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2021年度大学入試科目別出題分析 ⑤地理歴史

2021年度個別試験における、主要大学の出題傾向と回答のポイント、対策を科目ごとにご紹介します。 

最終回となる第5回は地理・歴史。

2022年度の入試対策としてお役立てください。

日本史

2021年度の国立難関大学入試問題について、旧帝国大学系(東北大学を除く)や一橋大学を中心として、出題形式や出題内容を説明します。

1.出題形式
国立難関大学の出題形式は次の二つに分かれます。一つは語句などを問う記述式の問題と論述問題を併用したもの、もう一つが論述問題のみで構成されたものです。前者を採用しているのが、京都大学・北海道大学・名古屋大学・九州大学です。後者は、東京大学や大阪大学が挙げられます。また論述問題といっても一様ではありません。東京大学や北海道大学・名古屋大学などのように提示された史資料を分析して論述させる問題を出題する大学もあれば、京都大学や大阪大学のように一つのテーマに関して流れを確実に理解しているかを問う問題を出題する大学もあります。このような問題の形式や特色を理解しておくことも受験に向けて学習していく上で大変重要です。自分が志望する大学の特徴を見極めることが、受験に向けての最初のステップとなるでしょう。

2.出題内容
次に出題内容や分野に関して見ていきます。今年度の各大学の問題については前年度と大きく変わることはありませんでした。

以下、それぞれの大学の出題内容を説明します。自分の志望する大学の出題傾向を理解し、今後の学習方針のヒントとしてください。

【東京大学】
東京大学の日本史は内容に大きな変動はなく、例年通り古代・中世・近世・近代の4問構成で、今年度は60~150字の論述問題が出題されました。また、今年度もグラフを用いた問題は出題されませんでした。

東京大学の出題の特徴は、資料文や年表などを分析して論述させることです。例えば、今年度は第3問で災害時における江戸幕府の被災地救済の方針について問われました。四つの資料文を丁寧に読んで、年貢徴収が多く見込まれる地域には大名に費用を出させるなど、手厚い救済措置が取られていることに気がつく必要があります。幕府が農村から納入される年貢を経済基盤に成り立っているという知識を踏まえて、災害時にも年貢徴収を念頭に地域によって対応の方針が異なったことを説明するのです。。例えば、今年度は第3問で災害時における江戸幕府の被災地救済の方針について問われました。四つの資料文を丁寧に読んで、年貢徴収が多く見込まれる地域には大名に費用を出させるなど、手厚い救済措置が取られていることに気がつく必要があります。幕府が農村から納入される年貢を経済基盤に成り立っているという知識を踏まえて、災害時にも年貢徴収を念頭に地域によって対応の方針が異なったことを説明するのです。

このように東京大学の問題は丁寧に資料文を読んで、持っている知識と関連づけることで、初めて解答を作成することができます。このような問題に対応するためには、学んだ知識を関連づけて歴史を考察する訓練が必要でしょう。また第1問の類題が2014年に出題されており、過去問の積み重ねも対策としては有用です。

【京都大学】
京都大学は例年通り大問4題構成で、70点分の記述式問題と30点分の論述問題(200字×2題)が出題されました。今年度も内容に関して大きな変動はありません。まず、記述式問題について。今年度も史料問題も含め多くが標準的な知識を問うものでした。従って、記述式問題は確実に正答する必要があります。一方、論述問題は近世(徳川家綱の時代の評価)・近代(第一次世界大戦~太平洋戦争開戦までの日米関係)について出題されました。近世の問題は徳川家綱の時代を幕府政治からの視角だけでなく、多面的に論じる必要があります。家綱の時代の歴史事象を根拠にして、時代の評価をしなければならず、正確な知識はもちろん、思考力・論述の展開力が求められ、難問であったといえます。

京都大学の日本史は例年、記述式問題に難問が数問出題される上に、論述問題は用語を暗記しただけでは解くことはできません。来年度受験に臨む人は、普段の学習から細かい知識や歴史事象の背景事情などに留意して学習し、早い段階から過去問を通じて論述に必要な思考力・展開力を身につける必要があります。

