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【最新入試動向】2024年度入試の選抜方法と2025年度の医学部入試

大学入学共通テスト(以下、共通テスト)4年目となる2024年度入試は、新学習指導要領に基づく大学入試(以下、新課程入試)がスタートする2025年度入試の前年でもあります。現時点で判明している2024年度の国公立大の主な変更点、および2025年度の国公立大医学部医学科の共通テスト入試科目について見ていきます。

引き続き、共通テストの追・再試験は
本試験の2週間後に実施

文部科学省から6月に通知された「令和6年度大学入学者選抜実施要項」では、新型コロナウイルス感染症の影響が一部残るもの等を除き、コロナ前の形に戻すことを基本とするとしています。これに伴い、同実施要領から新型コロナウイルス感染症等に罹患した受験生の受験機会の確保などについての項目が削除されており、また、国立大学協会や公立大学協会の「2024年度入学者選抜についての実施要領」からも新型コロナウイルス感染症対策に関する項目が削除されていることから、各大学の個別学力検査の追試験は実施されなくなる見込みです。ただし、共通テストの試験日程に関しては、追・再試験を本試験の2週間後に実施するという、2022・2023年度の日程を踏襲しています。

東京工業大に女子枠新設

昨年6月、文部科学省から通知された「令和5年度大学入学者選抜実施要項」において、「多様な背景を持った者を対象とする選抜」についての項目が新設されました。そこでは入学者の多様性を確保するため、入学志願者の努力のプロセス、意欲、目的意識等を重視し、評価・判定する入試方法を工夫することが望ましいとされ、対象例として、「理工系分野における女子」が挙げられました。
 名古屋工業大では従前より女子枠を設置しており、また名古屋大工学部では文科省の通知に先立って2023年度の学校推薦型選抜に女子枠を新設することを明らかにしていましたが、富山大、島根大でも同年、女子枠を新設しました。2024年度にはこの流れが加速し、東京工業大の他、多くの国公立大で女子枠が設置されることになります。
 その中でも特に東京工業大の女子枠は規模が大きく、2024年度には全募集人員の約6%、2025年度には約14%が女子枠の募集人員となります。女子枠志望者は一般枠との併願が可能なため、女子にはチャンスが広がった形になりますが、女子枠と一般枠では選抜方法が異なるため注意が必要です。
 また、2022年度に奈良女子大に工学部が新設されたのに続き、2024年度にはお茶の水女子大に共創工学部が設置され、理系の女子受験生の選択肢がさらに拡大することになります。

2024年度
国公立大入試の主な変更点

医学部医学科では、東北大、山形大、山梨大、金沢大、浜松医科大、岐阜大、奈良県立医科大、愛媛大、鹿児島大などで変更があります。特に2次試験の国語が廃止になる山形大(前期)、新たに英語が課される山梨大(後期)、学科試験を廃止し小論文を課す奈良県立医科大(前期)や、2段階選抜の予告倍率が大幅に縮小される岐阜大(前期)の変更は、受験生の出願動向に少なからず影響を与えることになるでしょう。
 2024年度入試の特徴の一つに、2023年度に続くデータサイエンス系の学部・学科の新設が挙げられます。日本で初めてデータサイエンスを体系的に学べる学部として設置されたのが2017年の滋賀大。その翌年に横浜市立大に設置されて以降、徐々にデータサイエンスとして独立した学部・学科を設置する流れができました。2023年度にも一橋大、名古屋市立大などに新設されましたが、2024年度は宇都宮大、千葉大、お茶の水女子大の他、富山県立大、下関市立大、高知工科大など、地方での設置も目立ちます。現在、政府は理系人材、デジタル人材の育成を掲げた各種政策を進行しており、その流れを受けての動きと見られますが、データサイエンスを標榜する学部・学科でも、大学によって学べる内容は異なります。また文系型、理系型いずれでも受験できる一橋大型の大学もあれば、千葉大のように理系でないと受験が難しい大学もあります。志望校として検討する場合は、卒業後に想定される進路も含め、あらかじめよく調べておきましょう。

2025年度国公立大医学部
医学科の共通テスト入試科目

 新課程入試の初年度となる2025年度に関しては、各大学から入試教科・科目が既に公表されており、配点についても多くの大学が公表しています。ここでは、国公立大医学部医学科一般選抜の共通テストの入試科目のうち、2つのポイントについて見てみます。

①地歴公民の選択可能科目

 国公立大医学部医学科を受験する場合は、東京医科歯科大後期を除き、地歴公民から1科目選択する必要がありますが、現行の共通テストでは、地歴公民の選択科目は10科目あり、大学によって4種類の選択可能パターンがあります。新課程共通テストでは選択科目が6科目となり、選択可能パターンは、「地理総合・歴史総合・公共から2つを選択」という科目を選択可能とするか、しないかの2種類に絞られます。50校のうち約6割の31校が選択不可としていますので、この科目以外を選択科目とした方が、志望校の選択肢が多くなります。

②「情報Ⅰ」の配点

 共通テストの情報Ⅰの配点は100点で、国公立大医学部医学科出願に必要な「6教科8科目(外国語、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・B・C、国語、理科2科目、地歴公民1科目、情報Ⅰ)」の合計1000点満点の10%を占めています。
 情報Ⅰを課すかどうかも含め、大学毎に入試教科・科目・配点等が定められますが、50校全てが共通テストの情報Ⅰの受験を必須としています。そのうち現時点で配点を公表しているのは約7割の34校です。
 公表されている各大学の情報Ⅰの配点のうち、約10%の配点としているのは4割以下にとどまっている一方、約5%以下に設定した大学は、得点化しないことを明らかにしている北海道大、徳島大、香川大の3校を含め約半数を占めています。なお、2次試験で情報を課す大学はありません。
 情報Ⅰ導入初年度は、浪人生への配慮もあって合否判定への活用には消極的な大学が多いといえそうですが、2年目となる2026年度以降は変更される可能性があります。情報Ⅰを過度に恐れる必要はないと思われますが、気を抜くことなく、学校での学習を中心にしっかり準備をしておきましょう。

▼参考資料はこちら

最新情報は各大学ホームページを確認してください。

2024~2025年度入試 東京工業大募集人員
理工系学部に女子枠が設置されている国公立大
2024年度入試 主要国公立大変更点(2023年7月時点)
2024年度入試 主要国公立大変更点(2023年7月時点)
国公立大医学部医学科の2025年度共通テスト
国公立大医学部医学科の2025年度共通テスト

この記事は2023年8月23日刊行『Y-SAPIX JOURNAL』2023年9・10月号に掲載された記事のWeb版です。


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