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2023年度 東京工業大学・数学

〇概評

180分で5題の形式は変わらず、難易度は近年と同程度でした。昨年とは対照的に小問が少なく、誘導なしに自力で解き進めることが要求されるセットです。

また、5題中3題が数学Ⅲからの出題でした。1題1題が状況把握能力、数式への洞察力と計算力、さらには場合分けを遂行する注意力と忍耐力を要求する重厚なセットです。

全体として東工大らしいセットであり、極端な難問もありませんので、本学に向けて適切に演習を積み重ねた受験生であれば、実力が得点に表れやすかったと言えるでしょう。

第1問

積分値を評価する問題です。自力で不等式を作る際には「被積分関数を積分しやすい関数で評価する」という発想が重要です。

目標を見据えて不等式を作成することは容易ではありませんが、数学の力が大いに培われる場面でもあります。同様の問題を解く際には、仮に誘導が付いていたとしても「もし誘導が付いていなかったらどうするか?」と考えてみると、良い練習になります。

第2問

求値の整数問題です。整数を扱う上での論証能力には適度に差が付くのでしょうか、4年連続での出題です。

できるだけ積の形で考察を行おうとする中で「左辺に連続3整数の積が現れている」と見抜ければ、後の方針は難しくありません。符号に注意しつつ、正しい絞り込みと洗い出しを行えたかがカギになります。


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第3問

複素数と確率の融合問題です。
(1)は、絶対値が$${\sqrt{\smash[b]{3}}}$$や$${2}$$である複素数がたくさん出てしまうとすぐに条件から外れてしまうことに注目すると、該当するケースを絞り込むことができます。

一方、(2)では偏角に注目することで、「$${1+\sqrt{\smash[b]{3}}i}$$が出た回数を$${k}$$回、$${\sqrt{\smash[b]{3}}+i}$$が出た回数を$${ℓ}$$回としたときに$${2k+ℓ}$$が$${3}$$の倍数になる」と言い換えられますが、この確率を直接立式して求めるのは大変です。

直接確率を計算しようとすると煩雑になりそうな場合には間接的な視点に切り替えること、特に本問であれば「漸化式を立ててみる」という方針に切り替えることが有効です。類題を経験したことがあれば有利に働いたはずです。

第4問

直円柱に対して現れる2つの立体の共通部分の体積を求める問題です。立体が構成される過程はシンプルですが、立体そのものをイメージするのは困難でしょう。

このようなイメージしづらい立体を「不等式が表す立体」と抽象的に捉え直すことで体積を求める問題は、本学受験生であれば類題を何度か経験したことがあるはずです。

積分計算も容易ではないですが、被積分関数が同一で区間がつながる積分に関してはまとめてから計算するなど、ミスが発生しやすい箇所を少しでも避けつつ正確に計算を行うのがポイントです。典型題の1つですので、確実に得点したい問題でした。

第5問

空間内の4直線に接する球を決定する問題です。
(1)では図形的な考察を多少行ってから、正射影ベクトルを利用すると簡明です。本学受験生であれば、正射影ベクトルの取り扱いにも習熟しておきたいところです。

続く(2)では、球の中心がどの2平面の交線上にあるかで場合分けすることになりますが、球の中心の座標についてどの場合にも共通する等式を用意するなどの工夫をすると、いくらか手際良く進みます。

いずれにせよ多くの計算を行うことになりますので、答案用紙や計算用紙に見やすく計算を整理する練習も心がけましょう。


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