【大阪大学】
大阪大学の日本史は、例年通り四つの大問で構成されており、それぞれ古代・中世・近世・近代と、時代の偏重なくバランスよく出題されました。

Ⅰでは「奈良・平安時代の神仏習合の展開」、Ⅱでは「承久の乱後の朝幕関係の変化」、Ⅲでは「寛政の改革における農村復興政策」、Ⅳでは「初期議会から第2次山県有朋内閣までの地租増徴問題」について問われ、Ⅲは歴史事象の内容を、Ⅰ・Ⅱ・Ⅳは事象の展開過程を説明することを求められました。どれも標準的な知識で対応可能であったといえます。このように歴史事象の展開や内容などを書くには、日頃から原因や経過・結果・意義について意識しながら教科書を読んで学習することが大切です。

【一橋大学】
一橋大学は大問3題のうち、前近代史1題・近現代史2題の出題で、また社会
経済史分野からの出題頻度が高い傾向にあります。

Ⅰの前近代史に関しては、昨年度は「近世の旅」をテーマに、江戸時代の社会について問われましたが、今年度は古代から近世までの土地制度と税制が出題されました。Ⅰの問2がややまとめにくいですが、他は標準的な知識で解くことが可能で、大きな取りこぼしは許されません。一方で、毎年難問が出題されるのが一橋大学の特徴です。今年度でいえば、Ⅱの江戸幕府崩壊後、東京の人口が急減した理由については難問といえます。Ⅱは幕府崩壊後に参勤交代の制度もなくなったため、大名やその家臣が江戸を離れたことなどを推測できるかがポイントです。

このように一橋大学の日本史では、東京大学などのように持っている知識を使って思考することが求められます。思考力を養うためには早い段階から過去問演習を実施する必要があります。また、過去に出された問題に似た問題が出される傾向にあるのも、徹底的な過去問演習が必要な理由です。

【北海道大学】
北海道大学は、記述式の問題と論述問題の併用で出題されました。形式的には例年通りです。論述問題については、全体の論述量は前年度に比べ減少し、昨年同様に100字以上の問題は見られませんでした。

論述内容としては、例年通り思考力を求められる問題が出題されました。例として後白河法皇を幽閉した平清盛を非難する公家がいなかった理由について問われた2の問2が挙げられます。問題のリード文をよく読み、延暦寺が関わる訴訟について後白河の対応ではなく、清盛の対応を公家が支持したことを推測できるかが解答のカギとなります。与えられた情報を有効に利用し、根拠に基づいて当時の状況を評価する力が求められたといえます。ただし、論述問題の多くは標準的なものであり、事件などの背景や結果などを押さえていればそれほど難しくはありません。一方、記述式の問題もほとんどが標準的なもので占められていました。まずは教科書学習で知識を確実に定着させた上で、論述問題に対応できる力をつけることが大切です。

【名古屋大学】
名古屋大学は、昨年度同様に大問4題の構成でした。問題の構成としてはほぼ全ての小問が論述問題であり、古代から近現代までの出題でした。Ⅱの問2(2)の中世と近世の景観の相違について図を見て考察させる問題などのように、単に知識を暗記しただけでは解けないものも出題されました。思考力や分析力を意識して問題が作成されているといえます。ただし、問題の多くは教科書の内容を逸脱するものではないので、まずは教科書記載の知識を丁寧に学習することが重要です。

名古屋大学の日本史は、問題数の割に試験時間が短いので、少ない字数で解答をまとめる技術が必要です。名古屋大学を志望する受験生は、多くの論述問題を解いて、思考力と論述力を養成しておくことが重要です。

【九州大学】
九州大学は大問4題の構成で、それぞれ古代・中世・近世・近現代から出題され、記述式と論述式の問題形式でした。

記述・論述問題共に標準的な知識を問うものが多く、受験生にとっては解きやすかったのではないかと思います。教科書の知識を中心に、歴史事象の背景や目的・結果などにも注意して学習していくことが求められます。

