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教科別学習アドバイス ―国公立大学2次試験編―

皆さんにとっての天王山である入試日まではもう間もなく。緊張が徐々に高まる一方で、追い込みに余念がないことと思います。そんな高3生に向けて、Y-SAPIXの先生たちから教科ごとの学習アドバイスをお届けします。そのポイントを頭に入れ、ラストスパートのギアを上げましょう。

【英語】伸び代がある分野に最大限の努力を

受験直前のこの時期に、得点力を向上させるためにまず行うべきは「優先度」を決めることです。英語の試験では単語、長文読解、英作文、リスニングやスピーキングなど4技能に関連したさまざまな問題が課されます。しかし直前期では英語に使える時間が限られているため、上記すべての対策を完璧に終えることは極めて困難でしょう。優先度を決めることによって時間をかけずに、最も伸び代がある分野に対して、最大限の努力を投入しましょう。以下にその具体的な手順を記します。

現在の入試は長文読解の配点が大きいため、多くの現役生にとって最優先の分野は単語です。なぜなら単語とは知識であり、知識は得た瞬間から得点を向上させる力を持つからです。2,000語程度の単語帳にある単語を80%ほど覚えるまでは、単語力に比例して試験の得点も上昇します。

しかし単語帳の単語が80%ほど定着したころから、得点の上昇は鈍ります。その状態であれば長文読解の点数も合格ラインに近づいているはずですが、もしまだ不十分だと判断したら、接続語句(thoughやwhereasなど)を中心とした読解ができているかを確認しましょう。単語力が上がったことで一つ一つの単語を意識する必要がなくなり、接続語句が作る逆接や譲歩といった話の流れが頭に入りやすくなっているはずです。必然的に、長文の内容を理解する力も増しています。

長文の読解力が備わったならば、いよいよ記述問題の対策に移ります。ここでお伝えしたいことは一つだけです。記述問題は、答えを書いたら必ず添削を受けてください。記述問題というものは出題者の意図を理解してはじめて、採点したり得点力を上げる方法を示したりすることができます。従って、それらを理解している先生などに添削を受けて、得点を上げるために何をするべきか、必ず明確にしておきましょう。今は学校やインターネットなど添削を受けられる場が増えましたが、添削を受けるという行為自体は受験生の間でまだ定着していません。それゆえに差をつけやすく、つけられやすいポイントですので注意してください。

【数学】直前期だから試験時間を意識した練習を

数学は、短時間で劇的に実力が伸びるうまい方法は残念ながらありません。直前期だからといって、焦ってしまって何かおいしそうなものに飛び付くのではなく、見たことがない(ように見える)問題をじっくりと筆答していくしかありません。数学は、解けなさそうな問題を自力で解き切ったときに実力がアップします。また、何となく解けた、答えの数値が合っていただけで満足することなく、きちんと論証ができているか、場合分けに抜けがないかなどをしっかりと確認し、できれば先生に答案を添削してもらうとより効果的です。

得点を大幅にアップする方法はないと書きましたが、大きくダウンする可能性はあります。それは「計算ミス」です。模試等で計算ミスをしたとき、計算式が合っていればマルといって今まで放置してきた人は要注意です。練習でしてしまったことは、本番でもしてしまう可能性が大いにあります。そのため試験では、計算ミスをしてしまったときに、試験時間内に気付くことができるかがポイントとなります。最初の問題での解答を、その後の問題で使用する場合は、最低2回は計算を行うことをお勧めします。また、問題の余白等、狭いところに小さな字で書いていると、ミスが起きやすくなります。あまり大きなスペースがない場合もあると思いますが、しっかりと見やすく書くことにより、ミスを回避しましょう。

最後に、直前期には試験時間を意識した練習も必要です。一つの問題で時間を浪費してしまい、時間切れのため、解けるはずだった問題に手が付けられなかったということは、絶対に避けなければいけません。試験が始まったら、まず全問題に目を通し、1問ずつそれがどういう問題かを把握することをお勧めします。1巡目は1題にかける時間を最大20分までとするなど、細かいルールをきちんと設けておき、実力を遺憾なく発揮できるようにしてください。

