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2023年度国公立大学 医学部医学科 一般選抜の変更点

2023年度国公立大学入試に関しては、7月31日までに各大学から入学者選抜の概要を示す選抜要項が発表され、昨年度からの変更点がおおむね判明しました。ここでは国公立大学医学部医学科一般選抜の主な変更点のうち「募集人員」「2段階選抜」「科目・配点」に焦点を当てて見ていきます。(以後「医学部」は「医学部医学科」を指します)


「歯学部振替枠」は廃止
今後も医師偏在の是正を推進


医・歯学部を併設する大学において、歯学部入学定員を減員する場合に医学部臨時定員の増加が認められてきた「歯学部振替枠(44名)」は、2010年度から2019年度までの期限の後、3年間延長されましたが、2023年度以降は廃止されることになりました。

医・歯学部が併設されている11の国立大学のうち歯学部振替枠を利用しているのは、北海道大学(7名)、東京医科歯科大学(10名)、大阪大学(3名)、岡山大学(3名)、徳島大学(2名)、九州大学(5名)、長崎大学(5名)、鹿児島大学(2名)の8校37名です。そのうち、大阪大学、徳島大学は選抜要項では明確にされていませんが、それ以外の6校は振替枠に相当する人数を一般選抜から減員する予定です(鹿児島大学のみ後期日程)。

また、2022年度の富山大学に続き、岐阜大学も後期を廃止し、その分の募集人員10名は前期に加えられることになります。これにより、後期実施大学は50校中16校となります。

医学部の入学定員は、2008年度以降、臨時定員の増加が続き、2017年度には約1800人増(+23.5%)の9420人に達しました。その後、一部の臨時増加分の廃止により、2022年度には9374人となっています。

厚生労働省によると、現在、医師数は毎年3500~4000人ずつ増加しており、2023年度の医学部入学者が医師となる2029年頃には需給バランスが均衡するとみられています。今後は医師の地域偏在、診療科偏在の是正を目指しつつ、長期的には入学定員が減らされていくことになりそうです。

第1段階選抜の予告倍率は
縮小傾向の一方、基準点は緩和


第1段階選抜の予告倍率の変更を公表した5校のうち、4校は倍率を縮小しました。東京大学は、その理由として「縮小しても合否に影響がない」「面接の質向上」を挙げていますが、他の3校も同様の判断があったかもしれません。基準を緩和した三重大学後期日程は、2022年度の志願倍率(志願者数/募集人員)が21.3倍と高倍率だったものの、第1段階選抜の実施や前期、私大合格者等の辞退により実際の受験者が激減し、実質倍率(受験者数/合格者数)が1.4倍と過去10年で初めて2倍を割っています。

第1段階選抜に基準点を設けている大学のうち、名古屋大学前期は基準点を下げ、名古屋市立大学は基準点を下げたうえで倍率の予告を加えました。背景には、今年度の共通テストの難化で、名古屋大学前期は昨年比43.5%、名古屋市立大学は同78.8%と大きく志願者を減らしたことがあります。

また和歌山県立医科大学は予告倍率に加え、新たに基準点を設けました。名古屋市立大学、和歌山県立医科大学は、共通テストの平均得点の状況によっては基準点を変更する場合がある旨を明らかにしており、名古屋市立大学の選抜要項には2023年1月20日頃に基準点を公表すると記されています。なお昨年度にも同様の予告がありましたが、基準点の変更はありませんでした。

2段階選抜を行う場合の条件・基準は、

①募集人員に対する倍率で予告
②基準点で予告
③基準点+倍率で予告

の3パターンに分類されます。

前期で最も多いのは①で、49校中40校を占めており、②は3校、③は6校です。後期では16校すべてが①となりました。①の大学は、実施の有無や第1段階選抜通過に必要な得点が年度によって異なるため、出願には慎重にならざるを得ませんが、②の大学は、自己採点が正確であれば第1段階選抜通過の可否は明確となります。2022年度前期は、①の大学41校のうち、第1段階選抜での不合格者が0だったのが24校と6割程度を占める一方、過去10年不実施だった岡山大学で157名が不合格になるなど、年度や大学によって変動があるため注意しましょう。

広島大学は3パターンの配点に


2次試験における複数の配点方式での選抜が特徴的な広島大学は、「A(em)配点」(英数重視型 英・数各800点、理200点)を新設、「A(s)配点」(理科重視型 英・数各300点、理1200点)、「B配点」(一般型 英・数・理各600点)の3つの配点方式で選抜します。

優先されるのは「A(s)配点」、「A(em)配点」で、それぞれの得点上位約45名(募集人員の半数)を合格とします。この2配点方式で合格者の重複があった場合に発生する不足数について、「B配点」の得点上位者から合格者が決定されます。なお、この3つの配点は受験生があらかじめ選択するものではありません。また、2次試験のいずれかの科目の得点が受験者平均点の60%に満たない場合や、面接で不可とされた場合は不合格となりますので、注意が必要です。
 
佐賀大学は、一般選抜では特徴的だった調査書の点数化を廃止します。加えて、後期は面接の配点を下げ、前・後期ともにこれまでよりもさらに共通テスト重視の選抜方法となります。


●2023年度入試

国公立大学医学部医学科 一般選抜主要変更点

(2022年9月時点)

Ⅰ 募集人員に関する変更

Ⅱ 2段階選抜に関する変更

Ⅲ 科目・配点に関する変更


この記事は2022年10月20日に刊行された『Y-SAPIX JOURNAL』2022年11・12月号に掲載された記事のWeb版です。


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