3.歴史事象の背景・結果・意義に注目した学習を
以上のように、今年度の国立難関大学入試も論述問題が多く出題されまし
た。これら難関大学を受ける際には論述対策を十分やっておくことが必要です。そのためには、まず基本知識を定着させなければなりません。知識がなければ、どの大学の論述問題にも全く対応できないからです。

知識を習得する際には、教科書を用いた学習をすることが大切です。その際、歴史事象同士の関連性や事件の背景・結果・意義などに注目して教科書を読む必要があります。各大学の問題についての説明でも述べてきたように、論述問題では歴史事象について原因や結果・背景が多く問われるためであり、さらにこうした学習により各時代の特徴を深く理解できるようになり、東京大学や京都大学・一橋大学などで必要な思考力の養成にもつながるからです。また、論述問題は講師に添削してもらうことをおすすめします。第三者から添削を受けることで、自分の解答で足りないところが明らかとなり、論述の能力向上につながるのです。

世界史

2021年度の国立難関大学の入試問題について、旧帝国大学(世界史の入試
がない東北大学を除く)および一橋大学を対象に、出題形式や出題内容を説明します。

1.出題形式
国立難関大学の世界史の出題形式は、記述式問題と論述問題を併用した
ものが中心となります。しかし、論述問題といっても、北海道大学のように3行(90字程度)までの小論述のみを課す大学がある一方で、京都大学や名古屋大学のように300~350字の論述を課す大学、東京大学や九州大学のように600字の論述を課す大学、一橋大学や大阪大学のようにほぼ論述問題で構成されている大学など形式は多様です。

2.出題内容
【東京大学】
東京大学の世界史は例年通り、第1問が大論述、第2問が小論述、第3問が一
問一答の記述式問題でした。字数については、第1問は前年度と変わらず600
字でした。第2問は前年度より90字減少して390字でしたが、前年度3問あった2行(60字)の論述問題が消滅し、3行(90字)で述べる問題が主となりました。

第1問では前年度特徴的であった史料文を用いた問題は出題されず、例年通
りの形式に戻りました。問題内容は5世紀から9世紀の地中海世界という典型的なテーマでした。2006年の京都大学で類題が出題されています。問題文の第1段落を特に注意深く読み、題意を正確に把握することが求められます。第2問は前年同様近現代史が中心でした。問(2)(b)のフィリピン革命は内容を詳しく書く必要があり、字数を埋めるのが難しい問題でした。一方、第3問は標準的な問題でしたので、高得点を狙いたいところです。

東京大学の世界史は第1問の大論述に目を奪われがちですが、近年は標準的
なテーマに落ち着いてきています。その反面、第2問は受験生にとって盲点となりがちなテーマが続いています。大論述はもちろんのこと、小論述についても十分な対策をしていきましょう。

【京都大学】
京都大学は例年通り大問4題の構成で、東洋史と西洋史で各2題ずつ、それぞ
れ300字の論述問題が1題、記述式問題を中心とするものが1題の形式でした。論述問題はどちらも前年度に比べるとかなり書きやすくなりました。第1問(東洋史)は久しぶりに中国そのものをテーマとする問題が出題されました。ヨーロッパ人宣教師の中国での活動を書きすぎないこと、影響についてはヨーロッパに与えたものについても述べることがポイントとなります。第3問(西洋史)はウィーン議定書からドイツ統一に至る過程を述べるもので典型的なテーマの問題でした。しかし、300字で述べようとすると内容の取捨選択が必要となり、コンパクトな記述を求める京都大学らしい問題といえるでしょう。一方、記述式問題(第2問、第4問)に関しては、例年出題されている難問はかなり減ったように感じます。細かい知識が必要な問題としては、第2問(22)のタバリーや第4問(24)のメルヴィルが挙げられるでしょう。

