大学歴訪録 #4 法政大学
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大学歴訪録 #4 法政大学

「自由を生き抜く実践知」を掲げる
間口が広く、奥行きも深い総合大学

創立140年以上の歴史を持ちながら、ここ20年ほどで時代の変化に応じて学部を九つも新設し、急速にイメージを変えつつある総合大学が法政大学です。コロナ禍の下でスタートした新学期早々、この4月に新総長として着任した廣瀬克哉先生に、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮敏郎共同代表がお話を伺いました。

※取材は2021年4月中旬に行われました。

コロナ禍の2020年度を失われた1年にしない

髙宮 新学期が始まったばかりのせいか、今日は学生さんが多いですね。これだけ活気あふれるキャンパスを見るのは、随分久しぶりのような気がします。

廣瀬 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生した昨春以降、本学は授業のあり方を大きく変えました。かつては250名収容の大教室でも授業を行っていましたが、125名以上の講義は原則オンデマンドにしました。これに対し、実験など少人数での共同作業が必要なものは原則対面で行います。今日は対面授業が行われる最初の金曜日なので、登校してきた学生たちが多いようです。(※1)

(※1) 4月25日に東京都を対象に緊急事態宣言が発出されたことを受け、緊急事態宣言期間中は原則としてオンライン形式のみで授業を実施することとなった。

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法政大学総長 廣瀬 克哉さん 

髙宮 昨年は3月の小中高校の一斉休校や4月の1回目の緊急事態宣言など、教育界も新型コロナに振り回された1年でした。

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SAPIX YOZEMI GROUP 髙宮 敏郎 共同代表

廣瀬 確かに、私たちも学生を教室に集められない時期が相当長期に及ぶと覚悟しなければならなくなりました。とはいえ、そうした状況でも、学生たちに教育効果をしっかり積み上げていくことがわれわれ大学人の使命です。そこで、本学では「2020年度を失われた1年にしない」という強い信念の下、全教職員にこうお願いしました。「皆さんにとっては初めての経験でしょうが、本気でオンライン授業に取り組んでください。そのために必要な措置は大学側で最大限取ります」と。
 例えば、本学では法人としてのZoomとWebexのライセンスを取得。全教職員と全学生に与えられる本学の学習支援システムのIDでZoomなどにログインできるようネットワーク環境を整えました。

大学の授業は今後「オンライン+対面」に

髙宮 昨年は、弊グループでも以前から展開していたオンラインサービスの品質の向上と新しいサービスの開発に注力しました。対面授業がいかに貴重な学習機会であるか、改めて認識しました。廣瀬先生はオンライン授業と対面授業の特性をどのようにお感じになられたでしょうか。

廣瀬 対面が特に重要だと感じたのは理系の実験ですね。先生方が実験する様子を動画で公開し、それに解説を付けてシミュレートできるよう工夫してみましたが、その情報量は実際に実験に立ち会ったときの半分にも満たないと思います。技量が秀でた人の手の動きを目の前で見ることがいかに貴重な経験か、痛感しました。昨年度中盤以降、本学のデザイン工学部のスタジオワークがほぼ全て対面で行われたのは、ある意味必然だったといえます。
 逆に、オンラインの方が有効だったのは、意外にも体育実技です。体育の対面授業では、学生自身が自分の体の動きを客観的に認識するのは難しいですが、オンライン授業では、自分の動きを映像として客観視できるため、理解度が大幅に高まったようです。
 知識の伝達を目的とする講義型授業はオンデマンドの方が有効です。教員の重要な一言を聞き逃しても聞き直せるし、理解できるまで何度でも再生できます。ただし、単に講義を視聴するだけの授業は学生にとって苦痛でしかないので、講義する側にも工夫が必要です。

髙宮 将来、新型コロナが終息したとき、大学の授業は以前の形式に戻るとお考えでしょうか。

廣瀬 オンラインの有効性が確認できた以上、ほぼ全ての授業が「オンライン+対面」というハイブリッド型になるでしょう。ただ、対面の重要性も多くの教職員が身に染みて実感したので、今後は「講義をただ聴いている」というスタイルではなく、学生にいかに授業に参加してもらうか、われわれも知恵を絞っていかなければなりません。

21世紀を見据えて新たに9学部を創設

髙宮 貴学は2014年度から、創立150周年を迎える2030年に向けての「HOSEI2030(※2)」という長期ビジョンの策定に取り掛かりました。

(※2)「HOSEI2030」 http://hosei2030.hosei.ac.jp/

廣瀬 本学として初の大学憲章を制定し、2030年までに実現すべきいくつかのビジョンを掲げました。財政基盤を強化し、キャンパスの再構築やブランディング戦略を検討するなど、ビジョンの実現に向けたいくつものアクションが活発に動いています。
 この春、本学の付属中学2校に入学した生徒たちは、実は2030年度に大学4年生になります。「HOSEI2030」の策定に着手したとき、2030年は遠い未来のように感じられましたが、いよいよ視野に入ってきたのだと実感しています。

