2023年度 慶應義塾大(医・経済・商)・数学
〇医学部
例年通り、大問4つの出題でした。近年は易化傾向が続いており、今年は昨年よりも更に易化しました。分量は昨年と同程度であり、本学部の過去問へ対応できるよう準備を重ねてきた受験生であれば、余裕を持って解き進めることができたと考えられます。大問ごとの難易度の差は小さいものの、要求される計算量にはある程度のばらつきがあります。したがって、速く正確に解く能力が高い受験生ほど有利になるセットであったと言えます。
第1問
独立な(1)~(3)からなる小問集合です。
昨年よりも小問が1つ減りました。いずれも容易ですので、満点を狙うべきでしょう。
第2問
反復試行の確率についての問題です。
典型題な上に計算量も多くないので、確実に得点したい大問です。
特に(1)~(4)は完答必須でしょう。
(5)は$${「a_4>b_4」}$$を直接考えるのではなく、AとBの対等性に注意しながら$${「a_4=b_4」}$$のケースを考えるのがポイントです。
本学部の受験生であれば、(5)を的確に扱えたかどうかで差が付くでしょう。
第3問
曲線$${y=1/x^2}$$を題材とする、極限と微積分の総合問題です。本学部の出題としては穏やかな部類です。(1)~(3)は解法に迷うところは特に無いでしょう。鋭角三角形となる条件を求める(4)、面積比を求める(5)は、最適な扱い方をその場で選択できるかで差が付きます。「解決すればよい」で済ませるのではなく、「制限時間内で解決する」ことを意識する実戦的な訓練も重要なことが分かります。
第4問
互いに接する複数の円についての問題です。要求される処理量が明らかに第1問~第3問と比べて多いので、速く正確に計算する力の差が大きな得点差に繋がります。その意味で、本問は「合否を分ける1題」と言えるでしょう。
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〇経済学部
例年通り、大問6つの出題でした。第1問~第3問がマーク式、第4問~第6問が記述式である点も例年通りです。ハイレベルな出題から易化した昨年と同程度の難易度でした。
分量は昨年よりも減少しましたが、「80分で6題」という制限時間の厳しさは相変わらずです。確固とした数学力を前提に、「取るべき問題」と「取り組まなくてよい問題」を正確に見極められるよう、入念な過去問研究が欠かせません。
第1問~第3問
第1問は、独立な(1)(2)からなる小問集合です。
第2問は数列(漸化式)、第3問は主に確率からの出題でした。
なお、第3問は「データの分析」の内容を一部含んでおり、難易度こそ大きく異なるものの、2年連続での出題となりました。本学部を目指す場合は、「データの分析」を深いレベルで学習することが必須です。
第4問
指数・対数と微分法の融合問題です。
(1)(2)は実質的にlogと関係なく、2本の条件式からなる定義域の上で予選決勝法を行う問題です。予選決勝法は学校などでは習わないことも多く、手薄な受験生にとっては扱いづらく感じられたかもしれません。
Y-SAPIXでは高2の春に「順像法・逆像法」を体系的に学び、その中で予選決勝法を紹介しています。
第5問
空間座標と空間ベクトルの問題です。
(1)~(3)は内積や直線のベクトル方程式を用いる計算問題なので、最低限の図さえ描けば処理できます。
一方、立体の体積を求める(4)では図形を正確に把握する必要があり、限られた時間内で扱うのは大変でしょう。制限時間を考えると、(1)~(3)がしっかり取れていれば問題ありません。
第6問
3次関数を題材とする定積分の問題です。
(1)は定数$${a}$$が一見複雑に定義されていますが、計算そのものは至って単純です。(2)の問題文で与えられている積分公式も、十分に学習できている受験生にとっては見覚えがあるはずです。
第4問~第6問の中では本問が最も取り組みやすく、合格ラインに届く上では是非とも完答したいところです。
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〇商学部
例年通り、大問4つの出題でした。近年は易化傾向が続いており、昨年よりもやや易化しました。しかし分量は昨年と同程度であり、「70分で4題」という制限時間の厳しさは相変わらずです。なお、昨年まで見られた「経済と関係のある事象」についての出題は、今年はありませんでした。
第1問
独立な(1)~(3)からなる小問集合です。
いずれも取り組みやすいので、手早く完答することを目指しましょう。
第2問
三角関数と微積分の融合問題です。
典型的な標準問題なので、確実に得点したいところです。
第3問
ベクトルと数列の融合問題です。
ベクトルを含む漸化式を元にして点の位置を類推する内容となっています。ほとんどの受験生にとって類題の経験が無く、今回のセットでは最も手が付けづらい大問でした。
第4問
サイコロの目に応じて球のやりとりを行う問題です。
与えられた文章から状況を把握して立式さえできれば単なる数え上げに帰着されますが、本番の緊張感の中で適切に処理することは容易ではないでしょう。その意味で、最も差が付きやすい大問であったと考えられます。