【一橋大学】
一橋大学の世界史は、合計400字の論述問題が3題出題され、内容は中世
ヨーロッパ、近代ヨーロッパ、近代中国・朝鮮半島の三分野が典型的なパターンです。今年度もこのパターンが踏襲されました。第1問はビザンツ帝国史が主たるテーマですが、一橋大学の問題としては珍しく、長期間にわたる歴史的な変化を論述する問題でした。ハギア=ソフィア聖堂がキリスト教の聖堂からイスラーム教のモスクに変わったことは必須事項です。また問題文中の1930年代にモスクから博物館へ転用されたという情報から、ムスタファ=ケマルの政教分離政策について指摘します。なお、この問題は2020年エルドアン政権による博物館からモスクへの再転用を意識した出題であると思われますが、受験生がそこまで論述するのは難しかったと思われます。第2問では、レンブラントの時代(17世紀のオランダ)とゲーテの時代(18世紀後半のドイツ)の比較が出題されました。教科書の知識では400字を埋めることのできない難問です。第3問は中国の現代史が出題されました。大躍進の失敗から天安門事件までを時系列に沿って述べていくことになります。

一橋大学の世界史は出題分野が限定されておりその点では対策が立てやす
いですが、高校世界史の範囲を超えた問題も多く出題されます(特に第2問)。過去問演習を通じてこのような問題に驚かないようにすることも大切ですが、典型テーマに何とか引きつけて字数を埋めるという気概も重要です。

【北海道大学】
北海道大学は記述式問題と2~3行の論述問題を併用した形式で、例年通り
のものです。論述問題ですが、大問1と大問2は標準的なテーマで書きやすいものでした。一方大問3は歴史用語について詳しく説明する必要があり、書きづらい設問が目立ちました。例としては問2(ウ)のラテラノ条約、問4(イ)のコルホーズ・ソフホーズ、問4(ウ)のスターリンの粛清、問5(ウ)の1935年インド統治法が挙げられます。記述式問題はいずれも標準的なものでした。

【名古屋大学】
名古屋大学も記述式問題と論述問題の併用形式ですが、最後の大問に350
字の論述問題があるのが特徴です。また、論述問題の解答欄も、罫線のあるもの、枠のみ与えられているもの、原稿用紙形式のものと多彩です。問題Ⅰは問題文が長く驚いてしまうかもしれませんが、設問自体は標準的なものばかりです。問題Ⅱの問8は問題文の趣旨を把握し論述するというもので、近年の傾向である思考力や分析力が問われるものでした。問題Ⅲのいくつかの史料文が出るタイプも、近年では隔年で出題されている形式です。記述式問題はいずれも標準ですが、2題の論述問題(問4の啓蒙専制主義と問6のサンバルテルミの虐殺)は解答欄の枠が大きいので、やや詳しく述べる必要がありました。問題Ⅳは現代史からの出題でしたが、テーマは標準的なものでした。2017年の京都大学で類題が出題されています。

【大阪大学】
前年度と形式が大きく変わったのが大阪大学です。とはいえ前年度の大学入
学共通テストを強く意識した長大な問題文から例年の形式に戻っただけです。しかし、各設問に思考力を測ろうとする意図は感じられました。

(Ⅰ)は論述のテーマとしては標準的なものですが、問い方がやや複雑ですので、題意の正確な把握が必要です。問3は13世紀の内容についてどのくらい詳しく書けたかがポイントとなります。(Ⅱ)はどちらも教科書の知識だけで解くには難しい問題でした。問1は問題文中にいくつもの要求があるので、その要求に応えつつ解答を作成する必要があります。キリンの象徴的意味を絵のタイトルにある「瑞応」から推測するのは至難の業です。標準的な論述テーマである永楽帝即位の経緯とその後の外征について書くことが先決です。問2はルネサンスとその背景について説明する問題でした。背景は東方貿易の繁栄とビザンツ帝国滅亡による学者の流入について述べれば良いでしょう。(Ⅲ)ではスンナ派とシーア派の説明に関する論述問題が出題されました。標準的な問題なので得点源としておきたいところです。