髙宮 21世紀に入り、貴学は学部数を大幅に拡充しましたね。

小金井キャンパス1

小金井キャンパス

多摩キャンパス1

多摩キャンパス

廣瀬 「HOSEI2030」に先駆け、1999年にスタートさせたのが大規模な教学改革で、それに合わせて学部数も増やしました。それまで本学の学部数は「1文字学部」「2文字学部」の6学部だけだったのですが、今では15学部を擁し、専門分野をより細分化した総合大学となっています。

かつての法政大学を構成していたのは、学部名が1文字の法・文・工の3学部と、2文字の経済・社会・経営の3学部だった。1999年以降、国際文化・人間環境・現代福祉・情報科学・キャリアデザイン・デザイン工(工学部を改組転換)・理工・生命科学・GIS(グローバル教養)・スポーツ健康が順次新設され、現在では15学部体制に改編されている。

本学はディシプリン(学問分野)ごとに分かれた従来型の法学部や文学部などに加え、人間環境学部や現代福祉学部など、現代社会が直面するテーマに対して学際的にアプローチする学部の両方を備えている大学なのです。
 この両方のタイプがあることのメリットは大きいですね。例えば、人間環境学部では環境というテーマに対して、社会学的な視点、経済学的な視点などさまざまな視点からアプローチできます。もし、自分が法学的な視点から環境への探究を深めたいと考えた場合、その学生は同じキャンパスにある法学部の、必要と思われる授業を履修することもできるのです。
 本学では、学生たちのこうした主体的かつ多様な学びを後押しするとともに、幅広い視野と柔軟な思考力を兼ね備えた人材を育成するため、「履修証明プログラム(=サティフィケートプログラム)」という制度を導入しています。

法政大学では多くの学部で授業科目を他学部に公開し、他学部生にも卒業所要単位として認定するが、テーマに即して履修した場合に認定するのが、「履修証明プログラム」制度だ。「SDGsサティフィケートプログラム」「アーバンデザイン・サティフィケートプログラム」などのプログラム(コース)が用意されている。必要な学びを終えた学生は、その旨を春と秋の申請期間内に申請すれば、サティフィケート(修了証)が発行され、就職活動などに利用することもできる。

創立150周年に向けて法政大学憲章を制定

髙宮 貴学は2016年4月1日、法政大学憲章を制定し、「自由を生き抜く実践知」という言葉を掲げられました。1999年からの現代社会の諸問題に取り組む学際的学部の新設は、まさに自由を生き抜く実践知につながるものですね。

廣瀬 本学の歴史は、1880(明治13)年に設立された日本最古の私立法律学校・東京法学社にまでさかのぼります。その創立の辞には「社会課題としての権利・自由の実現」という言葉が記されています。当時は自由民権運動華やかなりし頃だっただけに、「人々が権利と自由を享受する社会を実現するには、近代法を社会に広く浸透させることが重要であり、それを実現することで人類の進歩に貢献するのだ」という趣旨のことが書かれています。真空地帯の中で純粋科学を追究するのではなく、人間社会において社会課題を解決するための学問を普及させていく、という考え方です。この精神はその後、形を変えて「自由と進歩」という言葉として本学に受け継がれていきます。

髙宮 「自由と進歩」は貴学の校風を表す言葉でもありましたね。

廣瀬 はい。しかし、時代は変わりました。21世紀の社会はより多様化し、複雑化していて、「自由」と「進歩」は必ずしも両立するものとは限りません。また、ある人の「自由」が別の人の「自由」を妨げるものであってはならないし、明治時代に想定されていた「進歩」が、今日重視されている持続可能な発展であるという保証もありません。人が自由を享受しながら、社会全体としても進歩していくためには、それ相応の知恵や工夫が求められるはずです。そこで、そうした考え方を現代に通じるように表現し直したものを本学の大学憲章としました。詳細は本学の公式サイト(※3)にまとめてありますので、ぜひ多くの方々に読んでほしいですね。

(※3) https://www.hosei.ac.jp/hosei/daigakugaiyo/rinen/kensyo/

女子学生は全体の4割超進むダイバーシティ

髙宮 これからの地球社会を考えるとき、あらゆる組織にとって、多様性をどう受け入れていくかが重要なテーマの一つになっています。貴学では田中優子前総長の時代に女子学生の比率が高まったと伺っていますが、ダイバーシティーについてはどのようにお考えですか。

