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学習指導要領の改訂で英語学習はどう変わるのか 第2回

こちらの記事は「学習指導要領の改訂で英語学習はどう変わるのか 第1回」の続きです。

日本を取り巻く国際的な状況の変動を背景に、学校教育における英語教育改革が加速しつつあります。環境が大きく変わろうとする中、これから求められる英語力とはいったいどのような力なのか、高校受験のSAPIX中学部から大平聡介先生、大学受験のY-SAPIXから北川貴志先生の、それぞれ英語科講師が、英語教育の「現在」と「今後」について語り合いました。

(本記事の取材は2020年6月29日に行われました)

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入試制度が変わっても英語力の本質は不変 どんな問題にも対応できる真の力を

――大学入試、高校入試の現状について、どのように捉えていますか。

北川 2021年度から「大学入試センター試験(以下、センター試験)」に代わって「共通テスト」が実施されます。いわゆる英語4 技能「読む・聞く・書く・話す」のうち、「スピーキング」と「ライティング」は外部検定試験を活用する予定でしたが見送られ、共通テストでは「リーディング」と「リスニング」が実施されます。

大平 センター試験には、発音問題、アクセント問題、文法問題、並べ替えによる英作文問題と、バランス良くさまざまな要素が入っていました。それに対し、共通テストでは発音、アクセント、文法などの問題は出されません。「リーディング」と「リスニング」の配点も、センター試験では4対1だったものが、共通テストではどちらも100点満点、つまり1対1になります。このことからも、どのような力を問いたいのかが見えてきます。

北川 大まかに言えば「リーディング」も「リスニング」も、情報をつかみ取り、概要や要点を把握する力を問うものです。新学習指導要領では、知識そのものではなく、知識を使っていかにコミュニケーションを取ることができるかが問われます。リスニング問題の場合、例えばセンター試験ではAさんとBさんの会話を聞き、このせりふに続く内容を答えなさいという問題が、共通テストでは、Aさんは何を伝えたいのかといったような問い掛けに変わります。

大平 高校入試への影響では以下のようなことが想定されます。2006年からセンター試験にリスニングが導入されると発表を受け、2003年にはトップクラスの進学校が入試にリスニング問題を出しました。3年後に大学入試を迎える世代だからです。大学入試で制度や出題傾向が変わると、必ず高校入試や中学入試にも影響が出ます。今回、いわゆるアウトプットが重視されることになったので、さまざまな高校が入試でアウトプットの力を試してくると思います。

先ほど話が出た自由英作文は、自分の言いたいことを発信するアウトプット力を問うものですが、そうした問題は既に高校入試でも出ています。例えば、都立日比谷高校では「あなたがこの登場人物の立場だったらこの人に対してどんな手紙を書きますか」という問題が出ました。登場人物の気持ちになって自分の言葉で手紙を書くことはまさにコミュニケーションそのものです。

北川 センター試験が共通テストに変わることで、確かに問われる要素が変化します。しかし、国公立大学の二次試験や私立大学の一般試験は恐らくそれほど変わらないでしょう。入試制度が二転三転し、今年度の受験生は気の毒ですが、あえて言えば、英語そのものが変わるわけではありません。この点はぜひ、肝に銘じておいてください。

大平 私も、われわれが教えるべきこと、つまり生徒たちが学ぶべきことは、基本的には変わらないと思っています。たとえ要素のウエートが変わったとしても、「読む・聞く・書く・話す」は揺るぎません。それだけに、どんな問題が出たとしても、しっかり力が出せるよう取り組んでいくということに尽きると思います。

北川 特に難関大学を目指すのであれば、勉強すべきことは全く変わりません。仮に東大を受験するなら、東大の二次試験でしっかり点数が取れる勉強をすることがまず必要です。その対策をしているのであれば、共通テストの内容がいかに変わっても対応できます。

新学習指導要領には、英語はコミュニケーションのための道具という考え方が強く反映されています。単純にコミュニケーションを取るのであれば、単語を一つ二つ使って身振り手振りで示しても、意思の疎通ができることもあります。しかし、それでOKかといえばそんなことはないわけで、きちんと文法も理解しないといけないですし、単語も正確に書いて正しく発音しないといけません。

そうした観点に立てば、学習指導要領がいかに変わろうが、教える側は正しい英語を教え、学ぶ側はそれをきちんと学ぶことが重要です。その上で学んだことを状況に応じて正しく使えばいいわけです。これらのことを考え併せると、英語を学ぶ本質は変わらない。私はそう捉えています。

(第3回へ続く)

英語特集号表紙

本稿は『SQUARE×Y-SAPIX JOURNAL 特別編集号 どう変わる?どう学ぶ?英語教育のこれから』からの転載になります。
この記事の他にも海外の大学に進学することについての記事や、各高校の英語教育についてまとめた記事が掲載されています。
現在この冊子について、無料進呈中です。ご要望の方はこちらからご連絡ください。


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