【九州大学】
九州大学は大問3題の構成で、〔1〕が600字の大論述、〔2〕が50字、100字、150字の小論述を含むもの、〔3〕が記述式と記号選択を併用したものであり、例年の形式を踏襲したものでした。〔1〕の大論述は男性普通選挙の実現と女性参政権がテーマでした。前年度のように長期にわたる歴史的変遷ではなく、アメリカ合衆国やアジアなど空間的な広がりを意識した出題でした。なお女性参政権の拡大については2018年に東京大学で類題が出題されています。〔2〕はグラフや資料文が与えられているため難しく感じるかもしれませんが、論述問題を含めて問われている内容は標準的なものでした。問3のオーストラリア史は学習が後手に回りがちな分野ですので差が出たかと思われます。これも類題が2020年の東京大学で出題されています。〔3〕もほとんどが標準的な問題ですので確実に正解しておきたいです。

3.学習アドバイス
世界史の入試問題では記述式問題と論述問題が併用されることが多いため、
まず大学入学共通テストレベルの基本知識を定着させ、記述式問題での高得点獲得を目指しましょう。

論述問題の対策ですが、まずは歴史用語の説明を中心とした100字以内の小
論述を解く練習をしましょう。そこから自分の志望する大学に合わせた論述対策へと進んでいきます。同程度の字数の問題を出題する、志望大学以外の過去問を解くことも対策として効果的です。例えば、京都大学を志望する人は、大阪大学や名古屋大学、筑波大学の過去問に目を通しておくと良いでしょう。

ただ、論述問題は問題量をこなせば良いというわけではありません。「歴史事象の因果関係が正しく捉えられているか」が高得点を獲得するためには重要です。文章の書き方も含めて、講師による添削指導を受けることをおすすめします。

地理

1.大学別の傾向
以下の難関国立大学の地理入試において、出題傾向にはどの大学も著しい
変化はありませんでした。出題形式は大きく2つに分けられます。

①論述中心型…東京大学、一橋大学、大阪大学、九州大学
②論述・担当記述併用型…北海道大学、名古屋大学、京都大学

【東京大学】
例年通り大問は3問で、与えられた図表をくまなく読み取り、題意に沿って簡潔に論述する能力が求められていました。2020年(38行)と比べて論述問題の行数(1行は30字)は36行と2行減り、4行の論述は出題されませんでした。短答記述式は7問と、2020年と比べて2問減りました。

第1問は世界の環境と地形、第2問は世界の言語状況と教育、第3問は世界と
日本における女性の労働と、日本に関する出題が例年より少なかったです。
2019年と2020年に出題された計算問題は出題されませんでした。地形図や
地形断面図は出題されませんでした。

知識レベルとしては教科書で対応できる出題内容でしたが、自然環境と人間
生活、地域間のつながり、人口問題など同学の頻出テーマは意外な視点から問われることも少なくないため、幅の広い学習と日本、世界の時事に関心を抱いておくことが必要です。

【京都大学】
2019年から大問がそれまでの4問から5問に増え、本年も3年連続で5問でし
た。例年通り地形図が出題されました。また、2年連続で世界の特定の地域の地誌問題(大問Ⅱのオセアニア地誌)が出題されました。字数制限のある論述問題は最多でも50字しかなく、字数制限のない1行程度の短答論述もあります。難問は少ないですが問題の量が多いため解答には時間がかかります。

大問Ⅰの高知県東部の奈半利川河口付近の地形図の読図、大問Ⅲの乾燥地域
の問題のように、頻出の自然地理に関する問題もあれば、大問Ⅳの水産物、大問Ⅴの通信に関する時事的な問題もあり、各大問は共に衛星画像やグラフ、統計表が使われるなど多様性に富んでいます。教科書レベルの基本的な知識をくまなく理解し、解答として素早くまとめて答えさせる力が求められています。

