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数学こぼれ話#8/深掘りシリーズvol.2~「同値変形」で眺める数学~

皆さん、こんにちは。Y-SAPIX数学科では、「一歩先の理解」を目指す高校生の方々を対象に、「深掘りシリーズ」の記事を発信していきます。

今回のテーマは「同値変形」です。非常に強力な道具ですが、これを教える高校はごく稀なようです。Y-SAPIXでは高校2年生から扱い始める「同値変形」を習得し、全国の受験生と大きく差を付けましょう!


同値変形とは

同値変形というのは、簡単に言えば「数学的な言い換え」です。方程式を言い換えることもあれば、問題そのものを言い換えることもあります。次の問題を考えてみましょう。

【問題】
「円$${x^2+y^2=1}$$と直線$${y=-x+1}$$の共有点を求めるために、連立方程式

$$
\begin{dcases}{x^2+y^2}=1・・・① \\y={-x+1}・・・②\end{dcases}        
$$

を解く。②を①へ代入して$${y}$$を消去し、解くと
      $${x=0}$$ または $${x=1}$$$${・・・③}$$
③を①へ代入して$${y}$$を求めれば
      $${(x,y)=(0,1),(0,-1),(1,0)}$$」
この解答で、余分な組$${ (0,-1)}$$ が出てきてしまうのはなぜか?

基本的な同値変形

いかがでしょうか? 実はこの場合、③を代入する先は②しか許されません。このことを見るために、「同値変形」という視点を紹介しましょう。まず、復習しておくと

$${p}$$  $${\iff}$$  $${q}$$

とは

「(もし) $${p}$$ ならば(必ず) $${q}$$」と「(もし) $${q}$$ ならば (必ず) $${p}$$」

の両方が成り立つことを言います。例えば

$$
\begin{cases}{x^2+y^2}=1・・・① \\y={-x+1}・・・②\end{cases}{\iff}\begin{cases}{x^2+(-x+1)^2}=1・・・③ \\y={-x+1}・・・②\end{cases}
$$

は同値変形です。①と②から③と②を導けて、③と②から①と②を導けることが分かると思います。「①に使った式」である②をそのまま残しておくのが最大のポイントです。②を残さずに

$$
\begin{dcases}{x^2+y^2}=1・・・① \\y={-x+1}・・・②\end{dcases}{\implies}{x^2+(-x+1)^2}=1・・・③
$$

としてしまうと、これは同値変形になっていません。③だけでは、①と②を導けないですからね。改めて「元に戻れるように、使った式を残そう」を合言葉にしておきたいと思います。

では、【問題】の連立方程式を同値変形で解いてみましょう。

$$
\begin{cases}{x^2+y^2}=1 \\y={-x+1}\end{cases}{\iff}\begin{cases}{x^2+(-x+1)^2}=1\\y={-x+1}\end{cases}         
$$

$$
{\iff}\begin{cases}{x=0   または   x=1} \\y={-x+1}\end{cases}   ・・・(*)      
$$

$$
{\iff}\begin{cases}{x=0} \\y={-x+1}\end{cases}  または  \begin{cases}{x=1} \\y={-x+1}\end{cases}  ・・・(**)
$$

$$
{\iff}\begin{cases}{x=0} \\y=1\end{cases}   または  \begin{cases}{x=1} \\y=0\end{cases}                          
$$

(*)から(**)の変形を見れば、③を②に代入するのは必然です。

一方で、【問題】にある「」内の変形は

$$
\begin{cases}{x^2+y^2}=1 \\y={-x+1}\end{cases}{\implies}\begin{cases}{x^2+y^2}=1\\{x^2+(-x+1)^2=1}\end{cases}     
$$

$$
                                             {\iff}\begin{cases}{x^2+y^2=1} \\{x=0   または   x=1}\end{cases} 
$$

・・・

というように進んでしまっていて、冒頭から同値性が崩れています。与えられた連立方程式に対する「必要条件」を考えたために、$${(0,-1)}$$という余分なものが出てきてしまったのですね。
(必要条件と十分条件については#5の記事で触れています)

同値変形の威力

「使った式を残す」の原則が身に付いてきたところで、最後に演習問題を用意して記事を締め括りたいと思います。こちらは#6の記事で登場したものです。

【演習問題】
放物線$${y=x^2}$$と円$${x^2+(y-a)^2=1}$$が丁度2個の共有点を持つための、実数定数$${a}$$の範囲を求めよ。

※ヒント

$$
\begin{cases}{y=x^2} \\{x^2+(y-a)^2=1}\end{cases}                                          
$$

$$
{\iff}\begin{cases}{x^2=y}\\{y^2-(2a-1)y+(a^2-1)=0}・・・(★)\end{cases}   
$$

(★)から定まる$${y  (≧0)}$$ ごとに、$${x=±\sqrt{y}}$$が定まるので…。

それでは、次回の「深掘りシリーズ」でお会いしましょう!

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