【国語】志望大学の過去問は本番を想定して解く

直前期に入ったら、文章の読み方・解答の書き方を確認しましょう。大学によって出題の仕方にばらつきがあります。受験する大学の過去問をもう一度丁寧に分析し、対策を練ってください。共通テスト対策ですでに十分に知識を増やしたと思いますが、それらの知識をうまく活用できるようにするために、たくさん過去問を解きましょう。

志望大学の過去問を解くときは、本番を想定して臨みましょう。文章のどのあたりでつまずきやすいか、満点を取るには記述ポイントをどのくらい盛り込めばよいか、最初の大問を解き終えた時点で何分経過しているか、全問解き終えて何分余るか、など具体的に確認して戦略を立てていきましょう。解き終えたら自己採点し、点数化することも忘れずにやってください。記述問題はY-SAPIXや学校の先生などに添削してもらい、アドバイスを受けるとよいでしょう。

〈現代文の勉強法〉

2次試験では主に評論が出題されますので、評論の対策を重視しましょう。

現代文の場合、作成した解答が解答例と似ていることは古典以上にまれです。適切な解答かどうかの確認が難しいことが予想されますので、解答解説をよく読み、採点ポイントを確認するようにしましょう。自分の解答と複数の解答例を見比べることをお勧めします。

〈古典の勉強法〉

単語や文法など基本事項の確認をしましょう。基本事項だけざっと確認するのもよいですし、受験する大学の過去問を解きながら、出てきたものを確認するのもよいでしょう。一通り解き終えたら、答え合わせをして、解答解説をよく読みましょう。現代語訳や書き下し文にも目を通してください。抜けている知識を発見できることがあります。解答解説まで確認したら、もう一度文章・設問・解答例を見直してから次の演習へ進んでください。

【物理】時間内に正確に答えを出す能力を磨こう

入試では
①「公式や法則の理解」
②「時間内に正確に答えを出す能力」
が求められます。

この時期ですから、①は多くの人がほぼ完成に近づいている状態だと思います。本番の直前にすべての範囲を解き直すことはできませんから、自分の弱点としている分野などに絞って復習するとよいでしょう。また、法則や公式を本当に使いこなすためには、どのように導かれたかを理解しておく必要があります。普段当たり前のように利用している公式の成り立ちが説明できないと思ったら、教科書やサブテキストなどを見て確認しておきましょう。

試験本番では特に②が重要です。物理では、計算ミス、状況設定の捉え間違い、正負が逆などさまざまな要因で不正解となることがあります。演習時に不正解となった問題に対し、「たまたま間違えたけど、理解していたことだから大丈夫」と考えてはいけません。「なぜその問題を間違えたのか」を明確にしてください。間違えた理由を捉え、次回は同じ過ちをしないように心がけます。そうしていくうちに、だんだんと得点が安定してくるでしょう。

また、志望校の過去問を解く際には、ただ単に答え合わせをするだけで終えないようにしましょう。問題数、難易度、計算量、解答形式などは大学によってさまざまですから、過去問演習を最大限に生かせば「戦略を立てて本番での自分の行動を変える」ことができるようになり、②により磨きがかかります。具体的には例えば「このペースだと時間が足りなくなるから、次の問題に進もう」「前半の問題でこんなに計算が多いことはあまりないから、計算ミスしているかもしれない」「後半の問題は難しいことが多いから、あまり深入りせずに前半の見直しに時間をかけよう」などと臨機応変に対応できるようになります。過去問演習をする際には、自分に合った戦略を立てることを意識するとよいでしょう。

【化学】解答→分析→補強を地道に繰り返そう

〈まずは共通テストの結果に基づいた冷静な自己分析と弱点補強を〉

共通テストを終えたら2次試験対策をすぐに始めます。まずは共通テストの自己採点結果を冷静かつ客観的に分析しましょう。化学という科目は、得意か不得意かの二択で捉えてはいけない科目です。いくつもの比較的独立した分野に分かれており、その独立した分野ごとに得意や不得意があるわけです。ゆえに点数が取れていないのであれば、「弱点分野が多くある」と置き換えて認識しましょう。

