2023年度 九州大学(理系)・数学
〇概評
例年通り大問5つの構成で、うち4題が数学Ⅲからの出題です。文章を読解させる出題形式が継続され、高い発想力を要する問題が多いため、昨年よりも難化しています。
完答しやすい大問はほとんど無く、「取れるところをしっかり取る」という戦略を高い水準で実行できた受験生でようやく合格点に到達する、歯ごたえのあるセットでした。
第1問
相反方程式と複素数平面の問題です。
(1)は$${n=4}$$の相反方程式で、Y-SAPIXのテキストでも何度か扱われています。(2)は$${α,β,γ}$$の対称式であり、$${(γ-α)/(β-α)=z}$$とおく定番の変形をすることで、ようやく(1)との関連に気付けます。
この後に続く第2問~第5問はいずれも難易度が高いため、この第1問でしっかりと得点をとれることが非常に大切です。
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第2問
絶対値付きの漸化式で定義された数列の問題です。見慣れない形をしているため、意表を突かれた受験生がほとんどでしょう。
初項として具体的な値を与えながら、まずは様子を掴むことが肝心です。なお、本問は数Ⅲの頻出テーマである「力学系」を背景とする出題なので、定性的な取り扱いに慣れている受験生であれば、結果を推測することは容易なはずです。
しかし、図に頼ることなく、背理法や数学的帰納法によって厳密な議論を組み立てることは決して容易ではありません。
第3問
連立一次方程式の解について、ベクトルを用いながら考える問題です。
「行列による1次変換」を背景とした出題なのですが、現行の学習指導要領では行列を習いませんので、ほとんどの受験生にとっては取っ付きづらい問題に違いありません。
(1)(2)はベクトルの等式ではなく、成分についての等式に書き直せば、方針が見えやすいはずです。
(3)は両成分が整数であるベクトル$${q}$$を任意にとって$${r,s}$$を計算すれば「$${D=±1}$$でないか?」とすぐに予想できると思います。
しかし、$${D≠±1}$$すなわち$${|D|≧2}$$を否定するためにはベクトル$${q}$$を上手く選ぶ必要があり、背理法による論証を完成させるハードルは非常に高いと言えます。
第4問
三角関数の加法定理と同様の性質を持つ関数についての問題です。
(1)(2)は関数方程式の典型問題なので、手がたく得点したいところです。
一方、(3)(4)はほとんどの受験生にとって初見の内容であり、本学の受験生レベルであれば、この部分でいかに粘ることができたかが得点差に直結したと考えられます。
誘導の意図を適切に汲み取りながら、その場で対応していく力が全面的に問われています。特別な難問ではないものの、制限時間に対して要求される思考の深さと計算の多さには特筆すべきものがあり、他の大問を含めた時間配分には十分注意する必要があります。
第5問
パラメータ表示された曲線についての問題です。微積分なので、第2問~第5問の中では最も手が付けやすいと言えます。
(1)は$${x}$$座標に注目すればすぐに解決します。
(2)は、(1)の結果を参考にしながら丁寧に図示することで、$${y}$$軸方向への定積分を実行すべき図形であることが分かります。いつも通りパラメータ$${t}$$による定積分に直した後の計算はそれなりに複雑であり、限られた時間内で正確な値を導くことは容易ではないでしょう。
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