実施大学数と募集人員の数から考えると、国公立大医学部志望者にとっては「前期」での勝負が非常に重要になると言えるでしょう。

入試教科・科目

国公立大学の入試は、1次試験として「大学入学共通テスト」、2次試験として各大学が実施する「個別試験」を受験することになります。
 
医学部を受験するためには、共通テストで6教科8科目の受験が必須となります。これはすべての国公立大医学部の前期・後期で共通しています(東京科学大(旧 東京医科歯科大)の後期のみ5教科7科目で受験可能)。

図表② 国公立大学医学部 入試科目の基本形

一方、共通テストを受験した後に待ち受ける各大学の2次試験(個別試験)は、前期と後期で試験の傾向が異なります。前期は「学科試験3教科(英語・数学・理科)と面接」の組み合わせが基本的であるのに対し、後期は「小論文と面接のみ」を課す大学、または「面接のみ」の大学が大半となっています。 

共通テストと2次試験の配点比率は大学によって大きく異なりますが、前期は2次試験の配点を高く設定している大学が多いのに対し、後期は共通テスト重視の大学が主流です。

また、国公立大学・私立大学、前期・後期問わず医学部入試では「面接」が必須となっており、学科試験の成績が合格ラインを超えていても面接の内容によっては不合格とする場合がある、としている大学が多いため、事前の入念な面接対策が必要です。

【前期】すべての国公立大医学部で2段階選抜の実施を予告

国公立大学には、2次試験の出願者から実際に受験できる者を共通テスト等の成績によって所定の人数内に絞る「2段階選抜」という制度があります。この制度は、記述式問題が主体である学科試験の採点の精度を確保することや、面接試験の質を向上させることを目的として行われています。

「2段階選抜」は全ての国公立大学・学部が実施するものではありませんが、医学部においては全大学で実施を予告しています。最終的な合否は共通テストと2次試験の合計点で決まるとはいえ、第1段階選抜を確実に通過するためにも、共通テスト対策は万全にしておきましょう。

第1段階選抜の条件・基準は大学によってバラバラです。最多のパターンは「募集人員に対する所定の志願倍率」ですが、志願者数は毎年変化しますし、志願倍率が基準を超えた場合でも実施を見送ることがあるなど、年度によって実施状況が異なります。昨年は実施されなかった大学が今年も実施されないとは限りません。国公立大医学部志望者は、「共通テストは目標点を確実に取る。取ることができないと2次試験に進むこと自体が危うい」という心構えで臨むべきでしょう。

図表③ 国公立大学医学部の第1段階選抜(前期)

【前期】共通テスト理科の選択パターン

ここからは入試科目の選択パターンについて、各大学の指定状況をみてみましょう。
まずは共通テストの理科の選択パターンです。

図表④ 共通テスト理科の選択パターン(前期)

国公立大医学部志望者は共通テストの理科で「基礎を付していない科目」を2科目受験する必要があります。大半の大学が「物理・化学・生物から2科目選択」と指定していますが、東京大、金沢大、愛媛大の3校では「地学も選択可能」です。一方、名古屋市立大、佐賀大の2校は「物理・化学」の組み合わせでのみ受験可能となっているため、注意が必要です。 

したがって、共通テストの理科において、「物理と化学」の組合せなら全大学に、「物理もしくは化学と生物」の組合せなら名古屋市立大、佐賀大以外の大学に出願可能ということになります。

【前期】共通テスト地歴公民の選択パターン

共通テストの地歴公民の選択パターンについては、「地理総合、歴史総合、公共」を選択可とするかしないかの2つに大別されます。「地理総合、歴史総合、公共」を選択不可とする大学は30校、選択可とする大学は19校あります。 

図表⑤ 地歴公民(単位数と共通テスト設置科目)
図表⑥ 国公立医学部 共通テスト地歴公民の選択パターン(前期)

比較的負担が少ないと思われる「地理総合、歴史総合、公共」を選択し、受験可能な大学の中から出願校を選ぶのも一つの手ではあります。ただし選択肢がかなり限られてしまうため、地理歴史の「○○総合・△△探究」や、公民の「公共、倫理(もしくは政治・経済)」で準備しておけば、全大学に出願が可能です。

【前期】共通テスト情報配点比率

2025年度から新しく教科として加わる情報は、大学入試センターが示す素点では100点満点で全体の1割を占めます。しかし、5割強の大学は配点を5%以上10%未満としており、全体的に圧縮する大学が大半です。
また、北海道大、徳島大、香川大の3校は受験必須としていますが配点はせず、最終的な合否判定で順位決定の際に活用するにとどめています。ただし、北海道大は2026年度から、徳島大は2027年度から点数化される予定です。

図表⑦ 国公立医学部 共通テスト情報配点比率(前期)

【前期】2次試験は「英語、数学、理科2科目」が主流

続いて、2次試験の選抜方法のパターンです。前期は「学科試験と面接」が基本で、学科試験は「英語、数学、理科2科目」の3教科4科目が主流です。

図表⑧ 国公立大学医学部の2次試験パターン(前期)

上記に当てはまらない大学もあります。科目数が多い例としては、東京大、京都大の2校が「国語」必須の4教科5科目です。群馬大、横浜市立大、京都府立医科大、奈良県立医科大の4校は「小論文」が必須となっています。群馬大は学科試験で英語が課されず、小論文の課題文に英文が含まれることが通例のため、英語の代わりに「英文を含む小論文」が課される、と考えてよいでしょう。 

