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2023年度 早稲田大学・国語

文学部

第1問 現代文 大屋雄裕「AI時代における可謬性」 
第2問 現代文 西條玲奈「ジェンダー」『ファッションスタディーズ』 
第3問 古文  『和泉式部日記』 
第4問 漢文 夏目漱石の漢詩 

【寸評】

全体的に良問が並ぶ。現代文は、第1問、第2問ともに論旨が明確な文章だが、設問難度はやや高め。出題意図を捉え、選択肢をしっかり吟味しないと立て続けに間違う可能性がある。第3問の古文では、掛詞が問われた。文学部に限らず、和歌修辞法は頻出。枕詞はもちろん、序詞、縁語までしっかり対応できるようにしたい。第4問の漢文では、夏目漱石の漢詩文が出題されているが、近代の日本の知識人の漢詩が出題されるのは非常に珍しい。


法学部

第1問 古文 『閑居の友』 
第2問 漢文 蘇軾「李氏山房蔵書記」 
第3問 現代文 崎山修『他者と沈黙 ウィトゲンシュタインからケアの哲学へ』
第4問 現代文 山田広昭『可能なるアナキズム』 

【寸評】

第1問の古文、第3問の現代文は、選択肢の見極めが非常に難しく、難問に属する(実際、各予備校でも解答割れが発生している)。難問に時間をかけすぎず、標準の問題を取りこぼさないようにしたい。第2問の漢文では、返り点を施す問題が出た。第4問は、贈与の機能について論じた文章で、哲学的な硬質な内容だが、設問の選択肢は特に紛らわしくないため、しっかり論旨を辿れば、正答できる。


文化構想

第1問 現古融合 前島密「漢字廃止論」 
第2問 現代文 マイケル・エメリック『てんてこまい 文学は日暮れて道遠し』 
第3問 現古漢融合

【寸評】

第1問は、明治文語文と現代文との複数テキストによる従来型の形式。過去問対策などで、こうした形式に慣れるようにしたい。出典のイ・ヨンスク『「国語」という思想』は、かつて早大・第二文学部の現代文試験の出題文であったこともある。明治文語文の出題は、前島密の「漢字御廃止之議」で、間接的に漢文訓読の素養を測る設問も用意されている。第2問は、現代文試験としては稀な外国籍の著者による文章からの出題。第3問は、専門性の高い論文からの出題で、普段からこのような硬質な文章を読んでいないと、とても太刀打ちできない。


人間科学

第1問 現代文 複数テキスト(A吉川浩満の文章、B中尾央の文章) 
第2問 古文 鴨長明『無名抄』 
第3問 漢文 『貞観政要』 

【寸評】

第1問は、まるで共通テストを意識したかのような複数テキストによる出題。いずれも、文章内容の抽象性が高く、非常に難しい。また、30字~35字以内の記述問題も出題されている(問十二)。早稲田の現代文の記述は、基本的に法学部のみであるが、近年では文学部(2020年)でも出題されたことを考えると、今後、全ての学部で記述式問題の出題の可能性があると考えるべきだろう。第2問、第3問の古文、漢文の難易度は標準並だが、漢文では、使役の助動詞「遣」を出題するなど、教科書や参考書の内容を超える知識まで要求されている。


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政治経済

第1問 総合問題 

【寸評】

政治経済学部では、2021年から学部独自の国語試験を廃止し、新しく「総合問題」という形式を導入した(Ⅰの部分が、実質、「国語」問題に該当する)。従来の伝統的な設問はほとんど踏襲されず、グラフや図表などのデータ読み取りをメインとした問題である。今回も貧困率をテーマとした多様なグラフ、データが並ぶが、設問は、文章読解というよりも、情報処理、論理パズルといった側面が強く、一般的な意味での国語力を測る試験ではない。また200字以内の記述問題も用意されている。


教育学部

第1問 現代文 戸谷洋志・百木漠『漂白のアーレント 戦場のヨナス』 
第2問 現代文 田中彰吾『自己と他者』
第3問 古文 『平家物語』
第4問 漢文 『夷堅志』 

【寸評】

本学部の現代文の試験は、前年度に出題文の著者本人から、「解答が違うのではないか」というクレームを受けたことは記憶に新しい。第1問は、アーレント、ヨハスといった哲学者の自然とテクノロジーをめぐる考察を論じた文章、第2問は、身体の物理性を確認した上で、他者との接続へ至る回路を述べた文章である。いずれも論旨が明確だが、選択肢が紛らわしい設問がいくつかある。第3問の古文は、『平家物語』だが、主語が分かりづらい文章であり、難度が高い。第4問の漢文は、非常に平易。満点を狙いたい。


商学部

第1問 現代文 猪木武徳『経済社会の学び方』
第2問 古文 『積翠閑話』 
第3問 漢文 森鴎外の「航西日記」 

【寸評】

第1問は、経済学における客観性について述べた文章からの出題である。複数の学説が紹介されているが、それらをしっかり整理して読み取ることが求められている。問題自体はそこまで難しくないが、並び替え問題(問八)はやや難。第2問の古文は、物語の内容が面白く、読みやすい。設問も標準的だが、古文では珍しい脱落文挿入問題がある(問十六)。第3問は、森鴎外の漢詩を含んだ文章で、文学部と同じく、日本人による漢文が出題されている。森鴎外の生涯に詳しいと、非常に読みやすい内容である。


社会科学

第1問 仲正昌樹『現代哲学の論点』
第2問 古文『東関紀行』 
第3問 漢文『晋書』

【寸評】

第1問は、入試頻出の著者である仲正昌樹の文章からの出題。ネット民主主義の限界を論じた文章で、現代社会に落とし込んで理解できるので読みやすい。ただ、紛らわしい選択肢がある設問も多く、設問の出題意図を掴み、本文中の根拠となる箇所を照合する作業を徹底できたかによって、出来不出来が大きく左右されたであろう。社会科学部の古文の問題の特徴は、文章の読解がそれなりにできなくても、基本的な文法、単語、文学史の知識だけで解ける設問が他学部に比べて多いところ。知識問題は確実に得点したい。第3問の漢文は、標準並み。


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