2023年度入試の選抜方法と新課程入試
昨年に引き続き、共通テストの
追・再試験は本試験の2週間後に実施
2021年度の共通テストは特例追試験を含めて計3回実施されましたが、2022年度は本試験を1日程で行い、追・再試験をその2週間後に実施しました。2023年度入試も昨年度と同様、本試験と追・再試験を2週間間隔とし、2020年度までの1週間間隔から延長する形で、新型コロナウイルス感染症等に配慮した日程となっています。
追・再試験が本試験の2週間後に設定されたことに伴い、大学入試センターから大学への個人別成績提供の期日も、昨年度と同様2020年度以前よりもやや遅めになりました。
また、6月3日付で文部科学省から公表された「令和5年度大学入学者選抜実施要項」では、昨年度同様、個別学力検査に関し、新型コロナウイルス感染症等に罹患した受験生の受験機会を確保するため、
・追試験の設定
・追加の受験料を徴収せずに、別日程への受験の振替
のいずれか一つの方策を講ずるよう大学側に求めており、文科省は各大学の措置を同省のHPで周知するとしています。
入試不正対策がより具体的に
選抜実施要項には、2022年度の共通テスト問題流出事件を受け、受験者の不正行為防止に向けての取り組みが具体的に記載されました。
①不正行為に該当する行為及び罰則について、募集要項等において周知すること。
②受験者の所持品について、試験場に持ち込めないものや使用を禁止しているものを試験時間中に発見した場合の取扱いなどを募集要項等で明示しておくこと。
③試験室内の巡視を行う際、巡視時に注意を要する観点(例えば、手の位置、受験生の目線等)を踏まえ、監督者等に周知しておくこと。
など、昨年度よりも具体的な記載が大幅に増え、場合によっては警察に被害届を提出することも想定するなど、厳格に対処する姿勢を示しています。
これに基づいて、大学入試センターも6月10日付の「令和5年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項」とともに公表された「大学入学共通テストにおける電子機器類を使用した不正行為の防止策について」の中で、スマートフォン使用禁止の厳格化や監督態勢の強化について、より具体的に言及しています。
一橋大で約70年ぶりの改組
2023年度入試では、国・公・私立大を問わず、データサイエンス系の学部・学科等の新設が多く見られますが、その中でも注目されるのが一橋大です。
一橋大では、2023年4月に「ソーシャル・データサイエンス学部・研究科(仮称)」の新設が構想されています。これは、1951年に法学社会学部を法学部、社会学部に分離して4学部体制になって以降、約70年ぶりの改組となります。
一橋大(https://juken.hit-u.ac.jp/sds/about.html)は、新設の目的として、伝統的に強みがある社会科学と、数理・統計教育に基づくデータサイエンスを融合させることにより、社会における情報技術の進展などに貢献できる人材を輩出することとしています。また、他学部よりも、より汎用性の高い理系的なデータサイエンスの技術と、それらを活用する上での倫理的・法的な問題などを、より体系的に学ぶことができるということです。
募集人員は、学校推薦型選抜5名、一般選抜前期30名、後期25名の合計60名で後期に比較的多く配していることが特徴です。これに伴い、商・経済学部で17名、法学部で11名、社会学部で15名、合計60名の既存学部からの定員減が予定されています。
新学部の入試方法の上での特徴は、
・文系、理系いずれの受験生も受験可能
・前期の2次試験で地歴に代えて総合問題出題
・他学部よりも2次試験の数学の配点比率が高い
といった点が挙げられ、情報系志望の理系の受験生の出願先候補にもなることが考えられます。特に後期は難関大志望の理系の受験生にとって数少ない募集枠の一つとなるため、高いレベルの競争になりそうです。また他学部に比べ前期の募集人員が非常に少ないため、現時点では未公表の2段階選抜予告についてどのように公表されるかも注目されます。
主要国公立大学の2023年度入試変更点