また、2021年度から愛媛大で英語に代えて「総合問題」が課されています。2024年度の学生募集要項を参考にすると、英語の文章を読んだ上でそれについて英語で記述させる問題や、自らの考えを英語で記述させる問題などが出題されると記載があり、英語の学力が得点を左右することになりそうです。

一方、旭川医科大、弘前大、秋田大、奈良県立医科大、島根大、徳島大の6校は、「理科を課さない」ので他の大学より科目数が少ないということになります。また弘前大では、2021年度から2024年度まで「総合問題、面接」のみとしていましたが、2025年度からは2020年度以前と同様に再び学科試験(英語、数学)を課すこととなっています。

【前期】2次試験の理科の選択パターン

2次の学科試験における理科の選択パターンは、共通テストと同様に「物理・化学・生物から2科目」の大学が大半です。 

図表⑨ 2次試験の理科の選択パターン(前期)

2科目必須で「物理・化学・生物から2科目」以外の大学は8校あります。東京大は唯一「地学」も選択可です。北海道大は「物理が必須で化学または生物から1科目選択」、群馬大、金沢大、名古屋市立大、愛媛大、九州大、佐賀大は「物理と化学の2科目指定」となっています。共通テストと2次試験で理科の選択可能科目が異なる大学もあるため要注意です。

【前期】共通テストと2次試験の配点比率

次に、共通テストと2次試験の配点比率です。前期では「2次試験重視」の大学が全体の約6割を占めています。特に旧帝大をはじめとする難関校では2次試験の配点比率が高く、東京大や東北大では2次の配点が80%を占めています。

図表⑩ 国公立大学医学部の2次試験比率(前期)

一方、共通テストと2次試験の配点が同じ大学は香川大のみで、「共通テスト重視」の大学は4割以下の18校にとどまっています。

マーク方式の共通テストと異なり、2次試験は記述式の問題が中心で難易度も高くなります。記述式の問題で高得点を取る自信がない場合などは、共通テストの配点が高い大学を中心に志望校を考えるのも選択肢の一つです。

【後期】2次試験は小論文と面接が定番

ここからは後期日程について説明していきます。 

前期が「学科試験と面接」での選抜が基本であるのに対し、後期は学科試験を課さない大学が大半です。「小論文と面接」の大学が半数の8校で、山形大、名古屋大、佐賀大の3校は「面接のみ」です。

図表⑪ 国公立大学医学部の2次試験パターン(後期)

また、数は少ないものの後期で学科試験を課す大学は5校あります。千葉大、山梨大、奈良県立医科大は「英語、数学、理科2科目と面接」のパターンです。山梨大は2024年度から英語を追加し、それに合わせて理科や面接等の配点も変更しています。旭川医科大、宮崎大は「英語と面接」のみです。

【後期】共通テストと2次試験の配点比率

前述の通り、後期の2次試験は小論文や面接が主で、共通テストを重視した配点の大学が多くみられます。学科試験のある大学でも、旭川医科大と宮崎大は共通テスト重視の配点比率です。後期は前期よりもさらに、共通テストの得点に合否が左右されがちと言えます。 

図表⑫ 国公立大学医学部の共通テスト比率(後期)

後期で2次試験重視の配点なのは千葉大、山梨大、奈良県立医科大の3校のみで、すべて学科試験のある大学です。これらの大学は例年、2次試験での逆転合格を狙う受験生が集中し、高倍率となる傾向にあります。

なお、後期は全体的に高倍率になりがちで、2024年度入試の志願倍率(志願者数/募集人員)は20.1倍となっています。しかし、第1段階選抜の不合格者や前期、私立大合格による受験辞退者が多く、実質倍率(受験者数/合格者数)は3.15倍まで低下しています。これは前期の実質倍率(3.22倍)とほぼ同じ程度です。

大学によってばらつきはありますが、共通テストで高得点を取り、後期の第1段階選抜を通過すれば、たとえ前期で不合格になってしまっても、もう一度大きなチャンスを得ることができるということになります。

共通テスト英語のリーディングとリスニングの配点比率

センター試験における英語の素点(センター試験の配点)は、筆記200点、リスニング50点の合計250点で、それを200点満点に換算(筆記160点、リスニング40点)して選抜に利用する大学がほとんどでした。共通テストでは、筆記に代わるリーディングが100点、リスニングが100点となりましたが、各大学の選抜に利用する換算得点は、大きく3つのパターンに分かれました。 

図表⑬ 共通テスト英語の配点比率(リーディング:リスニング)

国公立大学医学部医学科全50校のうち、最も多いのはこれまで同様4:1に換算するパターンで、全体の4割強(21校)を占めます。次いで3:1と1:1に換算する大学がそれぞれ13校あります。それ以外の3校は独自の配点を設定していますが、他の多くと同様リーディング重視の配点比率です。

素点通りの1:1は全体の約4分の1にとどまる形となっていますが、多くの大学でセンター試験時代以上にリスニングの得点が重要になったことには違いありません。しっかりと対策して本番に臨むようにしましょう。

いかがでしたか。大学受験の入試方式は毎年のように変更があります。志望校の入試変更点は事前にチェックしておきましょう。

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