廣瀬 ダイバーシティーというキーワードは「HOSEI2030」にも掲げています。単にマイノリティーをサポートするだけではなく、多様なマイノリティーの人々と共に本学のミッションを実現していくことが重要であり、そうすることが法政大学という組織全体を強くするという認識です。人種も価値観も行動様式も異なる多様な人たちで構成されている今日のグローバル社会で、課題を発見し解決していこうとするとき、モノリシック(一枚岩)な組織では物の見方に限界がある。これからの多様な社会に貢献するためには、本学自体がダイバーシティーを包含する組織であるべきだと考えています。
 男女共同参画という観点では、女子学生の比率は全体の4割を超えています。学部や学年によっては女子が5割を超えているケースもあります。以前は男子校2校、女子校1校だった付属校も、現在は3校とも共学校に改編しました。

髙宮 私の学生時代、法政大学といえば硬派なイメージでしたから、やはり隔世の感がありますね。伺ったところによると、教職員の方たちも女性の比率が増えているとか。

廣瀬 はい。例えば、学部長は15名いますが、今年度はそのうち4名が女性です。
 また、現在グローバル教育センター長を務めているのは、理事で、副学長でもあるダイアナ・コー先生という香港出身の女性です。2019年の入学式で、当時グローバル教養学部長だった彼女は「私は外国人で、女性で、学部長です。法政大学はそういう大学です」とあいさつしました。コー先生はそのとき、本学でのダイバーシティーの風が最大瞬間風速を記録したと感じたそうですが、一方で、もう何年かすれば、これがごく当たり前になるとも語っていました。事実、そのとおりになりつつあります。

髙宮 最後に、大学受験を控えた読者にメッセージをお願いします。

廣瀬 全ての高3生は昨年から、楽しいはずの高校生活に多くの制約を受け、つらい思いをしているはずです。しかし、置かれている状況はどの高3生も同じです。カードゲームでたまたま悪い手札が配られたぐらいに受け止め、手持ちのカードで何とか勝負してほしいですね。
 本学は多彩な顔を持つ大学で、学生たちも多様性に富んでおり、入学すればこれまでに出会ったことのない人と出会えるはずです。さまざまな挑戦にとても寛容な、懐の深い大学でもあり、ドアをたたけばたたくほど、多くのチャンスと出合えます。「大学に入ったら何でもやってやろう」と考えている人は、ぜひ本学を志望してください。

髙宮 本日は貴重なお話をありがとうございました。

■プロフィール
法政大学総長 廣瀬 克哉さん
ひろせ かつや●1981年東京大学法学部第三類卒業。同大大学院法学政治学研究科修士課程修了後、1987年同大大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。同年法学博士学位取得。1987年法政大学法学部助教授、1995年同教授、2014年より同常務理事(2017年より副学長兼務)。2021年4月、法政大学総長就任。専門は行政学・公共政策学・地方自治。複数の自治体で情報公開条例・自治基本条例・議会基本条例などの制定を支援の他、情報公開審査会委員などを歴任。

■法政大学の紹介

市ケ谷キャンパス2

今回取材で伺った市ケ谷キャンパス


 法政大学の前身は、法律家・金丸鉄、伊藤修、薩埵正邦らが1880(明治13)年に設立した東京法学社です。折しも旧刑事訴訟法である治罪法が公布された年で、日本初の私立法律学校となりました。東京法学社では法律講義と共に弁護の実地訓練も行われ、当初からキャリア教育を徹底。創立者は明治政府の法律顧問であるパリ大学のボアソナード博士の門下生でもあったため、フランス法の精神である「自由と進歩」が建学の精神となりました。
 その後、大学令が発布されたことを受け、1920(大正9)年に法政大学が誕生。当初は法学部と経済学部の2学部だけでしたが、第二次大戦後、1959(昭和34)年までに6学部となりました。1999年以降は時代の要請に応じて学部を次々に新設。現在は15学部38学科と、17の大学院研究科を擁する真の総合大学として多彩な学びを提供しています。キャンパスは市ケ谷、多摩、小金井の3エリアにあり、2000年には市ケ谷に27階建てのボアソナード・タワーが竣工するなど、施設面も充実。総合大学ならではの学部を超えた学びのプログラムが用意されている、間口が広く、懐も深い大学です。

■Y-SAPIXよりお知らせ

この記事は2021年6月21日に刊行された『Y-SAPIX JOURNAL』2021年7・8月号に掲載された記事のWeb版です。
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