現時点で明らかになっているものの中で、受験生に少なからず影響を及ぼしそうなのが、東京外国語大の変更です。共通テストの数学が1科目から2科目となり、配点も倍になります。一方、共通テストの外国語の配点は50点減り、より数学の負担が増す形になります。
横浜国立大は、経済学部前期で共通テスト選択科目に理系型5教科7科目の選択肢が追加され、同学部は前・後期ともに理系の受験生も出願できる形となりました。また、理工学部では前・後期それぞれ、学科やEP(教育プログラム)単位で2段階選抜が予告されます。近年の志願者数を見ると、前期の予告倍率である約6倍を超える学科・EPは見当たりませんが、後期の約8倍を超えるところは散見されますので、出願には注意が必要です。
医学部医学科では、岐阜大が後期の募集を廃止します。2022年度の募集人員は10名と多くはありませんが、これで全国50校の医学部医学科のうち後期募集を行うのは16校のみと、3分の1を切る形となりました。このほか、入学定員、募集人員の変更が散見されますが、増員を申請中の大学もあり、まだ確定していない場合も少なくないので今後の情報に注意が必要です。
2022年度の共通テストは、科目によっては事前の予想を超える大幅な平均点の低下が見られました。3年目の共通テストについては、科目間の平均点差は縮小の方向に向かうと思われるものの、平均点の水準は未知数です。
大学入試センター試験の場合は、1年目より2年目、2年目より3年目の方が全体的な平均点は下がり、それ以降3年目と同様の約6割という水準で定着しました。共通テストに関しても、2年目よりさらに平均点が下がることも十分あり得ます。共通テストがどのような難易度になっても対応できるよう、しっかりとした準備をしておきましょう。
各大学の新課程入試(2025年度入試)について
現高1生が大学入試を迎える2025年度入試から新学習指導要領に対応した新課程入試となりますが、徐々にその内容が明らかになっています。現時点では共通テストで課される科目・試験時間が公表されており、その主なポイントは、
・「情報(60分)」の追加
・「地理歴史・公民」の科目再編と選択可能な組み合わせ
で、これに対し各大学がどのような対応を取るかが注目されます。
入学者選抜における変更等については、受験生の準備に大きな影響を及ぼす場合には、2年程度前には予告・公表することが各大学に求められる「2年前予告ルール」があります。したがって、新課程となる2025年度入試に関しては、2023年3月末までにどのような科目で新課程入試を行うかを公表しなければなりません。
現時点で公表している大学は少数ですが、
・「情報」は、共通テストで課し、2次試験では課さない
・「地理歴史・公民」の6科目のうち、「地理総合、歴史総合、公共(から2科目の問題を選択解答)」については採否が分かれるが、「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」の5科目は選択可
がおおよその状況となっています。
共通テストの地歴・公民に関しては、現在は地歴A科目や、現代社会、倫理、政治・経済など単位数の少ない科目の選択を認めない大学があったり、
一部のみ認める大学があったりと選択可能パターンが数多くあり、受験生としてもどの科目を選択すればよいか迷いがちな状況です。しかし2025年度以降は、2科目選択する場合の条件はあるものの、「地理総合、歴史総合、公共(から2科目を選択)」以外を選択科目にしておくことで、ほとんどの国公立大に出願できることになりそうです。
なお、新たに「情報」を60分の試験時間で実施することを踏まえて、新課程共通テストの理科について、現行では別の時間帯で実施している「理科①」「理科②」を同時間帯に並行して実施する案が大学入試センターから出ています。
新課程共通テストについては、通例のスケジュールだと、各科目の素点は来年の6月、時間割は再来年の6月に大学入試センターから公表される見込みです。したがって、各大学の新課程入試科目の配点が公表されるのは、来年の6月以降になるとみられます。大学によって公表の時期、公表内容がさまざまであることが予想されますので、注視しておく必要があります。
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