さらにそれらの弱点分野を、①最低限の知識をもっていなかった、②初歩的なレベルの問題ができなかった、③単なる取りこぼし、④時間配分を間違えた、などに分類し、優先順位を決めて個別に対策をしましょう。自己分析に自信がなければ、Y-SAPIXのインストラクターや講師に積極的に相談してください。

〈弱点補強後の次の学習は〉

2次試験までの残り1カ月は、最高難度の問題を解かずに、基礎事項の確認ができる、すでに解いた標準的な問題を解き直しましょう。

また問題を解く際、解答時間を強く意識し、その問題を何分で解くべきか、そして解答にたどり着けなかった場合、何分でいったん止めるかの制限時間を決めてから臨むようにします。制限時間が来てしまった場合、解答解説を大まかに読み「自分が正しく考えることができていたか」を確認し、その自己分析に自信がなければ、講師に相談しましょう。そして、足りない考え方を確認し補強します。最後にそれらの解答にたどり着けなかった問題をまとめて、数日後にもう一度解きます。これを地道に繰り返します。

化学は必要とされる基礎知識が比較的少ないので、考え方の流れを正しく理解でき、基礎知識を互いに関連づけることができれば、得点が急上昇します。そして結果に偶然はなく、正しい努力が報われる科目です。落ち着いて試験に臨めば大丈夫です。

【生物】マーク式から頭を切り替え、表現力を強化

共通テストが終わって真っ先にすべきことは、「共通テストの頭」から「個別試験の頭」に切り替えることです。共通テストの結果に一喜一憂しないことももちろんですが、勉強の方法を「マーク式」から「記述式」へ切り替えることが大切です。2次試験では論述問題が加わります。また、難関大学ほど問題文が長くなります。これらを念頭に、読解のスピードアップと論述練習による表現力の強化をしていくことになります。

ともあれ、まず直前期にやるべきことは知識の確認です。考え方や仕組みの理解は忘れにくいですが、名前が出てこないことはよくあります。テキストやノート、図説など自分が一番見慣れた資料で見直し、重要事項をチェックしましょう。その際に、単語の意味や他の知識との関連性など、その単語に関係する情報を思い返してください。

次に当日の戦略を考えましょう。生物は解答に時間がかかる科目です。時間配分は物理・化学選択よりシビアになりますので、2科目の解く順番や時間配分を綿密に計画してください。過去問で時間を計りながら解く練習を繰り返し、時間感覚を養っておきましょう。

例えば、問題文が長文の場合、すべて読んでから問題に取りかかると時間のロスにつながります。まず設問を確認してそれに必要な問題文の前後を読む、最初から読み進め下線や空欄が来たら設問を読むなど、自分のやりやすい方法を確立しましょう。

そして、過去問を解いたらすぐ見直しをしましょう。知識の抜けはもちろん、論述の書き方やスピード、時間戦略、心理状態など失点の原因はさまざまです。解いているときの状況を思い出し、その場で原因の分析をし、対策を立てて次に活かしてください。

入れるべきものは頭に入っています。後はいかに出すかです。最後まで気を抜かず、諦めずにゴールを目指して邁進してください。

【日本史】少しでも多くの論述問題をこなす!!

2次試験では多くの論述問題が出題されます。論述力は、演習量に比例して身に付くものです。そのため、少しでも演習をおろそかにすると、これまで蓄積してきた論述力が衰える可能性があります。そこで12月いっぱいまでは(共通テスト直前でも)、最低週に1題以上の論述問題を解くことをお勧めします。このとき、何も見ないで書けるのであればそれに越したことはありませんが、中には問題を見て何を書けばよいのかまったくわからない状況に陥る受験生もいるかと思います。そのような状況でだらだらと答案を作成しても意味はありません。もし論述作成に慣れていないのであれば、教科書やノートを確認しながら書くことも効果的です。その際、用語の意味や事実の因果関係を確認しながら、文章を書く癖をつけておいてください。こうした基本知識の一つ一つの確認は、2次試験の論述対策だけでなく、共通テストや私立大学の正誤対策にも必ずプラスになります。

