世界史こぼれ話#3/キューバ危機から現代世界を紐解く
ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮による弾道ミサイル発射。
21世紀の現代国際社会において、軍事的緊張が高揚しています。
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻における核兵器の使用に言及し、これは「はったりではない」と強調しました。
北朝鮮は金正恩総書記の立ち会いのもとに先月25日からの7回にわたる弾道ミサイルを発射し、これは戦術核運用部隊の訓練の一環だったと明かしています。
核兵器の使用を禁止すべきという動きもあります。
一方で、核兵器を保有する国は依然として存在します。
これは一体なぜなのか。
今から60年前に、核戦争の危機に世界が恐れ慄いた事件があります。
それがキューバ危機です。
今回はキューバ危機とは何だったのか、国際社会がそこから学んだ教訓とは何か。このような疑問に答えるかたちで、現代世界の理解を深めていきましょう。
それでは、早速はじめて参りましょう!
■キューバ危機(1962.10)とは?
第二次世界大戦後、世界はアメリカを中心とする資本主義陣営・ソ連を中心とする社会主義陣営に分かれて対峙するという、いわゆる「冷戦」期に突入しました。
舞台となったキューバは、アメリカ合衆国のフロリダ半島より南方にほど近いカリブ海に浮かぶ島々でした。1952~59年にかけてはバティスタ率いる親米政権が存続し、独裁を行いました。この時代にはアメリカ系の砂糖企業と結びつきが強まった一方で、貧富の差は拡大の一途を辿りました。
1959年1月、バティスタ独裁政権はカストロやゲバラらを指導者とする闘争によって打倒されました(キューバ革命)。直後にアメリカはCIA(中央情報局)を援用してカストロ追放を企てますが、失敗に終わりました。同年5月、反米姿勢を強めたカストロはキューバを社会主義国にすると宣言しました。これは西半球で初めてとなる社会主義国家の誕生を意味しました。
1962年9月、カストロ政権はソ連との間で武器援助協定を結び、キューバへの核ミサイル配備を受け入れました。射程距離圏の中には、アメリカの首都ワシントンや大都市ニューヨークまでも含まれていました。
10月、アメリカ大統領ケネディは海上封鎖を決行し、ソ連に対してミサイル基地の撤去を要求します。対するソ連の第一書記フルシチョフは核ミサイルの発射ボタンを押すぞと威嚇しました。こうして、米ソ核戦争の危機が一挙に高まりました。
米ソ首脳が睨み合う状況が続き、この期間は「世界を震撼させた13日」ともいわれます。最終的にソ連がミサイル基地撤去に合意したため、核戦争は回避されました。
ここから、核兵器の報復攻撃は自国に限らず、世界全体にとって脅威になることが認識されました。核戦争は実際にはできない、ということが教訓となったのです。
■核軍縮へと潮流が変わる
キューバ危機という「十月の悪夢」が過ぎ去ったあと、米ソは平和共存のために歩み寄ることになりました。1963年にはアメリカ・イギリス・ソ連の3か国の間で部分的核実験禁止条約が調印されます。「部分的」とは大気圏内外の空間と水中での実験のことを指し、地下核実験は禁止対象から除外されました。
さらに1968年には、すでに核兵器を保有しているアメリカ・イギリス・ソ連がNPT(核拡散防止条約)を作成して、1992年にはフランス・中華人民共和国を加えた5か国以外の核保有を禁止する体制が成立しました。
お気づきでしょうか?こうした諸条約に基づく現在の核保有国は、国際連合の安全保障理事会・常任理事国である5大国(米・英・仏・中・ロシア)と一致しています。
1996年、国連総会でCTBT(包括的核実験禁止条約)が採択され、地下核実験を含むすべての核実験を禁止することが取り決められました。
しかし、この条約にはアメリカ・中国のほかにインド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮などが批准に応じておらず、現在でも未発効の状態です。
核保有国や核実験を強行する国々の間では、核兵器の保有は自国の安全保障を保全する役割があるだけでなく、非保有国も防衛することができるという、いわゆる「核の傘」と呼ばれる核抑止理論が主張されます。
反対に、核抑止理論はかえって対立を助長させてしまうという懸念もあります。核抑止理論は核兵器の保有を前提とする考え方でもあるわけです。
2021年には、核を保有しない国々の間でTPNW(核兵器禁止条約)が発効され、核兵器の開発、保有、使用、使用の威嚇を含むあらゆる活動が禁止されました。しかしながら、この条約に核保有国は1つも参加してません。
冷戦時代は米ソそれぞれの陣営に分断、二極化されていました。ただ、現代は核保有国側・非核保有国側とで分断されていると読み取ることができます。
世界唯一の被爆国である日本はどういうスタンスなのでしょうか。ご存知ない方は、これを機に調べてみるのも良いかもしれません。
■21世紀は再び緊張の時代へ?
2022年、アメリカのバイデン大統領はウクライナ侵攻を念頭に置き、1962年のキューバ危機以来で、核戦争の危険性が最高潮に達していると警告を発しました。
60年前に核戦争を回避した経験、そこから得た教訓を改めて学び、これからの未来に活かしていきましょう。
今回のこぼれ話はここまで。
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次回も是非お楽しみに。それではまた!
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