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【解法解説】2024年度 京都大学 世界史

2024年度(令和6年度)の京都大学(前期)の世界史について、現役生対象の大学受験塾Y-SAPIXが徹底分析しました。


京大世界史は例年、大問4題で構成されており、出題範囲は東洋史(東アジア史、イスラーム史など)と西洋史(欧米史)に分かれています。各大問の出題形式は以下の通りです。

2024年度も例年通りの構成で特に変化はありません。 

◆記述・短文論述

第2問はマンチュリアの歴史とムスリムの聖地に関するリード文から、第4問は古代から近代にかけての黒海周辺の歴史と共通言語に関するリード文から出題されました。第4問(18)のような時期と地理的な知識から推測させる問題もみられるものの、全体としては細かい知識を問う難問はみられず、京大受験生であれば対応できる標準的な難易度でした。

◆長文論述

第1問と第3問の長文論述については論述問題としては定番と言えるテーマであり、本番までにしっかりと論述演習を積んできた受験生にとっては取り組みやすい内容だったのではないでしょうか。その分他の受験生と差が付きにくいともいえます。

第1問

「16世紀末~19世紀末にいたる朝鮮と中国の関係変化」がテーマです。朝鮮と中国の関係が解答の軸になりますが、両国の関係変化を説明する上で日本の動向に関する言及は欠かせません。
書けることはたくさんありますが、京大世界史では歴史の幹となる流れを意識してまとめることが肝要です。解答を作成する前に簡単な表を作成して情報を整理しておくことで答案で求められている要素が明確化されます。

上記の表は一例ですが、このような簡易メモを基本プロットとしてそれぞれの出来事の因果関係に注意しながら答案を組み立てていけば途中で脱線するリスクも減らせるでしょう。太字は答案に必ず出したい要素です。
また、問題文にある以下のリード文も無視できません。 

「乾隆帝の70歳の誕生日を祝賀する…(中略)…その冒頭で年次を記すのに「後三こう子」(明のすうてい年間より後の三回目の庚子の年)という表記を用いている。ここには、当時の朝鮮と中国の関係の一面が表れている」

2024年度 京都大学 前期 世界史B問題 Ⅰ(一部抜粋)

年次表記に当時の清の元号である乾隆年間を使わず、明の崇禎年間を基準とした表記法で年次を記していたということは、朝鮮が明を尊んでいたことが伺われます。よく学習してきた受験生であれば「小中華思想」の理解が求められていることに気付けたはずです。
論述問題では歴史理解や記述力に加えて問題文を正確に読解する力(=出題者の意図を汲み取る力)も求められているのです。

第3問

中世のキリスト教世界がテーマです。京大では過去にもキリスト教世界を扱った問題が出題されています。
 
・「4世紀のローマ帝国とヨーロッパの中世世界の形成」2004年度
・「4~8世紀の地中海地域の政治的変化」2006年度
 
2004年度は4世紀のローマ帝国における諸政策がその後のヨーロッパ世界にとってどのような意義を持っていたのか政治と宗教の面から言及する必要があり、2006年度は地中海世界をとりまく政治的変化を統一と分裂という視点で説明させる問題でしたが、今年度の問題ではキリスト教世界が東西に分裂していく過程を論じていくことになります。

つまり、西のローマ教会と東のコンスタンティノープル教会の対立が解答の軸となり、11世紀半ばの教会の東西分裂(1054)が解答のゴールとなります。

解答の始点は明示されていないものの、ローマ教会とコンスタンティノープル教会の対立の根底に首位権争いがあることを考えるとここから書き始めるのが適切でしょう。また、問題文に「8世紀に力点をおいて、教皇領の形成と関連づけながら」という条件があるということは、カールの戴冠(800)の経緯が求められていることが読み取れます。首位権争いや聖像禁止令(726)などを通して東西教会の対立が激化し、トゥール・ポワティエ間の戦い(732)やピピンの寄進(756)などを通じてローマ教会とフランク王国の提携が深まった結果、カールの戴冠に至ります。

また、ビザンツ皇帝が聖像禁止令を発布したことにもみられるように「カールの戴冠」の背景にはイスラーム勢力の台頭があるため、イスラームの存在に一言触れておくことで答案の完成度は上がるはずです。ちなみに、一橋大学では「カールの戴冠」を扱った問題が出題されていますが、このような問題に取り組んだことのある受験生にとっては易しく感じたのではないでしょうか。

京都大学に限らず、本番ではどの時代・地域から出題されても対応できるように様々なテーマの論述問題に触れておくことが望まれます。

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