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リベラル書籍紹介#21 『これを知らずに働けますか?』竹信 三恵子 

この連載ではY-SAPIXのオリジナル科目「リベラル読解論述研究」で使用した書籍について、担当する職員が紹介していきます。

今回は、中学3年生9月期で使用した『これを知らずに働けますか?』です。

『これを知らずに働けますか?』竹信 三恵子
(ちくまプリマ―新書、2017年)

この書籍では、仕事選び、賃金、ワークライフバランスなどを考えたうえで、労働問題から自分の身を守るための基礎知識が解説されています。


「全国労働衛生週間」というものをご存じですか?

毎年10月1日から7日まで、厚生労働省は「全国労働衛生週間」を実施しています。これは、労働者の職場環境の改善や健康管理に目を向け、労働衛生に対する意識を向上させることが目的です。職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保するため、昭和25年から毎年実施されています。

自分の身を守るための知識を得よう

ブラック企業や過労死といった言葉はニュースでも取りあげられるのでみなさんご存じだと思います。しかし、ブラック企業と診断される項目や過労死ラインが具体的にどのように設定されているのか、また、労働問題に巻き込まれたとき、法律はどこまで自分を守ってくれるのかなど、細かい知識までは知らないことも多いかもしれません。本書では、そのように知らずに社会に出ると危険な事項について詳しく記述されています。

日本社会の「課題」を浮き彫りに

本書では、近年注目されている「女性にやさしい会社」についても細かく言及されています。「女性が働きやすい」ことを売りにしている企業は最近よく目にしますが、それは男性への逆差別になるのではないか、という疑問を持つ人も少なくありません。

しかし日本の女性の活躍度の低さは国際的にも突出しています。「経済」「教育」「健康」「政治」の分野から男女格差をはかるジェンダー・ギャップ指数は、2022年の時点で146か国中116位で先進国の中でも最低レベル、アジア諸国の中では韓国や中国、ASEAN諸国と比較しても低い結果となっています。内訳を見ると日本の「教育」の順位は146カ国中1位、「健康」も63位と上位であるにも関わらず、「経済」「政治」の順位がかなり低くなっています。ここには、現代の日本社会が、主に労働やそれに伴う経済的自立の点で、女性が活躍しづらい問題を抱えていることが示唆されています。

労働面で女性が活躍しにくいとされる理由には、現在多くの企業で採用されている日本の雇用制度(コース別人事制度や終身雇用など)や、男性は仕事、女性は家事という分担がいまだ多くの家庭で根付いていることなどが挙げられます。本書では、そのようなシステムを改善し、男女ともに家庭と仕事を両立できるようにしていこうとする会社こそが「女性にやさしい会社」なのだということが説明されています。つまり逆差別ではなく、男女が協力しあうことにより、暮らしや子育てに目をむけた会社こそが、「働きやすい会社」であることなのだとわかります。現在「女性にやさしい会社」とされるさまざまな指標が公開されており、職業選択の際に参考にできます。これもまた、本書で得られる、労働問題から事前に自分の身を守るための基礎知識だといえるでしょう。

将来への備えを、今のうちに

授業では、権利や労働規制について考えた後、働きやすい環境とはどのようなものか、また将来どのように働きたいかを考察しました。今はまだ具体的な「職業」のビジョンは持てなくても、今回学んだことを活かし、働くことをポジティブに捉え、QOLを向上させる働き方ができるように選択肢を増やしていってほしいと思います。知識を得ることは将来必ず力となります。まずはその知識を蓄えるために良書にふれる等して、多方面に興味の幅をひろげることが、選択肢を増やす第一歩となるのではないでしょうか。


リベラル読解論述研究ってどういう授業?


みんなにも読んでほしいですか?

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