【一橋大学】
例年通り大問3問で、長いリード文をもとに統計資料を分析して設問に解答させるという出題形式には変化がありませんでした。小問1問あたりの字数は125~175字でした。また記号や国名などを含めた解答に際しての内容指定が細かいのが特徴で、資料の情報量が多く解答の指針を立てるのにも時間がかかります。第2問・問3の2020年前半(1~6月)の訪日外国人数の減少など、時事的な出題が見られました。

全体的な出題傾向としては、他大学よりも地形、気候などの自然分野の出題
は少なく、第3問・問3のクローン・タウンのような教科書レベルの学習を超えた内容も含まれる統計資料をもとにした社会学的な分析と考察.独自の見解が解答として求められています。毎年難題も見られる同学独自の出題傾向であるため、早めの対策と学習が必要です。

【北海道大学】
例年通り大問4問の構成で、地誌の問題が2020年の3問から1問に減少しま
した。小問の数も2020年の62問から66問に増え、問題は難化しました。

第1問は房総半島の棚田を中心とした自然環境や農業、第2問は国家、第3問
は人口と都市・村落、第4問はオーストラリアについての設問でした。第1問の都市と農村の交流、第2問のクルド人の問題などのやや書きにくい設問もありましたが、教科書レベルの知識で対応できるものが多くを占めています。そのため、入試対策としては教科書レベルの学習事項を短くまとめる論述の対策を中心に、地図帳で世界各地の地図などを見慣れておくようにしましょう。本年はありませんでしたが、北海道について出題されることもあります。

【名古屋大学】
2020年より1問少ない大問3問の構成で、系統地理が2問、地誌(オーストラ
リア)が1問でした。短答記述、記号選択、論述が混在する形式に変わりはなく、大問は1つ減っても問題数、記述量共に2020年とほぼ同程度でした。

問題Ⅰに等角航路と大圏航路の違いを図示する問題、問題Ⅱに中国の農業区
分の境界線を地図に書き入れる問題なども出題されています。専門的な内容の論述問題や、細かい知識を問う短答記述問題も散見されますが、教科書レベルの問題も少なくなく、対策としては過去問でグラフや図の傾向などをつかみ、基本的な事項を簡潔に説明するようにすることが必要です。

【大阪大学】
例年通り論述問題のみの大問2問の出題で、総設問数は6問です。総字数は
1,000字程度で2020年と同じでした。本年は小問1問につき150字か200字
で、字数が多いのが特徴です。

大問Ⅰは世界の難民や紛争を巡る問題についてで、難民受入数の図の読み取
り、旧ユーゴスラビアの紛争といった具体的な例だけでなく、国家や民族についての深い見識が問われました。第Ⅱ問は北極圏に関する標準的な問題で、環境問題への言及が求められるなど時事的な内容も含まれています。教科書の基本事項に対して、簡潔に要旨をまとめるだけでなくその背景まで説明できるような対策が必要です。

【九州大学】
地理入試の実施は本年で7年目を迎え、大問2問の構成に変化はありません。論述が5問、短答記述が1問からなり、論述の総字数は950字と2020年の
1,050字より減少しましたが、難易度に変化はありません。

大問[1]は世界地図の歴史的な変遷、大問[2]はEUに関する問題でした。論述問題の中には指定用語を使用しなければならないものがあり、東京大学など同傾向の論述問題を課す大学の過去問も対策として有効です。

2. 総論

地理は現状の世界を把握する科目であるため、大学入試には昨今の出来事
に関する時事を反映させた出題や、近年の変化を統計数値や図などで示した
出題が多くなります。本年は国家と民族、ナショナリズムに関する出題が目立ちました。

東京大学、京都大学、一橋大学など難関国立大学には独自の出題傾向があ
り、教科書レベルの事項であっても単なる知識の習得にとどまらない深い理解と考察が必要です。志望校現役合格のためには、早めに地理の入試対策を始めることをお勧めいたします。また世界や日本の情勢についても絶えず注意や関心を払っておくようにしましょう。

この記事は『2021年度大学入試 出題傾向リサーチ』に掲載された記事の一部を修正・加筆したWeb版です。
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