作成した論述問題の解答は、できる限りY-SAPIXの講師に添削してもらいましょう。自分でできていると思っていても、自分の答案に対しては甘く評価してしまうものです。講師に添削してもらい、客観的な目で文章を評価してもらうことで、答案の欠点が明らかになってきます。また、添削に対するやりとりの中で、知識に関する理解の誤りにも気が付くことができます。添削を受けることは、日本史の知識を深め、論述の技術の向上に大きな役割を果たします。

以上のように2次試験の論述対策では、演習量を多く積むことが大切です。試験までそれほど時間はありませんが、論述の作成を少しでも多くこなし、知識の蓄積や論述技術の向上を目指していきましょう。

【世界史】完成度の高い答案作りを目指そう

2次試験の世界史を受験するにあたり、多くの受験生が心配しているのは論述問題への対策でしょう。字数の多寡、扱われるテーマなど、志望校によって傾向が異なる以上、それぞれの志望校に沿って対策を講じる必要はありますが、留意すべきポイントは共通しています。

論述問題を解く上で重要なことは、

①「書くべき内容を正確な知識として蓄えていること」
②「問題に求められている要求に沿って答案を作ること」

の2点です。まず①については、世界史では歴史的事項を覚えていることが大前提になります。求められるレベルとしては、Y-SAPIXのテキストにある「知識の再確認」ならば、19問以上安定して正解できることが目安になります。もし、この点に不安があるようであれば、「知識の再確認」の復習や、基本的な一問一答形式の問題集を繰り返すことが依然として有効です。

知識の蓄積とは別に、②に関する訓練も必要です。多くの受験生が、「論述問題で何を書いたら良いかわからない」という悩みを抱えています。その解決には、添削指導を受けることが最も効果的です。まずは、教科書や資料集、用語集などを使用しても構わないので、自分なりに答案を作成します。場合によっては、まとまった分量を書くことに慣れる必要があります。そして、完成した答案をY-SAPIXの講師に添削してもらいましょう。その上で、自身の答案の良かった点はどこか、どうすればより良い答案になるのか、その都度自分でしっかりと把握し、向上を図ることが必要です。

本番当日に向けて今なすべきことは、現時点での得点に一喜一憂せず、過去問演習をたゆまず繰り返すことです。個々の理解不足を解消しながら、完成度の高い答案を作る努力を積み上げていきましょう。

【地理】不得手な部分の克服を最優先事項に

2次試験対策に移る前に、必ず共通テストの復習を通して自分の弱点を見直し、重点的に学習すべき分野を決めましょう。地理の論述問題の出題傾向は多岐にわたります。気候や鉱工業、民族問題など自然や人文の特定の事象についての問題、世界の諸地域の地誌、そして地形図や地図の読図の問題など、出題パターンは多様で、昨今の時事も取り上げられることがあります。本番まで1カ月を切った時期では、過去問を5年分以上解いたり、模擬試験などで出題形式に慣れたりしているかもしれませんが、共通テストの復習を通して見つけた不得手な部分を克服するのが最優先事項です。

2次試験は一つのテーマについて一つの大問で200字以上の長い論述を課す大学と、一つの大問で30字から100字程度の小問を複数解答する大学とに分けられます。前者は大阪大学や筑波大学、後者は東京大学や京都大学などが挙げられます。また一橋大学のように、100字程度の論述問題の小問が複数ある大問を出題する大学もあります。どの大学であっても1,000字程度かそれ以上の字数を限られた時間で書かなければならないため、原稿用紙や解答用紙に書く訓練が欠かせません。志望大学の試験時間に合わせて、解答を的確にまとめる練習を繰り返しましょう。書いた文章は講師に見せて添削してもらうとより効果的です。

私立大学を地理で受験する方は、記号の選択や正しい語句が解答の中心となります。難関大学はどこも出題数が多いため、ある問題で戸惑うと焦って他の問題の解答にも悪い影響を及ぼすこともあります。そうならないように、繰り返し志望大学の問題を解いて出題傾向をつかみましょう。また地形図を毎年出題する大学を受験する方は、他の大学の入試問題も参考にし、短時間で的確な読図が可能になるよう訓練しておきましょう。

この記事は2020年12月21日に刊行された『Y-SAPIX JOURNAL』2020年1・2月号に掲載された記事のWeb版です。
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